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RSSフィード [23] はんがったや三語じゃん
   
日時: 2011/04/09 23:25
名前: 端崎 ID:HOr0WLYY

 さくっと三語です。

「どろどろ」「一つ目」「星を打ち落とせ」

 さ、さくっと……?……三語です!
 時間は例によって一時間(というていで)

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希望 ( No.1 )
   
日時: 2011/04/10 00:27
名前: 昼野 ID:CEBWG1wI

 どろどろした暗雲が、西方から厚くたれこめて、徐々に夕暮れの陽を覆い隠し、あたりは暗くなっていった。
 僕は家路を急いでいた。激甚な腹痛が僕を襲い、肛門を下痢が圧迫していたのだった。
 僕は一つ目だった。顔の中心に目が一つだけあるのだった。生まれながらの奇形だった。そのせいで学校ではひどく苛められており、ただでさえタブーである大の方の便所に入るのは躊躇われたのだった。
 暗雲による太陽の遮りは、そのまま今の僕の心象を表しているように思った。それが腹痛であるにも関わらず、愉快に思って、苦痛に歪む顔の口端を歪めた。
 それにしても、僕の家は学校から10キロも離れている。走っているとはいえ、到達するまでまだ大分かかるだろう。僕はそれまでに肛門を圧迫する下痢を我慢することが出来るだろうか。おそらく、できないだろう。僕は盛大に下痢を漏らすに違いない。そうと解っていても、走り続けた。熱い希望を抱いて走った。希望がある限りすべての事はなんとかなる、と学校の教師に教わったからだ。
 やがて陽が落ち、辺りは本当に暗くなった。雲の隙間から幾つかの星がちらついていた。あの星のような希望を僕は持っているんだ、暗い空で輝く星、そう思って走った。
 家まであと一キロほどという所だった。閑静な住宅街のなかだった。僕は希望を抱いていたにも関わらず、肛門の括約筋の限界、そして繰り返し押し寄せる腹痛の波に敗北して、盛大に下痢を漏らした。下痢ではなく噴火、と言っても良かった。それほどに僕の穿いているハーフパンツの、隙間という隙間から、溶岩のような下痢が、勢い良く流れ落ちた。
 僕は絶望して、その場に崩れ落ちて泣いた。下痢まみれになって泣いた。
 なにが希望か、と思った。下らない授業をした教師を呪った。
 仰向けになった。厚い雲の隙間から、幾つかの星がちらついている。希望の象徴だった星。
 その時、僕の耳に何かが囁いた。幻聴と言ってしまえば容易かった。しかし、それ以上の何かの声だと思った。神様ではなかった。優しい神様なんて何処にもいない。僕は声を、犯罪者の王の声であると判断した。
 声はこういった「星を打ち落とせ。希望という希望を絞殺せよ」と。
 下痢まみれの僕は、人差し指を突き出して、手を拳銃のかたちにして、星を狙った。そして「バン」と呟いた。星はしかし、相変わらず燦然と輝きつづけていた。

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花火のない部屋 ( No.2 )
   
日時: 2011/04/10 00:27
名前: ねじ ID:8TP.z/sU

 この部屋には、窓がない。いや、正確に言うと、窓はあるのだが、埋まっている。
 壁一面の本棚は、窓の前にも林立し、どこが窓なのかもわからない。そして、本棚からも本は溢れ、床の上にいくつもの山を作っている。まともに座れる場所は、ベッドの上だけだ。
 乾いた体に水を補給しながら、私は本を読む。読んでいるのは探していたアシモフの「はだかの太陽」。
「なんで今更そんなの読んでるの?」
「持ってないから」
「なんで? アシモフ好きなんじゃなかったっけ」
「これ、絶版だよ」
 ああ、と彼は笑う。ベッドの足元から下着を拾い上げて、見につける。
「そのぐらい、探せばどこにでもあるのに」
「探さないもの」
「情熱ないなあ」
 情熱。たとえば情熱というものを、決して高くはない給料のほとんどを本に費やし、本棚で窓を埋めてしまうことだというのなら、私にはそんなものはない。
 背中に、つるつるとぬるく汗が流れていく。
 あ。
 と気配を感じた次の瞬間、ぬるい舌が、汗を拭うように、舐め上げていく。痺れるように、鳥肌が立つ。
 本を閉じて、私はうつ伏せになる。予感を目に輝かせて、彼が笑んでいる。私は余白のような笑みを浮かべ、目を伏せる。唇に、唇が重なる。煙草と男の体温の味がする、キス。
「今日、花火だよ。知ってた?」
 私の言葉は、首筋を這う舌に奪われる。諦めと欲情と慣れに、理性がどろどろとみっともなく溶けて、私は彼の乾いた背中に、指を滑らせる。

