ハッピーバースデー
僕と世界の間に
流れる空気の質量に
抗うすべもないままに
どこか遠くのほうまで
進んでいるような形でながされる

歳をとる
僕にはそんな感じだ

過ぎているのではない
巻き込まれている
この濁流へ

行き止まりまで待てないで
不意に外れようとする
そんな友人もいた

つかもうとした手だけがむなしく
ねっとりとした空間を裂いていく

後悔を感じる前に
その時間を含んだまま
今もまだ濁流は僕を包んで
前の方向へ流し続けている

行き止まりがどこか
自分で決めことのできないもどかしさ
それを抱えている

つまり視界はゼロということだ

ハッピーバースデーの曲はそんな中で
唯一聞こえる僕のための音なので
はっきり言ってうっとおしい

一年が過ぎて
過去と一緒に蝋燭が増える

過去もまた蝋燭のように
火をつければ溶けてススになれいい
跡形は醜くても
見えない形に収まってくれないだろうか

去年溶けた蝋燭は
今年も一本増えて
甘いクリームの上で
燃え盛っている
いつかこの火を
消そうと思える日が来るのだろうか

透明の
息も吸える
そんな濁流で
目をつむり
そして
思い出す

ねっとりとした
空間を裂いた
あの左手


そして
今日もなく
史裕
2016年08月18日(木) 16時04分27秒 公開
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