或る世界、祈

 今日もどこかで



 銃声の鳴る音がする

 誰かの悲鳴 誰かの歓声

 まるでいつか見た

 戦争映画の ワンシーンのよう


 でも

 目前に崩折れた あの子

             が

 これが

 映画でも

 夢でもない こと
           を

 伝えている 見せつけている


 ついさっきまで

 一緒に行こうね って

 この戦争が
       終わったら

 また 一緒に

 本を貸し合って

 内緒話を して

 笑い合おうね って 言ってた



 世界の 軋む 音

 無差別に 響く

 爆音が 銃声が


 温もり

     悲しみ

  記憶

     明日についての しるべ

      の

 すべてを奪っていく


 両目に焼き付く赤い色

 これは暁の色ではない

 世界の黄昏を

 世界が灰色に霞んでゆく前の

 あまりにも脆い

 日常の終焉おわりを告げる 色


 抱き起こした あの子
            の
 体に
    残る 温度
           が

 弾丸の雨霰の最中

 私が死に損なった ことを


 紛れもない現実として叩きつける



 悲鳴も 涙も

 流れない

 あの子は未だ

 赤い液体 を

 流し続けている 
        のに



 なぜ


 視界が眩む

 音が遠のく

 真夜中の遠雷のように


《自身に流れる血潮が

 煮えたぎらんばかりの熱さをもって

 目の裏に 名も知らぬ

 異国の敵兵の死に顔を映す》



 拭いきれない

 死の
    色
       が

 神への願いに

 奴らの死を選ばせた


  そこに良心など

 存在しないと知りながら



 尚もやまない

 愉しげな銃声の大合唱コーラス

           に

 奪われて 
      奪われるたび

 誰かの死を望む 自分に

 ただ
     絶望した





 最初にこれを決めたのは

 確か

 誰か大切な人のためだった

 大切な人 を

 守るために

 よくわからないまま

 決めたのだった


 必死に覚えた銃器の扱いも

 従い続けた理不尽な規律も

 すべては誰かを守るため

 明日の光のためであると

 言い聞かせ

 言い聞かせ



 けれども どうだ

 今 目の前に広がるのは

 明かりにはほど遠い


 機関銃が火を噴く

 悲鳴
     慟哭

 骨を踏み潰すタイヤ

 硝子の割れるような音

   血飛沫

 刃の突き刺さる音

   血飛沫


 頭の凹んだ母親の前で

 煤まみれの子供が泣き叫んでいる


 嗚呼


 こんなはずじゃなかった


 僕が機関銃を持ったのは

 こんなことをするためじゃなくて



     否


 今さら引き返して何になる?



 指先に伝わる振動は

 昔遊んだゴム鉄砲の比ではなく

 弾き出される薬莢の数が

 仲間の積み上げる死体の数と

 重なっていく


 今 や


 何人 殺したか

 撃って
     刺して
 蹴って


 正義の英雄ヒーローを気取って

 何人の部外者を

 この手に掛けてきたのやら


 もう思い出せない

 思い出すことすら許されない

 ただ前だけを見て

 突き進む

 引き金を引き続けるだけの

 意思のない操人形マリオネット


 そこに僕は必要ない

 人型の殺意さえあればいい

 同志なんていない

 いるのは ただ

 作戦のため動く捨て駒ポーンだけ



《誰かのためという名目のもと

 両手が誰かを刈り取ってゆく

 途中退場は許されない

 死ぬまで生きる僕で在ることは

 許されない》



 誰かやめさせて

 でなければ僕を

 一刻も早く

 連れ出して殺しておくれ






《もう、これ以上、》



 私
   に 誰かを
 僕


 恨ま
    せないで
 殺さ






         神様

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2015年04月02日(木) 21時57分37秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
テレビに映る諍いに
「心が痛む」と呟きながらも
それが自国でないことに
安堵している自分がいることを
誰も否定したりはしない

この作品の感想をお寄せください。
No.5  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:--点  ■2015-04-11 01:57  ID:3mSXxTMsmaU
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ヤエ 様