 音に気付いたのは、彼が中に入ってきたときだった。どん、と、一つ目。
 花火。と私が言うと、煩いとばかりにふさぐ唇。
 緩くついてくる相手が動きやすいように、腰を浮かす。ど、どん、と、二つ目。動きが、速くなってくる。
 頭の中のスイッチを押して、回路をつなぐ。すると、声が、溢れてくる。あ、あ、という甲高さの中に甘さを孕んだ声。どん、と花火の音。
 私の声にあわせるかのように、花火は勢いを増していく。星を打ち落とせという勢いで、耳の奥に突き刺さる音。本棚が、かたかた軋む。
 どん、と、一つ、大きくなって、瞑った瞼の裏に、花火がぱあっと美しく、散った。

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神鳥の眼 ( No.3 )
   
日時: 2011/04/10 22:36
名前: HAL ID:FbfssVaY
参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/

 ――あの星が欲しい。
 ユタがそういったのは、リュカが十、ユタが六つのときだった。
 小さな弟が指差した冬の空には、ほかの星よりひときわ眩しく光る、青く澄んだ星があった。それは地元の人々がアス・ハティト《神鳥の眼》と呼ぶ星で、冬至のその日、夜の遅い時間に東の空からゆっくりと上り、ちょうど真夜中に天頂に煌々と輝く。
 星をねだられたリュカは困惑して、懐に入れていたちいさな玻璃玉を出した。玻璃といっても安物で、祭の夜店で売っているような子どもだましの玩具だが、それでもふだんの彼らの手には入らない、ぜいたく品には違いなかった。リュカが仕事を手伝っている玻璃工房の職人が、細工を失敗したからといって、持たせてくれたのだ。
 ――これじゃだめか。お前、前から欲しがってただろう。
 ユタはその小さな玉を眺めて、ちょっと考え込んだ。玻璃玉は星あかりに照らし出されて、うす蒼く輝いてる。小さな傷が入っているので、売り物にならなかったというけれど、それでも兄弟の目に玻璃玉は、じゅうぶんにうつくしく映った。けれどユタは少し迷ったあとで、ぷるぷると首を振った。
 ――あの星がいい。
 ――そうか。
 リュカはしかたなく頷いて、玻璃玉を懐に戻した。
 ハティトは隻眼の鳥で、空におわす神々の言伝を嘴に咥えて、地上へと運んでくるのだという。神々が使う文字は、人のそれとは違っていて、城につとめているような、立派な神学者にしか読めないのだそうだ。そんなたいそうな鳥の眼をほしがる弟を、叱っていさめるべきだったのかもしれないが、あいにくリュカには天高くに住まう神々のくだす天罰よりも、明日に食べるものの心もとなさや、家に帰ったらきっと酔っぱらっていて、彼らに手を挙げるに違いないろくでなしの父親や、そうした現世の不安のほうが、よほどおそろしかった。
 ――じゃあ、いつか、兄ちゃんがとってきてやる。
 ――ほんとに?
 ぱっと頬を上気させて、ユタは笑った。ほんとうだ、と答えるかわりに、リュカは弟の頭に小さな手のひらを載せて、やわらかい髪をかき回した。
 ――でも、どうやって?
 問われてリュカは首をかしげた。
 ――さあ。世界で一番高い樹の上にのぼるとか。
 ――それでも手が届かなかったら?
 ――そうだな。砂漠の馬賊にでも弟子入りして、拳銃を習おうかな。
 リュカがそういうと、ユタは黒い眼をぱちくりさせた。まつげが頬に影を落とすほど、その日の星明りはまぶしく、家路を歩く二人の足元を、あかるく照らし出していた。
 ――星を撃ち落すの。
 ――そうだ。
 リュカがいうと、何が嬉しかったのか、ユタはぴょんぴょんと飛び跳ねた。うさぎのように軽やかに飛び跳ねる弟の、小さく熱い手を、離れていかぬようにと、リュカはきつく握った。
 弟の手は荒れていた。二人が下働きをしている工房では、冷たい水で掃除ばかりさせられているから、あかぎれがなおる間がない。同じ歳の子らが安気に遊びまわり、そこらでどろどろになって転げまわっている横で、昼も夜もなく働かされている幼い弟が、リュカには哀れに思えた。
 リュカは空を仰いだ。神鳥の眼は蒼く冴えて、静謐なまなざしを地上に注いでいた。



