関係者

彼女がひとりぼっちで 部屋の片隅で膝を抱えて震えていたとき
ノーテンキなボクはいつものように テレビの前でゲラゲラ笑ってた


彼女が例の彼氏と別れたって 人づてに知ったときも
ボクは取り立てて気にするでもなく 日々バイトに明け暮れてた


それから彼女があまり外を出歩かなくなったと 彼女の友達から聞かされたときも
久しぶりに部屋を訪ねてみたら 見る影もなくやせ細ってしまったと聞かされたときも
ボクにはカンケーないことだと聞かなかったフリをして
夜ごと飲んだくれては酔いつぶれて バカ騒ぎばっかしてた


風の吹くがごとく 彼女の噂は堪えることがなかった
外に出歩けないことになってるはずの彼女が
夜の繁華街で知らない男の腕に抱かれてただの
何着もの服を買いあさっては
店を出るなり おもむろにバッグからハサミを取り出して
半狂乱になってズタズタに切り裂きまくってただの
突然泣き出したかと思えば また突然に奇声をあげて叫んだり
親切なお節介焼きが いかにも心配してます風でボクのところへ持ってくる
ボクにはどうすることもできないよと 一言半句も云おうものなら
最低のクズ野郎呼ばわりさ
まったく敵いやしないじゃないか



彼女の心の中で何が起こっているのかなんて
ボクにも もちろん親切お節介にも理解できようはずがない
それでも何かが確実に彼女の中に浸食し 蝕み
壊れてしまった


2月某日
彼女は大量のクスリと強い酒を浴びるほどに飲み干して
あっけなく死んでしまった


その数時間前まで ボクは彼女と電話でしゃべってた
彼女の方から電話してくるなんてめずらしいなと思いながら
受話器越しの彼女の声は 落ち着いてるようにも
震えているようにも聞こえた
少しの沈黙のあと 彼女はなにか云いたそうだったけれど
弱虫で卑怯なボクだから
なんだかそれを聞くのが 聞いてしまうのが恐ろしくて
ひたすらバカなことばかりひとりでしゃべり続けたんだ


ただひたすら バカみたいにしゃべり続けていたんだ




カンケーないってフリをして



陽炎
2015年02月17日(火) 04時58分25秒 公開
■この作品の著作権は陽炎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
☆**2/17**☆
 連詩として1度投稿したのですが
 1番目の詩が割と長めだったので
 一篇の詩になるよう、改稿およびタイトルも変更しました

☆**2/18**☆
 さらに改稿

この作品の感想をお寄せください。
No.5  陽炎  評価:0点  ■2015-02-22 22:39  ID:OJmj6OeLU/s
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☆えんがわさんへ☆

返信が遅くなってしまい、申し訳ありません
いつもありがとうございます

こんな身も蓋もない、何の救いもない詩に
素敵な妄想をしてくださって
なんというか、私の表現の足りなさを補ってくださり
またこの詩に、奥行と救済を与えてくださって
未完成だった私の詩を、えんがわさんの感性によって
完成してもらえたようで、すごく嬉しかったです

ボクと彼女の関係についても
素敵な意味づけをしていただいて
愛さえ感じてもらえたなんて
もう、どうしましょ

この詩のことをこんなに考えてくれる人がいて
想像してくれる人がいて
素敵と思ってくれる人がいて
それだけでもう十二分にありがたいです
悲しいどころか、えんがわさんの感性の豊かさに感動してます

ありがとうございました
心より感謝
No.4  えんがわ  評価:30点  ■2015-02-19 18:31  ID:DR2hIgqKGrg
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あー、陽炎さんは多分、「こう受けっとたらいかんよー」って苦笑すると思うんですが。
それでも自分はこう妄想してしまい。その結果、とても素敵な妄想の時間を味わいました。あらかじめ、ごめんなさい。

死んでしまう程に思いつめて、それでも打ち明けられない。そういう微妙な心の位置って繊細で、でも自分にもある気がします。
それでそれを何となく察せれるこの主人公も素敵です。自分には愛を感じました。お互いに恋人以上の、肉体関係以上の、素敵な結びつきを感じました。自嘲することないよって、自分は男の人に言いたいです。

それで、似たようなケースが起きた場合、自分は真剣に悩みを聞いたり、改めようと悟したり、そんなこと言えない気がします。私はそういう時に言葉を吐けないなーって思って、もしそうしても余計死に際に傷つけてしまう、心まで殺してしまう言葉になっちゃうんじゃないか。とか。

だから本当にくだらない言葉でばかわらいで、くだらなくても浅くても楽しくていいじゃんって選択は、こう自分には迫って来るんです。もしオチで「生きるって死ぬ価値もないくらい、くだらねー」って彼女が立ち直っても、説得力は失われない気がします。自分は死んじゃうのが本当に辛かったです。そこまで濃い絶望はあるのか。じゃあ悩み相談も説得もバカ話もできなかったらどうしよーって思ったとき、「俺さー、あんさんのことすっきやねん、明日デートしよう。晴れたらええな。俺スッゲー楽しみや」(なんで関西弁?)とかなのかな、そういうの出来たらなーとか思いました。出来ませんけど。それで死んじゃったら絶望しつつ自分は後悔しないかなーとか思いました。
長くなってしまいすいません。
この詩はそういう風に自分を考えさせたり思わせる素敵な詩だと思うので。どうか誤解されて悲しいよーとは思わないで下されば。
ありがとうございました。
No.3  陽炎  評価:--点  ■2015-02-19 04:49  ID:OJmj6OeLU/s
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☆時雨ノ宮蜉蝣丸さんへ☆

ちょいオヒサです(^^)
いつもありがとうございます

後悔と反省の違い
う〜ん、難しいですね
たとえば、仕事でミスをしてしまった場合
なんであんなミスをしてしまったのだろうかと
気に病んで、そのことで頭がいっぱいになって
他のことは何も考えられなくなるほど
自分で自分を責めて嫌になってしまうのが後悔

一方、反省というのは
他者の方から求められることが多いんじゃないかと
私は思いますね
反省している態度ってあるでしょ
食事ものどを通らないほど気落ちしてるとか
ひたすら低姿勢で申し訳なさそうにしてるとか
もっと前向きに、ミスの原因を自己分析してるだとか
それってただの固定概念に過ぎないんだけど
頑なに信じてる人には糠に釘
だから、ミスをした方がどれほど打ちひしがれていても
反省してると認めてもらえない
「反省してない」って言葉は
自分の考えてる反省と違う反応をされたから
出てきた言葉のように、私には感じられるのですが
そのあたりはどうなんでしょう

ちなみに、時雨ノ宮さんにいただいたコメントに刺激されて
改稿してみました

ありがとうございました
心より感謝
No.2  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:40点  ■2015-02-17 23:19  ID:G/WhzomSw96
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すみません。
点数ミスったので、お詫びも兼ねて。
No.1  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2015-02-19 18:01  ID:pCzZ5RrGuC.
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こんばんは。お久しぶりですね。
お邪魔致します。

知らないということは無いことと同じこと。信じようとすることは疑っているのと同じこと。
奇妙なもので、大昔から知られているのに皆気づかないんですよね。気づかない癖に、気づかない人のことをいつも攻め立てる。
後悔先立たず、ですね。

後悔と反省の違いってどこなんでしょうかね。よく「お前は反省してない」って怒られます。
家に帰った途端に凄まじい自己嫌悪と謝罪の気持ちに襲われて包丁首に当てても怖くないくらいになってそのまま毛布の下で泣いていてもそれは反省してることにはならないんですよね、不思議。

ありがとうございました。
総レス数 5  合計 70

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