供述

きょう僕は 人をひとり殺しました
気の早いクリスマスソングが
街中に流れはじめたから
きらびやかなイルミネーションが
とてもとてもキレイで眩しすぎたから


きょう僕は 人をひとり殺しました
通りすがりの人でした
黒いロングコートを着ていました
ひどく疲れた顔をした人でした
苦虫をかみつぶしたような顔をしていました
深い深いため息を
いくつもいくつも吐き出していました
タバコ臭いにおいがしました
自分のついたため息がまるで胎児を包む羊膜のように
護られているようでいながら 
一方で閉じ込められてでもいるかのような
不思議な生き苦しさを纏った人でした


きょう僕は 人をひとり殺しました
彼が醸し出す そこはかとない不幸せな空気感が
僕の胸ぐらを掴んで放しませんでした
しわがれた顔で虚ろに淋し気に笑うその表情には
すべてを悟りきったかのような静かな諦めがにじんでいました 


ふいに西風が 僕の頬を弄るように去っていきました
瞬間 かすかにささやくような声が聞こえたような気がしました
雑踏にかき消されてしまいそうなほど小さく か細い声でしたが
たしかに僕は その声を捉えました
頭から電流を流されたような気持ちでした
諦めなんてそんな 生ぬるいものなんかじゃなかったのだ
彼は生きているなにもかもに絶望してしまっていたのだ
捨ててしまいたいのだ お終いにしてしまいたいのだ
僕は核心的にそう確信しました
僕は なんだかよくわからないものにひどく興奮し
そうしてわなわなと全身を震わせました
湧き上がる欲求を 抑えることができませんでした
だから殺しました 
間違いありません
僕が殺ったんです



相変わらず街にはクリスマスソングが流れ続けていました



    ジングルベル
       ジングルベル 鈴がなる

    ジングルベル
       ジングルベル
          誰のために鈴はなる

    ジングルベル ジングルベル
       僕のためのベルは多分
          もう一生鳴ることはないのでしょうね




きょう僕は 人をひとり殺しました
あまりにも哀しそうな顔をしていたから



あしたはきっと
誰かが僕を 殺してくれる


陽炎
2014年12月02日(火) 09時18分17秒 公開
■この作品の著作権は陽炎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
前回投稿した『動機』の改訂版です

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No.13  陽炎  評価:0点  ■2014-12-27 09:33  ID:OJmj6OeLU/s
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☆ゆうすけさんへ☆

返信が遅くなってしまい、申し訳ありません
いつもありがとうございます

「自分がついた〜」のところ
気に入っていただけてうれしいです
ため息つくって自分の中の重たく澱んだものを吐き出す行為ですよね
吐き出しているんですけど、
そのため息によって、自分を見えない薄い膜で覆ってしまっている
そんなふうに思いまして

自殺願望を裏っかえしにしてみたら
きっと「僕」のような
死にたくても自分で死ぬ勇気もなくて
だから、殺されるために他者を壊す
という行為に及んでしまうのかもしれません

私の詩が、ゆうすけさんの創作意欲を
少しでも掻き立てることができていたなら
それはとてもうれしいし
私自身も、書いていく糧になります

また読ませてください、ゆうすけさんの作品。

今年も残りあとわずかですね
いま思ったんですけど
やろうと思っていたことができなかったから
来年にはやるぞー! という気持ちになって
また1年、生きていくことができるのかもしれません
よいお年をお迎えください