 ふ、と息を漏らして、リュカは鼻をこすった。
 火薬のにおいが、鼻腔にこびりついている。いまにはじまったことではなく、父親を撃ち殺した日からずっと、そのにおいは彼の中に染み付いてしまっていた。
 夜闇にまぎれて父親のもとを逃げ出したあと、砂漠の馬賊を名乗る男の前に転がり出たとき、リュカの胸には、幼い日の約束があったというわけでもなかった。しかし、彼をきまぐれに拾った馬賊が面白がって教えると、リュカの銃の腕はみるまに上達し、育ったのちには、馬賊の一団を任されるようにまでなったのだ。
 銃の本来の射程距離をおおきく離れた的でも、リュカは難なく撃ち落した。腕前と面倒見のよさから、仲間うちでは一目おかれ、兄貴分面をしてはいても、いまのリュカは天下のお尋ね者には違いなかった。義賊を気取り、豪華な荷を積んだ隊商を狙いはしても、無意味な殺しはしないし、手下たちにもけしてさせない。そんな題目があったところで、王国軍の討伐隊にとってみれば、ほかの狼藉者たちとなんら変わりないのだろう。
 音も立てずに天幕を掻き分けて、手下のひとりが顔を出した。
「お頭。西側に騎影が」
 そうか、と答えて、リュカは腰の拳銃を撫でた。砂漠では夜に旅をする。ただの旅人かもしれない。それでも用心するにこしたことはなかった。金にもならない殺しをして、火薬と命を無駄にすることなどない。
「発つぞ。片付けさせろ」
 いうと、手下はすっと下がって、音も立てずに天幕の外に出た。
 夜には音が思いもかけずに遠くまで響くから、逃げるのであれば物音を立てずに動くのが、彼らの習いだった。
 リュカが天幕の外に出ると、空には満天の星がひしめいて、どこまでも広がる岩砂漠を、皓々と照らし出していた。その流れを眼でおって方角を確かめながら、リュカの目は無意識に、ひときわ輝く青い星を探し当てた。西の空にゆっくりと傾いていく、神鳥の眼。
 目がこの星を探りあてるたびに、リュカは父親を殺した夜のことを思い出す。
 弟を置いて家から逃げ出して、五年あまりが発つころだった。故郷の町の盛り場まで遠征したのをきっかけに、ふと家へ足を向けたリュカを待っていたのは、あいかわらず酒のにおいをさせた父親と、小さく粗末な墓ばかりだった。
 酔っての折檻が行き過ぎて、壁にぶつけて頭を打ったきり、そのまま二度と目覚めなかったというユタ。十二の歳だったという。ろれつの回らない口調で、笑ってそう話した父親に向かって、リュカは無言で引き鉄を引いた。あの夜にも、空にはアス・ハティトが煌々と瞬いていた……。
 ふと拳銃を抜いて、空に向けた。リュカはつめたく冷え切った銃把を、ゆるく指でなぞる。けれど一つ目の鳥に向かって引き鉄を引きはせずに、そのままホルスターに戻した。星を打ち落とせないのと同じように、死者を冥府から引き摺りだすすべはない。
 ふ、と疲れた息を漏らして、リュカは視線を落とした。手下の告げた騎影が、まだはるか遠い西の地平線に、小さく蠢いている。さほど数は多くはなさそうだ。
 無音のうちに天幕を片付けて、整然と集まった手下たちに向かって、手のひらをふって合図を送りながら、リュカは自分の馬に飛び乗った。

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星を落とす ( No.4 )
   
