忘日

 明日
   世界が終われば
          いいのに

 終電を待つ
      ホームのベンチで

 あいつはそんなことを

         言ってた



 祭の終わった街並みを

    遠く ぼんやり見つめて

 このまま静かに

      かき氷が溶けるみたく

   仕方がないね って

 世界が終われば


     つまんない戦争も

  ちっぽけな優劣も

    情けない後悔や懺悔も

   何もかも
       消えて無くなるのに


 この奇妙に愉快で温かな

       祭の思い出も

 来月のテストに上書きされないで

          済むのに



 そんなの無茶だろ って

      返したら

 わかってる、 って

      困ったような

      不器用な顔で

      笑った



 明日 世界に終わられたら

 明後日 お前と話せなくなるだろ


『いいじゃない
       面倒なのが消えて』

『なわけねぇだろ だって、』




   無粋なアナウンス

      に

     苦笑する

      顔が

 この上なく 綺麗なものに


     見えた



   午後十一時過ぎ






 車体の滑り込む

     刹那



       『ありがと』




    囁く声が

        風に消えてった

               八月 

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2015年09月03日(木) 18時23分01秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こうやって言い合っていた頃が
一番幸せだったのかも

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No.4  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2015-09-08 22:33  ID:L9lqT3VolTw
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笹竜胆 様

コメント感謝致します。
この「痛み」こそ、「大人」になったら二度と味わうことの無い、青くて臭くて何より愛しい青春の一欠片なのだと思います。
二度と味わえない代わりに、一度感じたら二度と忘れられない。まるで刺青のように。
ありがとうございました。



クレナイ 様

コメント感謝致します。こんばんは。
久しぶりに文字列を意識して書いてみました。青春物語が書けない代わりに、青っちい詩にしてみた次第です。
またよろしくお願いします。ありがとうございました。



ヤエ 様

コメント感謝致します。お久しゅうございます。
視覚的に、感情的に、青春独特のほろ苦さが伝わるようにしました。最初は「かき氷」でなく「砂糖菓子」でしたが今考えれば「かき氷」で正解だった気がします。
素敵と言っていただけて嬉しいです。

ありがとうございました。
No.3  笹竜胆  評価:30点  ■2015-09-08 21:29  ID:8VDL8/WQ0A.
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響き合う感傷、なわけだけど。
結構苦みが残るね、これ。
切り込まずに流れ去ってゆくからかな。
No.2  クレナイ  評価:50点  ■2015-09-05 20:21  ID:dJ/dE12Tc8A
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こんばんは。

一つの短編を読んだみたいな読後感でした。
文章の配列が、儚さを余計に感じさせて、美しかったです。
素敵な詩でした。
No.1  ヤエ  評価:50点  ■2015-09-04 09:37  ID:BymBLCyvz/o
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おはようございます
しとやかで、美しい思い出だなぁと
幸せな感じが伝わってきてほっこりしました。同時にしんみりと。
とくに無粋なアナウンス〜はレイアウトも含めて、すごく表現が好みです。
カキ氷が溶けるみたくというのも、綺麗だなぁと

素敵なひと時をありがとうございました
総レス数 4  合計 130

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