ナイチンゲール

緑の森の奥深く、
 幸福な夏をつかさどる鳥よ、
  お前の歌声を聴きながら、
  私は陶酔とうすいの時へといざなわれる。

全ての悔恨かいこんが、さりげなくぬぐわれ、
全ての別離が、さりげなく交わされ、
 今、私は大地の呪縛を断ち切り、
 詩歌の翼によって、はるかな高みを目指す。

彼方へ! 彼方へ! 
 山を見下ろし、海を見下ろし、
 雲を越え、星の軌跡を追いかけながら、
  いつしか私は、安らかな死に憧れていた。

彼方へ! 彼方へ!
 喪神そうしんの果てに死を迎え、
  何もかも忘却の河に託そう。
   私の望みは、ただ永遠の静寂のみ。

だがお前は沈黙を破り、高らかに歌うのだ、
 われらを惑わす生への賛歌を。
所詮しょせん、人の世の苦悩など、お前とは無縁のもの。
 地上に葬ったはずの憂愁が、再び私を包み込む。

憂愁! この言葉が戦慄せんりつとなり、
 翼をもがれたイカロスのように、
  私はお前と引き離され、
   深きふちへとちてゆく。
   
―― 胸は痛み、身体はしびれ、
 歌の調べは消え失せて。
あれはうつつか、幻か。
この身は神のものか、悪魔のものか。
ジョーカー
2015年08月17日(月) 16時59分23秒 公開
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No.2  ジョーカー  評価:--点  ■2015-08-22 17:42  ID:79GucnjyPpk
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野良人様、感想・批評ありがとうございました。
このサイトはルビが使えるので助かります。
No.1  野良人  評価:50点  ■2015-08-22 14:47  ID:dJ/dE12Tc8A
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ジョーカーさん今日は。

哲学と言うか、悟りきったと言いますか、格式の高い詩ですね。
先日は、動揺の薀蓄?を頂き有難う御座います、私も絡んでいましたからお礼を申します。

何処も寂しく成りましたね、心配していた詩離れでしょうか?
  
総レス数 2  合計 50

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