パラソル・テーブルの庭
昼下がり、浅い川に浸る大きな石を何となく眺め続けるような感情で
夢の中、見知らぬ路地を一人うろついていた
(電柱に電話番号を大きく載せた何かの張り紙がしてあった気がする
目を覚ませば、馴染みの部屋
うつぶせていた腕の、目蓋を押し当てていた所が薄ら赤くなっていたので
首を振り続ける扇風機の風に当ててみたが、すぐに腕を下ろした
近くから、道路工事の音、機械で石を砕く音が聞こえてきた
こめかみを伝う汗を中指と薬指の腹で軽く拭って、干した洗濯物の風に揺れるベランダの方を見遣った

そう、確か、何かを思い出しそうになった
そして急に眠たくなったのだ
諦めに似た気持ちで、うつぶせになったのを憶えているが──

そう言えば
昨日の夕方、川べりで鹿を二匹見た
親子だろうか
川に生える草を食べに来たのか、涼みにきたのか
女学生二人が写メを撮ろうと歩み寄っても逃げないのに
僕が近付いて行くと逃げていった
その川べりから車道を跨いで南北に長く伸びる歩道沿いに
洒落たイスラエル料理の店を見つけたので中に入り
生ビールとハーブチキンのカツレツを注文した
僕の前のテーブルでは、褐色の肌の中年の男と女が異国の言葉を交わしていた
夫婦だろうか
男がトイレに立ち、残った真向かいの女が僕の方に目を向けようとしたのを察して思わず目を逸らした
壁にはイスラエルの風土や人を描いた絵が掛かっていた
店の奥はパラソル・テーブルの小さな庭に続いていた
三方、高い木の壁で囲まれたその庭から開けていく、
眩い雲のゆったり流れる空を店の中から眺めた
2014年07月12日(土) 14時56分41秒 公開
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No.8  A  評価:--点  ■2014-07-31 22:37  ID:pA0QzJ9KbiA
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お試しさん

ご感想ありがとうございます。

書きながら問題の入口に立ったような気がしたのですが、僕にはこれが限界でした(笑)「やった、成功だ!」という確信のようなもの、インスピレーションが僕にも降りてくれるとよいのですが…
No.7  お試しさん  評価:50点  ■2017-12-03 15:03  ID:IaJIiwK2bLw
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題名すてきです。こころみは正しいと感じます。
ただものにはできてないでしょうか。そもそもこの手法と方向性で成功してる人なんてごく限られていますからね。挑戦しつづけてほしいです。
個人的に入り込めないワードが沢山ありますが、この手法に未来を感じるので満点です。虎のやつよりジワジワきます。
No.6  A  評価:--点  ■2014-07-17 01:38  ID:pA0QzJ9KbiA
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小夜さん

ご感想ありがとうございます。

『(』は確かに、閉じるのが一般的な使い方だと思うのですが、改行しているため、『)』がなくても文の質の違いを表現したものとして十分伝わる、また、その方が見映えがよいだろうと考え、あえて外しました。文と文が基本的に改行なしに連なる散文だと『()。』という書き方が一般的ですよね(例外はあるかもしれませんが)。

また、よろしくお願いします☆
No.5  小夜  評価:30点  ■2014-07-16 11:09  ID:TEtKilnlhf.
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こんにちわ☆

逃げ腰さん同様、私も『実力のある書き手さんだなぁ』と思いました☆
その才能、少し分けて下さぁいw
ただ、ちょっと気になる部分が。
3行目に『 ( 』があるのですが、どこにも『 ) 』が見当たらないぃ(汗)
わざと…なのかな??
もしそうだったら御免なさいですぅ(涙)

次回作も楽しみにしてます☆

No.4  A  評価:--点  ■2014-07-15 00:54  ID:L6TukelU0BA
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逃げ腰さん

はじめまして。ご感想ありがとうございます。

夢って、確かに論理的に破たんしてる感じですよね…破たんさせたまま文章に起こせば、それが夢っぽさになるというご指摘だと思うのですが、その通りだと思います。ご指摘を頂いて思ったのですが、僕がやろうとした事は、「夢」よりも「夢想」に近いのかな、そんな気がします。「虚構と現実」の境界が曖昧になる感じに挑戦した、と言えるかもしれません。文章のレベルで見た時に、たとえ現実を描いても、虚構と現実が反転するような不思議な感覚が生じる事があります。この感覚は、面白いですね。この感覚にますます自覚的でありたい、創作に活かしたいという気持ちがあります。
No.3  逃げ腰  評価:50点  ■2014-07-13 07:11  ID:j.IsO/gOFss
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ただただ圧倒されました。実力のある書き手だと思っていましたが、予想を上回りました。
子供の頃文意を超えて、文面の巧みを最初に自覚しましたよねぇ。
若い頃は意味などより先に文章の「美」に触れるというか…。理屈ではないですね

遅れました、はじめまして逃げ腰です。
僕は過去の詩をしっかり読んだことが無いので、相対的に評価することができないのですが…、随分虚構と現実が曖昧で良いと感じます。

あえて言うなら夢の事を自覚的に覚えすぎてると思います。
夢はもっと支離滅裂で論理が破綻しています。そういうことを意識すると随分わかりやすくなるかもしれません。(ただ、やりすぎると曖昧さが後退するような気もします。)

僕が言えることはこれくらいですね…失礼します。
是非是非一層の創作活動を!

No.2  A  評価:--点  ■2014-07-12 16:59  ID:pA0QzJ9KbiA
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游月 昭さん

ご感想ありがとうございます。

「こじゃれた」は「小戯れた」が元で、ふざけたという意味があるので「くだらない」と取られると正反対の意味になるみたいですね。知りませんでした。ちょっとお洒落な、くらいの意味で使ったのですが、「洒落た」に訂正します。

夢と現実(僕自身の生活)が入り混じる感じを書きたかったのですが、単に中途半端な感じになってしまったかもしれません…詩は難しいです。
No.1  游月 昭  評価:40点  ■2014-07-12 16:21  ID:qVUr7kcrwv.
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こんにちは。

『森を抜けて』を読んだ後なので、全くの別人のように思えます。前半の文が特にひどい。詳細に書くということ自体は良い場合もありますが、この詩の場合、ちゃんと整理されていないだけではなく、無駄も多い。
境界線をつづったところも整理されていなくて読みづらいです。
「小酒落た」は、「洒落た」か、「小粋な」の間違いですね。
「こじゃれた」の意味を調べてください。

とは言え、前半の描写の切り替えが面白いと思いました。
ありもしない川の風景を見せておいて、飛ばして夢の中での電柱の文字をクローズアップ。次に腕、そして耳という近景と道路工事の想像の遠景を同時に映した後、更に頬の単独近景へと切り替え。
このカメラワークを楽しませていただきました。

後半も現実的と幻想的が入りまじっているので、
実は!冒頭の例えが、唯一の現実だったのではなかろうか、などと思える現実的な幻想風景。

不思議な面白さでした。
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