いつも丁寧に読み込んでいただき
心より感謝
No.12  ゆうすけ  評価:50点  ■2014-12-24 10:07  ID:1SHiiT1PETY
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 前作のロングバージョンですね。それぞれに、それぞれの趣があって面白いと思います。
 殺した、これは実際に殺人を犯したようにもみえて、そうではないようにもみえる。死ねばいいと言い放っただけのようでもあり、そう念じた、或いはただ思っただけのようでもある。或いは、鏡に映った己自身への緩やかな殺意にも感じる。緩やかな自殺願望、じわじわくる心の闇、しっとりと味わえる作品ですね。
 読む人の性格とかその時の感情によって変わる解釈とか感想とか……詩ってやっぱり面白いものなんだなと、皆さまの感想も読ませていただいて再確認です。
「自分のついたため息がまるで胎児を包む羊膜のように
護られているようでいながら 
一方で閉じ込められてでもいるかのような
不思議な生き苦しさを纏った人でした」
↑この表現、いいですね。自分のため息、自分を卑下したり現状に不平不満を言っておきながら自分をその場所に縛り付けたり改善を諦めたりするような、そんな読み方ができます。私が読む小説にはこんな表現はないなあ。
 クリスマス、マスコミが勝手にお祭り騒ぎにして各企業が商売を勤しむだけの慣習と考えちゃうな〜。光り輝くネオン街を闊歩する幸せな者と、そうでないものとの光と影……若いころ「クリスマス活動の撲滅」とか言って男同士飲んでいたのを思い出しました。周囲から見れば痛かったかも。
 今年もあと僅か……やろうと思っていたことの大半もできず、書きたい小説も書けず、詩を書くと切ない愚痴になりそう。ここに来る余裕もなかなかなくてとほほな気分。陽炎さんの詩を読むと、もう書くの無理かなって思っていたのがまた書こうって気持ちになれるんですよね。言葉の世界、自由に羽ばたいていきたいものです。
No.11  陽炎  評価:0点  ■2014-12-17 07:57  ID:OJmj6OeLU/s
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☆史裕さんへ☆

返信が遅くなってしまい、申し訳ありません
お読みいただき、ありがとうございます

>一部分が一部分に殺されている

ああ、なるほど
たしかにそういう解釈もありですね
己自身の中でも、いろんな葛藤があって
ある想いがある思いを殺して
そういうふうにして生きてる、ということも
あるいは云えるかもしれないなあ、と
史裕さんの評を読みながら思いました

なによりメッセージを書いてもらえるほど
うれしくなってもらえたのが嬉しかったです

ありがとうございました
心より感謝
No.10  史裕  評価:40点  ■2014-12-11 18:22  ID:oJAeGLThmOU
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読ませていただきました。

殺した誰かもきっと『僕』なのかも知れないと変な解釈をしてしまいました。
一部分が一部分に殺されているような、そんな形。
なにかと戦っているようであり、逃げているようでもある。
総じてそれら踏まえて生きているというような、逆説的な捉え方で読んでいるうちにうれしくなってきてメッセージつけてしまいました。
まとまりのない分で申し訳ありませんが、感想までで失礼します。

読ませていただきありがとうございました。
No.9  陽炎  評価:0点  ■2014-12-07 18:25  ID:OJmj6OeLU/s
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☆アカショウビンさんへ☆

いつもありがとうございます

小説も書かれる方からそのように感じていただけたのはうれしいですね
毎回、いろいろと考察してくださり、ありがたい限りです
鬼気迫るようなものが描けていたとしたならなによりでした

ありがとうございました
心より感謝
No.8  アカショウビン  評価:30点  ■2014-12-06 15:49  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。
 素人のくせに生意気ですが、今作は起承転結がしっかりした小説のように感じました。俺(失礼)の魂の言葉を聞けみたいな感じが薄いような。しかし、これは自分の勝手なイメージで、陽炎さんが今作で表現したかったものではないのでしょうね。
 しかし、考えすぎではありますが、今までの連作として見た場合ある男性を連想してしまいました。もしそうだとすれば悲劇的で、そして一歩引いたような力強さを感じますし鬼気迫る印象を感じました。
No.7  陽炎  評価:0点  ■2014-12-06 10:18  ID:OJmj6OeLU/s
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☆逃げ腰さんへ☆

いつもありがとうございます

今回、一人称を「僕」にしたのは意識的です
少年を主人公にしたかったためです
また、前回の『動機』ではひらがな表記でしたが
こちらは尺を少し長くしているので
間延びした印象になるかなと思い、漢字表記にしました