日時: 2011/04/10 00:45
名前: 片桐 ID:Nyb.Di1w

 一つ目、片目で夜を見ていた。
 右の目はもういない。もういないことにして、自宅を抜け出し、協会の墓地まで歩いてきた。昨日降った雨のせいで、足元はどろどろとなっていたが、かまいやしない。今ぼくらの成果が試されようとしているのだ。星落としを持ちかけてきたのはエバンズで、<星を落とすためにぼくらにはなれが必要なんだ>と力説していた。ぼくはエバンズの話に納得し、それからというもの、毎日ふたりで片目の訓練をした。片目でスープを飲み、片目で走り、片目で獲物を打つ。獲物となったのは、空き缶やお皿だけど、ぼくたちの一番の目標が動かない相手だから、それでも十分訓練にはなった。これまで空き缶やお皿を指に掛けたゴムで打ち、イメージトレーニングを重ねてきたのだ。
 今、となりにはエバンズがいる。右どなりで、左目を閉じている。それを片目で確認する。興奮しているだろうけど、それをエバンズは見せない。ぼくも同じようにする。手をつなぐ。ふたりで夜空をあおぐ。エバンズも片目だから、あわせて両目、ぼくらはふたりで夜空を見上げる。どちらのものともいえない汗の滲んだ手をかかげ、ひとつの星に狙いをさだめ、ふたつの目の焦点をしぼる。
 ――星を打ち落とせ!
 夜空に向かって弾丸を放つ。それは瞬時に標的を狙い撃ち、ぼくらの足元に落ちてくる。まばゆい光を放った熱い球が、あの子の体に滑り込み、彼女は深い眠りからさめ、僕らに笑顔を向ける。
「おはよう、ミゲル。おはよう、エバンズ」
 ぼくらは彼女に抱きつき、やさしく頬にキスをした。
 明くる朝日がすべての嘘を照らすまで、ぼくらはずっと、そうしていた。


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くう、仕方ないか。またがんばります。

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Re: はんがったや三語じゃんむりじゃったじゃん ( No.5 )
   
日時: 2011/04/10 01:14
名前: 端崎 ID:QfTBP7Uw

 日のささぬ、鬱蒼とした森のなか、樹木の枝葉に埋もれながら片膝立ちになって、砲身を宙にむけたまま動かない、赤茶がかった巨大な兵士。おまえはずいぶんながいことそうしているのだな、といって彼のくすんだ赤い一つ目にことばをかけるのは、彼と彼の捧げる砲身へと巻きついて、ずるずると延び続けてきたツタである。
 兵士はなにも語らない。
 ――星を打ち落とせ。
 そんな理不尽な命を負うてこの森に居座り続けて、ほんとうにもうどれだけの夜が明けたろう。星など降ってきはしないのだ。たまさか飛び込んでくる石くれがあるとして、それと見る間にはるか彼方で燃えつきて、塵のひとつも残りはしない。そも、こんな筒ひとつでなにができるというのか。引き金を引かれないままでいる砲身は森の湿気に、毎年やってくる長雨にやられて、どろどろと土色に汚れ、錆びつき、とうにその用途を果たさない。
 兵士はなにも語らない。
 あちこちが欠け落ち、均整のゆがんでしまった身躯を硬直させ続けたまま、なにも語らない。
 不動の姿勢をとり続ける身躯を、ツタはまんべんなく這いまわる。
 わたしもずいぶんながいことこうしているな。
 兵士はなにも語らない。

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感想です。 ( No.6 )
   
日時: 2011/04/10 19:43
名前: 昼野 ID:CEBWG1wI

感想です。

>ねじさん
本棚で窓も埋まってるってのが、なんか好きでした。
ラストも美しいです。

>HALさん
三語でこれだけの世界観つくれるってのが凄いです。

>片桐さん
二人で片目ってのがなんかいいなと。

>はざきん
現代以外のはざきんは珍しいすね。イメージがちゃんと伝わってきた感じです。

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感想ですす ( No.7 )
   
日時: 2011/04/10 22:05
名前: 端崎 ID:QfTBP7Uw

>>昼野さん
三語ではお久しぶりです。
お題をつかうとこんなふうになるのだなー、というかお題ちゃんとつかってるんだなー、すげーなーとテンションあげてました(どこに)。
>希望という希望を絞殺せよ
とか自分にはよういわれんので、チョイスがしっくりかっこよくて好きです。
おつかれさまですー。
>>ねじさん
うすくらやみはおそろしいですね。
本がいっぱいある部屋でも埃っぽい部屋とこざっぱりした部屋とありますよね。
あれはなんなんでしょう。ずぼらかそうでないかか……!
本、落ちてくるといたいですよね。ねじさんこわい。
おつかれさまでしたー。
>>HALさん
なんですかこれつおい!
いい話系なのかなーと思ったらかなしいというかすごくさみしい感じに!
こういう設定がするっとでてきて、生活のレベルまで描かれている、というのがもうなんか、いいなあ、すごい好きです。お題がつかわれている「星を打ち落とせ~術はない」の一文が、かっこよすぎて、もう、なんか、しびれます。いつも勉強させていただいてます。
ところで青く光る星って、個人的にはなんだかとても「砂漠の星」って感じがするんですけど、なんででしょう。
参加おつかれさまですー。
>>片桐さん
にににににに、むつかしいですね……。
エバンズってすごくいい名前だと思います。どんなやつなのか、気になりますね。ふだんはクールで、根っこは感情家、みたいなそんな妄想がふくらみますね……(ぇ んっんー!
なにはともあれおつかれさまですー。またやりましょー。
>>端崎さん
おまえは!ゴー!ホーム!だよ!

