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RSSフィード [6] 「三語納め」って書くと何かの恒例行事みたいですね
   
日時: 2010/12/30 22:39
名前: 片桐 ID:lbcsl1Q2

今年も残すところ後わずか。
これはやっとかなければいかんでしょう、ということでやります。一時間三語。

お題は「ジャパニメーション」「姉萌え」「親子丼」「鴉」です。
以上四つの中から三つ以上を使って作品を書いてください。

締め切りは十二時。例によって、多少の時間オーバーは問題ありません。作品が途中まででも投稿OKです。それぞれが楽しめる形で参加してください。

ではスタート。健闘を祈ります。

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性癖は個人の自由です ( No.5 )
   
日時: 2010/12/31 00:14
名前: HAL ID:TSh/HC3E
参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/

 うっ……。自分で書いていて心が痛いんですけどなんでしょうこの気持ち……。
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 オタクに向かって、そいつの専門分野の話題を振ってはならない。すくなくとも、自分がその内容に本気で興味を持っているのでなければ。

 これまでの教訓から、そのことは重々わかっていたはずなのに、失敗した。小学生のころから同じようなことで何度も後悔してきているにもかかわらず、だ。俺っていうやつは、なんでこう成長がないんだろうな?
「いや、だからさあ。あのマンガはさあ、フェティシズムがいいんだって。本筋も面白いけどさ、出てくるキャラの、指先とかね、足のラインとか、ちゃんと見てる? あんた」
 滔々と語る実希子は、目をきらきらさせている。
 俺の辟易とした態度は、ちゃんと周囲に伝わっているのだろう、男子からは、同情に満ちた目が投げかけられている。だけど救いの手はやってこない。友達甲斐のない連中だ。
 なんで俺ひとりが犠牲者になっているのかっていうと、ものすごく残念なことに、俺とこいつは家が近くて幼稚園時代からの腐れ縁という、いわゆる幼馴染というやつで、そして同じクラスにいま、実希子と仲のいい女子がいないからだ。
 去年まではまだ、同じくマンガやアニメの話題で盛り上がれるやつがいて、そいつらと固まってきゃいきゃい騒いでいたのだけれど、クラス替えで離れてしまってから、休み時間のコイツがひとりでマンガなんか読みながら、その手の話題を振れる相手に飢えているのは、よくわかっていたはずなのだった。なんせ、長い付き合いだ。学校にいるときには、無難な話題以外では話しかけないようにしていたつもりなのに、うかつだった。
「通りいっぺんにストーリーだけ追ってたって、あのマンガはだめよ。先週号のさいしょに出て来た鴉なんて、なんでもない小道具みたいにしてて、伏線になってたの気づいた? ちゃんとそういう、端々の構図とかね、演出なんかまで丁寧に見てたら、表に出てこない深い裏側がね、ってちゃんと聴いてんの?」
「いや、知らねえし」
「あのね、もったいない読み方してるんじゃないわよ、ああいうマンガはねえ」
「ミキ、ちょっと」
 女子の声が割り込んでくる。救いの神かと、ほっとしながら振り返ると、同じクラスの佐々木が、何か本を指でつまんで、にやにやしていた。
「これ、あんたのでしょ」
 文庫本の表紙は、アニメチックなイラストがつけられていて、そこでは小学生の女の子が、ほとんど半裸で頬を染めている。帯には、兄妹の禁断の関係がどうのこうのと、あまり直視したくないようなアオリ文句が載っていて、思わず目を泳がせた。
 それを汚いものでも持つようにつまんで近づいてきた佐々木は、意地の悪い笑みを浮かべている。反対側の手には、書店でくれるような紙製のカバーがあるから、拾った本からはがして中身をあらためたんだろう。
「あたしのじゃないし」