憎悪の理由を明確にしていないのは
それが理由ではないから
憎悪でも怨恨でもない、「僕」の個人的な理由
(つまりは<殺されたい>がための>による犯行であることを描きたかったので

一人称の違いと、理由を明らかにしていないところ
ここに気が付いてもらえて
凄くよかったと云っていただけて
とてもうれしかったです

闇落ち。。。そうですね
明るい方と暗い方
光と闇
どちらを描きたいかと云ったら
やっぱり暗い闇の方に照準を宛てたくなるのが
私の性分でして^^;

ありがとうございました
心より感謝


☆時雨ノ宮蜉蝣丸さんへ☆

いつもありがとうございます

前回、改稿したものをUPすると書いたので投稿しました

楽しい人にとってはとても楽しいイベントなんだと思うんですよ、クリスマスって
でも、そういうふうに楽しめる人ばかりがいるわけじゃない

そうですね、蜉蝣丸さんの仰るとおり
この詩は主人公である「僕」が
たまたま通りすがった不幸を纏っている(ように見えた)男性に対して
瞬時に自分と同じにおい(人生を捨てたい、終わらせたいという思い)を嗅ぎ付けるんですけど
その男性に対しての情愛は抱いていないですね
愛を抱いたとすれば、それは自身に対する自己愛
死にたいくせに死にきれない自分と重なって見えてしまったがために
殺害に及んだんです

心境の変化、というほどのことはないんですけど
人が人を殺すという行為
その心理についていろいろ考えたり
人間の営みについて、すべてを諦めることができれば
もっと楽になれるのかなあ、とか
そんなことをあれこれ考えたりしているせいかもしれません

ありがとうございました
心より感謝


☆えんがわさんへ☆

お読みいただき、ありがとうございます

あ、やっぱりそこ気になりますよね
静かな諦めがにじんでる人の表情じゃないよな、と
全部を描き終えて読み直したときに思って
違うフレーズに描き変えようかとも考えたのですが
逆にこの違和感を利用してやろうと
なにか『しこり』みたいなものが残せるんじゃないかとも思い
変えずにこのままにしました

中島みゆきの曲に「十二月」という自殺をテーマにした曲があって
遊ばれて捨てられた女が電話できる相手も誰もいなくて
ひとり冷え切った部屋の中で服薬自殺を図るんですけど
街中やテレビの中では恋人や家族たちが楽しいクリスマスを過ごしてて
自分には付き添いも誰もなく、救急車で病院に運ばれてくっていう
暗い、というよりかなり衝撃的な歌で

すみません、ちょっと脱線しました
12月って、クリスマスって
そういう明と暗が、特にはっきり出てしまうように
私は思うんですよね

そしてえんがわさんが読み取ってくださったように
この主人公が求めているもの
壊してくれること、終わらせてくれることなんですね
いろいろ動機について語らせてますが
本当の動機は実はそこなんです

丁寧に噛み砕いていただいて、とてもうれしかったです
行間や余白、スペースの使い方も褒めていただいて

ありがとうございました
心より感謝


☆ヤエさんへ☆

前回に引き続き、ありがとうございます

具体的に描いたことで
つまらなくなったと云われたらどうしようと思いましたが
面白がっていただけたなら何よりでした

ありがとうございました
心より感謝
No.6  ヤエ  評価:50点  ■2014-12-04 00:32  ID:L6TukelU0BA
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こんばんは
前のシンプルなのも素敵ですが
より具体的で面白かったです!
いっそ殺してやろう
そしていっそ殺してくれ
何故かそんなフレーズが過ぎりました。
楽しく読ませて頂きました
ありがとうございます
No.5  えんがわ  評価:30点  ■2014-12-04 00:21  ID:DR2hIgqKGrg
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あっ! 好きだなってフレーズがあります。

    ジングルベル
       ジングルベル
          誰のために鈴はなる

リズミカルに堕ちてくる感じがあって、好きです。
「誰のために鐘はなる」、のあの出口なしの悲しい雰囲気を連想して、いいなと思いました。
行間の使い方も素敵で、余白とか全体のスペースの使い方とか、匠に使いこなされていて、浸りました。