コメント感謝致します。
いくら眺めていたところで、目の前の石ころの気持ちなどわからないように、いくらテレビを熱心に観ていたところで、その向こうに広がる惨劇がどんなもので、泣き叫ぶ人達の心中がどのくらいぐちゃぐちゃであるかなど、わかりもしないものと思うのです。
何故ならば、それは自分でない他人の話であるから。
「知ること」「考えること」と「体験に伴う理解」との間には、埋めようの無い溝が横たわっていると俺は考えています。

こんな拙い詩でも、影響があったならば幸いです。
ありがとうございました。
No.4  ヤエ  評価:50点  ■2015-04-08 15:54  ID:L6TukelU0BA
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色々と考えさせられるニュースが流れていく中
とても印象的な作品でした。
場面が分かりやすく切り替わり、入り込みやすかったです。
今回の自分の作品はこの作品に影響されたのかも知れないと思いました。
失礼します。
読ませて頂きありがとうございました。
No.3  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2015-04-07 08:01  ID:OWxe7ynwPIs
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陽炎 様

コメント感謝致します。

まず、前述のとおり、他人事的な感覚を入れたかったがために、こうなってしまったことは否定しません。自分でも、そうだと感じています。
ただ、この詩はどちらかといえば、激情型ではなく冷徹な詩であり、間違ってもお涙頂戴物ではありません。

銃撃戦、死体、憎悪、兵士、殺戮、正義、慟哭、願望。
嘘であるかのような、でも未だ続いてる悪夢じみた日常が初め映る。音、匂い、色がそれらが現実のことであると伝えてくる。
が、少しずつ視点を引いていくと、次第にそれらはリアリティを失い、終いにはその惨劇が、自分の日常ではなく、遠い異国の他人の日常を映した映像であると気づく。

陽炎さんの感じられた「画面の使い方」「冷静な気持ち」というのは、こういうところから来ているのではと思いました。実際、これを書いていた時は至極冷静で、あまり感情移入してなかったような記憶があります。

読者の方が、これを読んで作者への憤りや嫌悪感を抱かれたならば、それはきっと大成功に当たると思います。
何故ならば、今嫌悪感を抱いた相手は、他でもない安全な世界に生きる自分達のことでもあるからです。

長々説明失礼致しました。「キライじゃない」、励みになります。
ありがとうございました。



游月 昭 様

コメント感謝致します。
なんというか、ああやっぱりだな、という気持ちがしました。
作品を昔から感覚で書く癖があり、本気か否か自分でもわからないことが多いです。故に、游月さんの仰ることは、恐らく正しいのだと思います。直さなければならないやもしれないですね。
一方で、他人事的な感覚を入れたい気持ちもあったので、それがこのような中途半端な出方をしたのかもしれません。

精進致します。ありがとうございました。
No.2  陽炎  評価:30点  ■2015-04-05 16:46  ID:3MOjXOnubh.
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こんばんは、時雨ノ宮さん
拝読しました

まず思ったのは
画面の使い方がうまいということ

こんな使い方、はじめて見ました


テレビの中で起こっている凄惨な出来事が
だんだんと、他人事じゃないぞ、と
自分がまるでその場所にいるんじゃないかと
思わせるような描写

明日もまた会おうと約束した
その約束は永遠に果たされぬまま
少女は還らぬ人となってしまう

大切ななにかを護るために
銃の使い方をマスターした
大切なものを護るためだからと
有無を言わさず、前線に駆り出され
ひとりでも多くの人間を殺せと命じられる

こんなはずじゃなかった
というフレーズは、真理をついてると思いました

ただ、この詩の作者は
きっととても冷静な気持ちでこれを書いたのだろうな、と
そんなことを思いました

つまり、実際には爆撃を受けるでもなければ
兵士に殺されるわけでもない
平和すぎる日常で、戦場にいる人々に思いを重ねようとしても
それはやはり、限界があるから

私はこういう詩はキライじゃないです

ありがとうございました
No.1  游月 昭  評価:20点  ■2015-04-05 12:38  ID:UArH7IFKfkk
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煮え滾らんばかり、と書かれていても伝わって来ないのは、作者が詩の中の「あの子」に本気で付き合っていないからだと思う。
すみません、後半読む気がなくなりました。
こういう作品は「気合を入れて読む」ものなので、作者の本気が欲しい。
総レス数 5  合計 100

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