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RSSフィード [34] あるけどもあるけども 不快山
   
日時: 2011/08/21 01:54
名前: 影山 ID:YD0dWnt2

御題:作風チェンジリング&「あるく」

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ろっぴゃくねんぜん ( No.2 )
   
日時: 2011/08/21 02:26
名前: 端崎 ID:XJjBrlaw

 紫色の街では大瓶が倒れて野犬も魚も酒浸しだ。屋根にのがれた杜氏たちは揮発したアルコールにあてられながらもあっけらかんとやっている。ウミネコたちが酔っ払った魚を捕えて酔っ払う。丘の上のホテルからそれをみている。
「沖じゃあ海虫がぼうっと光る。酒が浚われていくからね。小蝦がそいつを食べにあつまる。小蝦のひりだしたもんが海流を甘くする。二、三日すれば西のほうからクジラがくるよ。ざこはもうべろんべろんだし、みんなじきそうなる。お祭りさ。六百年前におなじことがあったと叔母がいってた」
 煙草を嗅いだ震えを落ちつかせるように女がいう。ぎぃいと革張りのソファが音を立てる。女の体が沈み込む。
 酔いつぶれたのがもう何十羽と部屋の窓にぶつかっている。女は街を見おろしている。みてみたいね、と女がいう。海のにぎわいをさ。ちょっとでいいんだ。
 飛べるならともかく、船でゆくのではおもしろい絵はみられまい。そういう意味のことをいうと「潜るんでもいいな、でもそれにはもっと泳げないとな」などといってソファから起きあがる。
 するとホテルが大きく傾ぐ。地鳴りとともにすっくりと立つ。窓外の街はさらに眼下へ遠のいた。
「酔ったかな。しかし二本の脚では飛べないな」
 笑う女の漕ぐ脚にあわせてホテルがすすむ。
 歩くたびに波音がする。もとあった海岸線にそって歩きはじめた。
「岬へゆくらしい」と女がいう。

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