教えて下さい


それでも、涙は出なかった


小学校の頃はまだ良かった
母方の祖父が亡くなって
葬式でも泣けなかった僕は
泣いてる従姉妹をからかって
姉に怒られ、呆れられた

それでも、遺骨拾いの際には
どうしようもなく涙が溢れて
母に頭を撫でられながら
いささか長過ぎる箸を動かした
骨を砕いて、また泣いた

今思えば当たり前だが
笑う者などいなかった


高校生のとき
父方の祖父が亡くなった
僕は始終絵を描いていて
親戚の面倒くさい話から
逃げていたのを覚えている

もう、涙は出なかった
前と違うところといえば
遺骨拾いに行けなかったこと
少しばかり歳を重ねたこと
それだけだった

目尻をハンカチで押さえる人々を
ただ無感動に眺めていた
親に促され安らかな頬に手を添えると
金属に触れたような冷たさが
指先からヒヤリと送り込まれた


最後まで涙は出なかった

涙を失った訳ではない
怒られた時、悔しい時
理由も無く寂しいときに
熱く頬を流れていく
確かに涙は流れていく


それではなぜ泣けないのでしょう
私は、冷たい人なのでしょうか
親しい人の死を
悲しむ心がないのでしょうか
家族の事ですら他人事だと……

実感がないわけでは無いのです
確かに死を認めています
母方の祖父の静かな背中を
父方の祖父の優しい言葉を
私は時折思い出すのですから

もう居ないのだと
ぼんやりとした気持ちが
浮かんできます
それでもやはり
涙は出ません

教えて下さい
涙を流すことだけが
悲しみでしょうか

教えて下さい
どうして涙は出ないのでしょうか






ヤエ
2015年02月03日(火) 11時35分42秒 公開
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No.8  ヤエ  評価:0点  ■2015-02-11 06:25  ID:BymBLCyvz/o
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千歳さん
はじめまして。
自分の詩は、いつも半分以上 実話や本音から出来ています。たまに、こういうの書いてみたら楽しいかなーとか思って書くこともありますが。

優しさを感じると言って頂きありがとうございます。
No.7  千歳  評価:30点  ■2015-02-11 06:16  ID:IF7T.weMU0s
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実際の体験なのかなと思う位に、リアルで真に迫った詩だと思います。
大人になりつつある世代の等身大の気持ちが伝わってきました。
冷たい人なのでしょうか、という一文に苦悩を、全体に貴女の優しさを感じました。
No.6  ヤエ  評価:0点  ■2015-02-08 19:16  ID:L6TukelU0BA
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游月さん
お答え頂きありがとうございます!
少し安心しました。
もっと効果的に使えるように頑張ろうと思えます。
ありがとうございました
No.5  游月 昭  評価:0点  ■2015-02-08 12:31  ID:1K/KT8CGgX.
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こんにちは。
ご質問いただいているので付け加えます。

>それではなぜ泣けないのでしょう

の行を境としての上下の差異については、
例えば講堂の壇上で下を向いて過去の体験を話している。
ある時から顔をあげて聴衆に目を向け問いかけを始める。
そういった効果は伝わって来ます。

以前の歌番組では、演歌が歌われる直前に、司会者が歌を盛り上げる為に口上を入れていました。(浜村純みたいな人が)

デュエットでは二人の言葉が違うように。

黒澤明の初期の作品に『素晴らしき日曜日』というのがありますが、
ラスト近くのクライマックスで、当時には斬新な、撮影カメラに向かって訴え始めるというシーンがあります。

詩のテクニックとしても効果的な方法だとおもいます。
No.4  ヤエ  評価:0点  ■2015-02-08 10:32  ID:L6TukelU0BA
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野良人さん
そうですね、答えもありますが、それに対しての不安もあります。
私の場合は、愛されていて、親戚に恵まれていて、よく話し、遊んでもらっていたのですが、何故か涙は出ませんでした。
このまま、愛してくれている両親が亡くなろうと泣けないのだろうかと、少し虚しくもあります。何より 苦笑いを零してしまうような事実としては、きっと友人の死では泣くのだろうという確信があることでしょうか。

コメントありがとうございます。
No.3  ヤエ  評価:0点  ■2015-02-08 10:28  ID:L6TukelU0BA
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游月さん
こんにちは!
私だけじゃないのかと、少し安心しました。
「教えて下さい」については、まさにその通りです。
もっと問いかけや自問自答の葛藤を入れる予定だったのですが、長くなってしまって切りました。
どちらにせよ「何か」には届いて無かったと思います。
足りない「何か」、詩として伝わるような文面、これからも模索していきます。
『防人の詩』見ました、奥にズンっとくるような極論に困惑させられ、考えさせられました。程よく繰り返されていて、印象に残る詩ですね。

あと、これは質問なのですが
今回途中から「だ、である」から「です、ます」調に意図的に変えてしまったのですが、これはやはり文を書く上で止めた方がいいことでしょうか?
No.2  野良人  評価:50点  ■2015-02-07 09:15  ID:dJ/dE12Tc8A
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涙を流すことだけが
悲しみでしょうか

あなた的には答が出ていますね、もっと愛して欲しかったとか遊びたかった等の利害関係に有るかも知れませんね。
若者らしい素直な感情が良いと思います、私は借金を残していった親戚には泣けませんでした。
  
No.1  游月 昭  評価:20点  ■2015-02-05 17:01  ID:1K/KT8CGgX.
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ヤエさんこんにちは。

教えて下さい、
ということは、(当たり前ですが)
『自分の事が分からないということで不信感を抱いていて、それでも同時に「〜だけが」という言葉から、問題無いんじゃないの?と問いかけたい葛藤』、
という風に捉えました。

それが詩で何を表しているかというと、文面以上のことは無いような、という感じです。
特徴としては、同情の感に誘われる。
実は若い頃、殆ど同じ事を弟に相談されましたし、中学生くらいの頃、母方の祖父が亡くなった際に弟が母の前でわざと「おじいちゃんが死んでしまった〜」と歌っていた事実があります。母は「情け無か!」と涙をこぼしていました。私にも似たような無表情的感覚があります。(だからこそ→)

これをどうやって詩的に伝えるかというと難しい問題ですが、一人称なので尚更、上の『〜』の内容が、読者自身の疑問符として迫ってくる手法も必要なのではないかと思いました。

(だからこそ→)私が司馬遼太郎の文に涙したように、これからの訓練で感情を成長させていけばいいんだ、というような事を思わせるエピソードなどがあると、なお「グッとくる」のだろうと思います。が、
そうでなくとも 、「何か」要るのかなと。

さだまさしの『防人の詩』は問いかけで終わっています。何か参考になるかも知れません。
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