自分が浮かべたのは、クリスマスツリーの賑やかな電飾と、冬と夜の冷たさが、コントラストにあるようなそんな光景。

気になったのは。

>苦虫をかみつぶしたような顔をしていました

の表現が、悔いを感じて、動機で語られる何もかも諦めたかのような諦念とは、ちょっと違うような。
悔しい、って言うのは、この世に未練があって、だからこう、生きていく意志みたいなのを感じて。
ここは、あの、被害者の心境の変化まで描こうとしていたのなら、その意図に脱帽なのですが、ちょっと違和感がありました。

この主人公さんは、自分の一方的な思い込みなのですが、
「メリークリスマス!」と癒してくれる救いよりも。
何というか、終わらせてくれる、壊してくれる、そういうのを望んでいるような。
だから「殺してくれる」ってのが、凄くしっくりして、どうしようもない辛さみたいなのを感じました。

自分は世間に流れて浮かれてそうで、己の浅さにあうーと。なりましたです。こんな感想でごめんなさい。
No.4  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:30点  ■2014-12-03 19:38  ID:Q0GektCdo9A
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こんばんは。
何か見たことあると思ったら改稿なさったんですね。お邪魔します。

クリスマスって、もとを正せば外国のもので、しかもキリスト教徒の祭りですよね。
文化的な受け入れとかその辺はまあいいでしょうけれど、妙に義務的な盛り上がり傾向になりがちなのはよろしく思えません。

この人(僕)の脳内でどんな化学変化があったかは知りませんがクリスマスの雰囲気が起爆剤になったことは否定できませんね。
皆が楽しげに嬉しげにはしゃぐ中、独り悲しげな男性。溜め息を幾度となくつき、虚無と諦めの入り交じった笑みを浮かべている。

楽しいはずの空気の中でうちひしがれる人を見ると、無性に近寄りたくなって、
何故だか「今ならこの人と心中(とかそういうこと)もできそう」って気持ちになること、あるんです。
それは間違いなく自分のエゴで、愛でなく同情であるとわかりきっているのに。

前回のごっそり削ったやつも、悪くなかったんですけどね。
逃げ腰さんの仰る通り、最近闇落ち気味ですね。何か価値観の変化的なことでもありましたか。
どちらにせよ、俺は貴方の詩をこれからもこれまで同じく読み続けますが。

どうか落ち着きになってください。
ありがとうございました。
No.3  逃げ腰  評価:50点  ■2014-12-03 09:59  ID:IrIj9PJlmeE
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陽炎さんへ

凄くよかったよ。陽炎さん@闇落ちですかね笑
軽快なメロディとうかがい知れない憎悪の深さは対照的ですね。

実は普段なら憎悪の理由を書くのですが、今回は書いて言いません。また、いつも一人称とは違いますね。意識的なのか無意識なのか。気づいていたのですか?

良き詩を。そして鞘をお戻しください。ではでは。
No.2  陽炎  評価:0点  ■2014-12-03 09:46  ID:OJmj6OeLU/s
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菊池さん、私は受け狙いで詩を描いたことは一度もありませんよ
それから、その自分は高みに立ったつもりでの上から目線な発言
相変わらずですね
あなたの為になるなら?
少女に人生を説こうとした?
誰かに人生を説くほどあなたは偉い人間なのですか

何を思って、どういう世界が詩の世界だと思っているか知りませんが
あなたはあなたで、自分の思う詩を描けばいいし
私は私で、私の描きたいことを描いていきますよ

不快な気持ちにさせてしまったなら申し訳ありませんが
あなた個人の意見を、さもこれが一般論だと云わんばかりに
正義面を振りかざすようなクセ、少しは直されたらいかがですか
No.1  菊池清美  評価:0点  ■2014-12-03 05:51  ID:/dxzQ0Wmf36
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あなたの恨み節も生きる為のエネルギーに成るならと思っていました、此れは受け狙いですか。
あの時止めたのは少女に人生を説こうとしたからです。
  
殺すなんて事は詩の世界から最も遠い事でしょう。
  
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