 実希子がつめたくそういうと、佐々木はわざとらしく眉を上げて、さらににやにやした。
「あら、勘違いしてごめんね。だってミキって、こういうの好きなんじゃないの?」
 ぜんぜん悪いと思っていない、その小馬鹿にした口調に、カチンときた。
 たしかに実希子はオタクで、人の話にはつまらなさそうな態度しかとらないくせに、自分が好きな話になると、相手の気持ちなんて無視して一方的に語り続ける。まわりとコミュニケーションをとる気がないのも、人に冷たいのも、嫌われるのも、こいつにも責任がある。だけど、こういうのはあんまりじゃないのか。人前で笑いものにしてやろうっていうのは。
「あのなあ、いくらこいつが救いようのないオタクだからって、いっていいことと悪いことがあるんじゃないのか?」
 いって、即座に後悔した。周囲にいた数名から、「なに、杉山君は普通の人だって思ってたのに、コレの仲間なわけ?」というような視線が飛んできたからだ。一緒にするな、といいたい気持ちでいっぱいになる。
「そうだよ、それにあたしはどっちかっていうと姉萌えだ!」
 胸をはっていうなよ。っていうか、姉っておまえ。
「おまえ、そういう趣味なの?」
 思わずドン引きしながら聞くと、何が悪いのと、虫を見るような目で見られた。
「悪い? ほんものとフィクションの区別がつかないようなガキじゃあるまいし、現実の同性愛者の差別問題を引き合いに出してどうこういう気はないけど、二次元の女の子にときめくくらい、個人の自由でしょ」
「いや、まあ、そうなんだろうけど」
「いっとくけどあんたが観てるAVだって、親子丼なんて都合のいいシチュエーションはそうそうそのへんには転がってないし、ナースものの看護師だって、あんなもん現実には存在しないんだからね」
 ちょっと待て!? 教室の空気が一瞬で冷え切って、周囲が波のように引いていく。
「なんで知……じゃなくてあれは兄貴のだって!」
「どうせお兄さんのいないときにこっそり観てるんでしょ」
「みてねえし!」
 周囲から聞こえてくるひそひそ声が痛い。なんでおれはこんな背後から刺されるような目にあってるんだ。
 涙目になりながら周囲をみわたすけれど、クラスメートたち、特に女子は、目があわないように、視線をさっと避けてしまう。幼馴染だからってこんな女に、同情したのが間違いだった。次は何があったって、二度とかばってやるもんか。
「おまえら、何騒いでるんだ」
 担任の荻が入ってきた。とっさに隠しかけたアレな表紙の小説を、佐々木は思い直したように、高々と持ち上げた。
「せんせー、こんな本が落ちてました!」
 勇者だなこいつ。思わず自分の窮地も忘れ、固唾を呑んでなりゆきを見守っていると、荻の顔が、さっと青ざめた。え? と思っていると、その顔が瞬間的に赤くなる。
「え、あ、なんだおまえら。そういうのに興味があるのをどうとはいわないけどな、学校に持ってきちゃいかんぞ」
 微妙に棒読みだった。教室中の視線が、荻の顔に集中した。生徒からの疑惑の視線に気づいているのかいないのか、荻は咳払いをしていった。
「ともかくそれは、とりあえず先生があずかっておく。持ち主は、あとで職員室にくるように」
 生徒たちのあいだで目配せが交わされる。誰がその文庫本を持ってきたのか、荻の顔色を見ていたら、バカにでもわかる。一時間後、校内をどんなうわさが駆け巡っていることやら。
「フィクションの世界で妄想を楽しむのは、個人の自由。そうじゃない? 悪いのは現実と混同するバカと、全部のオタクがそういうバカだと思っているバカだけよ」
 醒めた口調の小声で、実希子がいった。
 荻のおかしなシュミの濡れ衣を、着せられそうになったわりには、荻をかばうようなことをいう。思わず振り返ると、実希子はしらっとした顔をして、授業で使うノートを開いていた。
 おれのエロビデオ所持疑惑が、荻の変態シュミ露見騒ぎで紛れてくれないだろうかと、そんなみみっちいことを考えていたおれは、思わずちょっと反省してしまった。
「変態だろうとなんだろうと、堂々としてればいいのにさ。荻もだけど、アンタもよ」
 前言撤回。やっぱりもうちょっと空気読めよてめえ!

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