魔術師とアホウドリ


女は私にふれることなく
胸の奥にある芯に火を放った

瞬く間に燃えひろがる炎は
女の周りを焼きはらい
その炎の中心でひとり
女は涼しげに舞っている

油が次々にそそがれ
私の姿が燃えさかる
それでも
女をほのかに照らし出す
数多の篝火の一つに過ぎない

火の粉はカケラさえ女に届かず
焼けおちた芯が胸のそこを詰まらせる

炎は肥大し続け
道は女へ向かう一本のみ
燃えれば燃えるほど
道は綱のように細くなり
私は両手を広げたアホウドリ

魔術師との対峙に
私の翼は大きすぎた
よろよろと歩む脚が綱をはずれて
私は炎のすきまからまっ逆さまに
深い灰へとしずんでいく

足場のない暗闇から
見上げれば遠く
女は明々と空に浮かぶ月になって
永劫の輝きをやめない





游月 昭
2014年07月22日(火) 01時58分51秒 公開
■この作品の著作権は游月 昭さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
恋愛における游月が考える、愛と恋についての解説が必要かもしれない。下は三月に書いたもの

〜恋愛詩について〜

私の恋愛詩は独特らしい。
自分では、それが真実だと思うのだが。愛について、恋について、現在の私の見解を記してみよう。

《愛》

対象が気づこうが気づくまいが、善を注ぎ続ける意識。→フラれること=愛の終わり、ではない。つまり、極論、対象からの働きかけは無関係。対象本位。また、愛の行為の見返りは対象の幸福。「見返りを期待しない愛」は存在しない。

《恋》

対象からの特別な好意を欲する意識。また、特別扱いを欲する意識。自分本位。生物全てに組み込まれた「仕掛け」
(自分本位≠身勝手)

そんな事を考えている。私が詩を書く際の感情の再現元は、思春期から25歳位までの自分の経験。しかし、解釈は当時の意識と言うより、現在から過去を覗いた印象と、刻まれて今も残る感情。

こうなると、恋詩は行く先、天使対悪魔の闘いのような様相を呈するだろう。

−−−−−−−
7月現在の補足
恋=野性=感情、
愛=理性=意思

この作品の感想をお寄せください。
No.6  游月 昭  評価:0点  ■2014-07-23 17:13  ID:Lg/anJZZyX6
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かげろうまるさん、

対決!に見えるようにしているのでそれでいいんです。ただ愛ではなく、恋なのでアホウドリにはどうすることも出来ない。
(作者のコメント欄に解説を載せました)
恋の対象者「女」にとっては告白されるまでは何の関係もないので、恋に侵された方が不利。そんな感じです。
かげろうまるさんの書かれた「熱情」は嬉しく頂きました。
ありがとうございます。
No.5  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2014-07-23 15:27  ID:rd6Wwgv9l9s
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どうも。すみませんです。
恋愛モノでしたか、いやぁ凄まじく間違ってましたね……。
しかし俺にはそう見えたも事実であります。
何か愛を感じさせる節が(もっとわかりやすく)欲しかったのです。

大いなる勘違い、すみませんでした。
No.4  游月 昭  評価:0点  ■2014-07-22 23:48  ID:STGQyRbvtcY
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時雨ノ宮 蜉蝣丸さん、こんばんは。

しぐれのみやかげろうまるさんが書かれたようなエネルギーが出せれば良かったんですが、恨みとは違うので難しい。

「僕には彼女しか見えない」
という恋心を表現するベタな言葉がありますが、今回は、周りが恋の炎で焼き付くされ「女」しか見えないぞ状態に持っていってみました。しかしもっと燃やして、「女」をもちょっとだけ苦しめないと、ただの告白のない片想いですね。んん、やっぱりダメだ。いつか「女」を痛めつけます。(勿論、詩の中でだけ。)優しい俺にそんなことができるかなぁ(涙)

炎、ありがとうございました。
No.3  游月 昭  評価:0点  ■2014-07-22 23:35  ID:sm5R9tKqGyk
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ヤエさん、こんばんは。
ご感想ありがとうございます。

大概は「あなた」「君」などの二人称であるはずの女性を「女」という少し投げやりな三人称にしてみました。どういうことが起こるか、と思えば、ドラマチック風味が抑えられて静かなものになってしまいました。炎、焼き付くすなどの言葉を使ったにもかかわらずおとなしくなったのはおそらく、三人称で、と決めた時点で游月の頭が冷静になり過ぎたのかな、と思いました。
大筋内容、ヤエさんの仰るとおりです。三人称というところから、「魔性の女」に感じさせるというのが、正解かもしれません。やってみるもんですね。教えて頂きありがとうございました。

いろいろと言葉の仕掛け花火も入れたんですが、やっぱり静か過ぎたなぁ。

No.2  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:30点  ■2014-07-22 17:18  ID:/9yoAHRnQNY
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こんにちは。

古風なファンタジーですね。住み処を焼き尽くされたアホウドリの哀れな最期って感じでしょうか。

貴様の放った無数の火花が 漁り火の如く広がり咲くのを
私は沖の波間の闇から 届かぬ叫びを上げて見ていた
焼け野の炭に涙を落とした 妻子と仲間の骸の上に
何故お前達が死なねばならぬか 我が問に答えし者はいない

なんかそういうバックストーリーがありそうです。ファンタジーの一説として。
久しくファンタジー書きたくなりました。ありがとうございましたです。
以下、めんどくさかったら放っといてください。

無力な我らの嘴なんぞ 貴様の心臓に掠れもしない
非力な雛らの涙の色が 脳裏をよぎって掠れていくのだ
ああ折れた翼に火が灯る 哀れな一羽の仇討ち 末路
今や翼は風など切らぬ 導け私を 待ち続ける同胞のもとへ
No.1  ヤエ  評価:50点  ■2014-07-22 08:37  ID:L6TukelU0BA
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魔性の女……という言葉が頭をよぎりました。
燃え盛るような恋、素敵です。
どこか哀しいような、虚しいような、不思議な感覚に陥りました。
上手く言葉にできずに申し訳ない。
でも、この作品好きです。
黒い闇を背景に、幻想的な映像が浮かぶようでした。
総レス数 6  合計 80

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