風の野辺の送り
茅葺の家の野辺の送りの日は

雪の予報を覆して 

青すぎる冬空と強風

風に流されたのか雲ひとつない

黒に身を包んで

緩やかな坂道を登りきり 

枯れてしまった色のない庭に

じっと佇んで経に聴き入る

秩父連山から吹き降ろす寒風が 

爪先から這い上がってきた

体は徐々に強張り

肩に力が入ってくるのが

はっきりと感じられ

感覚が徐々になくなっていった。

吹き上げられた木の葉が、

黒に身を包んだ人々の背中で 

しりもちをつきながら 

更に寒風に吹き上げられ 

宙を舞っている様を

ぼんやりと目で追っている・・・私。

枯れ果てた木の葉と 

まだ緑を残した葉までが 

無数の小さな小鳥のように空中を舞っている

野辺の送りをするT子さん88歳

路上で血だるまとなって逝ったあの少年は17歳

生き方も 生きた年月も あまりに違うけれど、

枯れた木の葉と

緑を残す葉が 

T子さんと少年のように思われた。

一緒に高い所へ昇っていくんだな・・・・。

一緒なんだ・・・よかった

一人一人じゃなかったね

そんな語りかけをしたら心の底の方を 

ふっと温かいものが流れていったようだった

読経の流れる中焼香を済ませた人々は 

心なしか

ほっとした表情で坂を下っていった。

 
まさよ
2017年04月16日(日) 20時34分02秒 公開
■この作品の著作権はまさよさんにあります。無断転載は禁止です。
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少し前に書いたものです。



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No.2  まさよ  評価:0点  ■2017-04-23 20:44  ID:/3xEi0iZBMc
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野良人さん久しぶりです
お会いできてうれしい。
あの時の寒さと木の葉が妙に
心に引っかかってしまったんです。
解ってもらえて嬉しい・・・。

No.1  野良人  評価:50点  ■2017-04-22 14:59  ID:te6yfYFg2XA
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まさよさん今日は。

早過ぎた冬でしたが、気が付いたらもう春♪

大好きがったクロが焼かれたとき、あ 泣いてると少女が笑った…本人も同じなのにね。
送った後はホッとするんですよね、諦めにも似て…

解ります、有難う御座いました。
総レス数 2  合計 50

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