同心


暗い林に奴を追いつめた
黒目に月あかりが射しこむのが見えた時
私は柄に手をかけたが
奴はすでに刀身を光らせはじめている
生きのこる道はひとつ
刃先を奴よりはやく抜く
背と二の腕の肉に渾身の力をこめ
ばったの脚をはねさせる
まだ抜けていない奴の刀をやりすごし
刃先が奴の喉もとにとどく
左腕が受けた奴の刀にひるみを感じる
私の刀は空に裂き抜けた
左腕を奴のやいばに沿わせながら
苦しまぎれの相討ちにそなえ
私の刀は燕になってもどる
奴の刀は風車になったが
激しい金の音が響く
(勝)
命が火山になって吹きあがる
左手で首がふさがれているが止まらない
奴は背から倒れたが
こちらに向けられた黒目の奥には
辻斬りではない温かい光がうつり込んでいる
なおも見開いているが
首からは奴の意識が浸み出して
左手の力が抜けていく
鮮やかな色が月あかりに浮き立っている
私は刀をさやにおさめて拝し
仏のまぶたを下ろした


游月 昭
2015年01月13日(火) 13時11分13秒 公開
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■作者からのメッセージ
子供の頃は布団の中でこんな事ばかり考えていました

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No.6  游月 昭  評価:0点  ■2015-01-21 10:07  ID:1K/KT8CGgX.
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あさつきさん、はじめましていらっしゃいまし。
「(解釈が)間違っていたらごめんなさい」って全然気にしないで下さい。
自由な解釈が読者の権利だと思いますので。
感じたことを率直に書いていただくことはこの上ないプレゼントです。
「音と掛けている」という意味で私の意図に合っています。
「ラストをもっとテンポよく区切る」というご意見には、前半のこの助長とも思える文の意図からすれば逆効果になるのではないかと考えています。
前作『十字架』同様、スローモーションを表現しようとしていますが、前回よりもさらに短い時間(1秒に満たない)の出来事を、超高速度カメラで撮られた映像をゆっくり再生するように表現しようと試みているので、
「テンポ」はリズム感を生んでしまい、ゆっくりと移り変わる時間を表現するには不向きではないかと思います。
ただ、ご意見をいただいて、後半との兼ね合いという点で見直すべきものがあるのだろうとは思います。
また、その他、前半の、思考では追いつかない一瞬の感覚を表現する色付け方や、後半の一番長い文のような含みを持たせた表現というものをもっと入れ込んでいかなければな、と思っています。
貴重なご意見ありがとうございました。
今後も、感じた事を何でもお書き頂けると助かります。
ありがとうございました。
No.5  あさつき  評価:30点  ■2015-01-20 20:27  ID:qBJb.Is0EhA
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はじめまして。
凄絶で静かな空気感が素敵ですね!
勝という字は血の吹き出す音と掛けてるのでしょうか?(違ったらすみません
前半をもっとテンポよく区切ると、後半が引き立っていいのではないかなと思いました。
No.4  ゆうげつあきら  評価:0点  ■2015-01-19 15:57  ID:/qwab7is9JQ
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ヤエさんこんにちは。
映画のワンシーンの絵コンテという感じですね。
子供の時はいろんな事を思い巡らしていましたが、もう大人になったので、もっといろんな描写を取り込めば良かったなぁ〜と思っています。
侍もの、今度書くときはグレードアップさせようと思います。
コメントありがとうございました。
No.3  ヤエ  評価:50点  ■2015-01-19 00:29  ID:L6TukelU0BA
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格好いいです!!
詩というよりは映画のワンシーンの、描写のようだと思いましたが、
宙に舞う刀の表現といい、血に関する表現といい、
目に浮かぶようでした。

こういうのに憧れて、中学の頃部活に入ったことを思い出しました。
興奮をありがとうございます。
No.2  游月 昭  評価:0点  ■2015-01-18 12:12  ID:qx2ygamosbQ
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時雨ノ宮 蜉蝣丸さん、こんにちは。
こういうの好きだから上手く書きたいなあ
今回詩的じゃないですが、頑張る!(^^)
No.1  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:40点  ■2015-01-13 16:59  ID:XL.y2ypB/fE
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こんばんは。

居合い!ですね。好きです。
詩というよりは時代小説のよう。カッコいい〜。
相手さんは、辻斬りでよろしいのでしょうか。

こういう描写描きたい!小説で(笑)
ありがとうございました。
総レス数 6  合計 120

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