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感想です ( No.8 )
   
日時: 2011/04/10 22:49
名前: HAL ID:R7CWR286
参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/

> 昼野さま
 切ない……! 笑えてもおかしくないような話なのに、なんでこんなに真面目に切なくなるんでしょうか。

> ねじ様
 窓が本で埋まった部屋に住みたいです。住みたいです……!(二回言った!)
 筋書きとかよくわからないけどとりあえず描写だけで白飯が二杯食べれそうなくらい萌えました。あと昨日も申し上げた気がしますが「余白のような笑み」がすごく好きです。

> 片桐さま
 二人でふたつの目、すごく可愛いなあと思いました。子どもの考えたおまじない的なルールが、なんだろう、幼かりし頃の感情を思い起こさせて、ときめきます。
 じぶんが読解力に乏しいというのもあって、夜空から朝日までのシフトがちょっと急で、どこからどこまでが嘘だったのかが、読んでいてよくわからなかったです。もう一拍くらい間が欲しい気がしました。

> 端崎さま
 赤茶けたというから、銅像、なのかな。ものいわぬ像に蔦が絡んでいるところを通りかかった詩人が描いた情景、とか、そういうイメージでしょうか。
 乾いた寂しさのような、だけど少し温かいような、全体を包む手触りがとても好きです。

> 反省文
 文章が荒くてがっかり。
 深夜のテンションできのうの自分が何を思っていたのか、きれいさっぱり思い出せません……。敗因は、一時間で書くとわかっているのにいろいろ詰め込みすぎようとしたところだと思います。うわーん!

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24時間以上遅刻したって、そんなの気にしないたくましさ ( No.9 )
   
日時: 2011/04/11 23:22
名前: 弥田 ID:wBItrOSA

「お姉ちゃんはずるいよ。だって二つも目があるくせに、ずるいよ」
 背中越しに声がして、だけどわたしは振り返らない。本でも読んでるふりをしながら、精一杯にシカトしてやる。シ/カ/ト。口のなかだけで呟くとなんだか嬉しい気持ちになる。胸のなかだけではしゃいで、ひっそり何度もくりかえす。シ/カ/ト。シ/カ/ト。そのうちに文字と文字の境目も曖昧になって、にじみだす血しょうのように、どろどろとわたしの触覚を汚した。
「ねえ、双子なのに、どうしてなの、ねえ、答えてよ」
 詰め寄る声。じれったそうに、首筋に、すうと巻きつく細い腕。耳元の妹のささやきの、ぬるい温度のしめり気の、かわいいやさしい、殺意。
「死ね/ば/いいのに。それ/で/いいのに」
 ぎゅう、と腕の力が強くなる。シ/カ/ト。もそろそろやめてやって、精一杯の愛情こめて、こう返してあげた。
「みんな死ぬよ。今日が最後さ。さようなら」
「死なないよ。あの人が流れ星を打ち落とせば、それでいいんだ。ぜんぶ解決する。そのためにあの人は、何日も前から裏山のてっぺん行って、バットとカンパンだけ持って、じっとこもってるんじゃないか」
「あんな人のこと、信用できる? ねえ」
「なら、なら、どうして。なんであんなこと」
「好/き/だ/からさ」
 笑って、振り返ると彼女の、大きなまるい一つ目に映る、窓の向こうの夜空が見えた。空いっぱいを埋めるような、大きなまるい流れ星が、いくつも、いくつも、祈りのように降り注いでいる。
「あ……」
「バット、一本じゃ足りなかったね」
 わたしの言葉を妹はシ/カ/ト。する。なんだかムッときたので、まぶたにキスをしてやると、さすがに驚いた様子で、後ろに大きくとびのいた。
「好/き/だ/よ」
 言葉にするのは簡単で、なんだかひどくあっけなく響いた。その余韻もやがて消え、後に残ったのは、彼女の瞳いっぱいに映る流星と、うっすらにじむ涙だけだった。

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