時の構造−3


 時は川を下るように進んでいて、早かったり遅かったりで、また、人により、シチュエーションにより、違う時の歪みが互いに上手く噛み合っていて不思議なものだが、例えば、木漏れ日の中、「この店美味しいね」とゆったりした会話を楽しむ、高級な食事をとりながら急流を下っている若い二人の幸せなデートのシルエットを壁紙にして、中年夫婦は曇り空の下で、両脇をコンクリートで護岸された農業用水路の淀みの上を浮き沈みしながらゆっくりと順番がやって来るのを、夫が時々首を伸ばし、「まだか?」「もう帰ろうか、」などと呟いては、「ちょっと、俺のイカダ全く動かなくね?」と目まぐるしくグルグル回転しているボートに立ってぼやいている店員を呼び止め、「あのー、あそこ、空いてるんじゃないですか?」と怪訝そうに、流されている舟を指差したりなんかしながら、また、それを見た妻は、「貴方、ゆっくり待ってましょうよ。ほら、あの子、孝君に似てない?」などと木漏れ日の中でゆったりと急流の景色を楽しみ、下りながら、待っている。



游月 昭
2014年05月18日(日) 22時12分30秒 公開
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■作者からのメッセージ
単に一文詩というだけで、何も仕掛けはありません。

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No.6  游月 昭  評価:0点  ■2014-05-23 21:42  ID:qfECEIfZhSM
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shikiさん、はじめまして、こんばんは!
ご感想ありがとうございます。。

>一文詩というのが川
一文詩にこだわっちゃいましたねぇ。
会話内で終止しているので、一文詩であるかは疑わしいですが、同じ時の中ということで何となくこだわったところですね。

>(「待っている」が、)人が最終的に行き着くところの、死、を思わせて

これは、青ガラスさんが仰るように、川の流れが必ず海に消えること、あるいは、皆、滝に飲まれること、またまたあるいは、堰に留められること、などから、死が待っている、と読めますよね。

またよろしくお願いいたします。
No.5  游月 昭  評価:0点  ■2014-05-23 21:30  ID:IIbnOzQ/0rQ
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楠山さん、こんばんは!
ご感想ありがとうございます。

面白い読み方をされますね。
と言うか、ごちゃごちゃ文が飛んでいるので、その飛翔の度にいろんな想像力を楠山さんが働かせているんでしょうね。
楠山さんが仰るような、例えばこの登場人物が皆、それぞれ同一人物で、「時代」を繋げて同じ空間に描かれているとしたら大興奮です。かなり技術が必要ですね。
ご感想面白かったです。
No.4  游月 昭  評価:0点  ■2014-05-23 21:18  ID:4knla9qyP2A
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青ガラスさん、こんばんは!
ご感想ありがとうございます。

ちょっとメッセージに書いてますが、今回軽めなものを選びました。

要は、人と鼠とインフルエンザの「時の流れ」はそれぞれ違っているのに、人の時という一つの世界で歪まずに並列の関係に有る。ってことですね。
人はどれだけ進化したか一年では計れず、最低二・三十年は経たないと少しも見えないが、インフルエンザは一年で抗生物質が効かなくなる。つまり急速な進化。
ただそれだけを言っています。

ラストの「待っている」は、大変不親切な一文詩ってことで読みにくいですよね。すみません。
中程の、『順番がやって来るのを、』が、夫婦それぞれの言動を示しながら、ギャルソンの超忙しい、つまり、物凄く遅いイカダの上の時の表現を挟んで、やっと「待っている」にかかります。
●結局読みにくいということは、歪みが噛み合っていることを、上手く詩で表現出来ていないことを露呈しているかもしれないし、あるいは、詩で上手く表現するのが難しいくらいに時の構造は複雑である、ということかもしれない。
No.3  shiki  評価:40点  ■2014-05-22 10:47  ID:eXTv36Gs5Wg
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こんにちは。
読ませていただきました。
まず、一文詩というのが川をあらわしているようで面白い作品だなあと感じました。
時って、本当にその時代や年齢によって早かったり遅かったり、時には止まっているように感じたり……そんな感覚がうまく表現されているのが良かったです。
これは私の誤読かもしれませんが、最後の「待っている」が、人が最終的に行き着くところの、死、を思わせて、何やら静かな気持ちになりました。
深くはわからないのですが、色々な想像ができる作品だと思います。
No.2  楠山歳幸  評価:50点  ■2014-05-21 22:24  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。

 >違う時の歪みが互いに上手く噛み合っていて不思議なもの

 ここがこの詩のヒントでしょうか。
 恐らく実験的な詩だと思いますが、
 若い二人は昔の夫婦でしょうか。夫婦は意見がかみ合わないけどうまくやっているということでしょうか。
 川を時間に例えて、
 夫と妻の考え方みたいなものが時間で表現されているみたいで、また、文章も俯瞰しているみたいな感じでめっちゃ好みです。
 こういう詩も書くんだなあ、と驚きと共に、半分も理解できませんが、そこが想像を膨らませるみたいで良かったです。

 たいした感想が書けなくてすみません。
 ありがとうございました。
No.1  青ガラス  評価:40点  ■2014-05-21 07:48  ID:6Sbbo4.76/Y
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遊月さん、こんばんは〜!

時は川を下るように
冒頭から考え込んでしまいました。悪い意味では無いので、
流れる川(時)はイメージできるのですが、
時が下るイメージは持っていなかったので
急流を下っている若い二人、というのはちょっとしたセンセーションでした。
下るというと落ちるイメージなので、、
長いスパンで見ると、やがて海に帰る
そう、考えるとやはり下るなんですね。やっぱし論理的な構造ですね(*^^*)

夫と妻の会話、微笑ましくて、ほのぼのでいいですね。
歪みがうまく噛み合っているって、この事だったんですね。
今わかりました!

高級な食事!男っぽいフレーズ。
壁紙にするなら、もう少しロマンティックなエピソードが欲しいとこですが
大切な人をエスコートする、とか夜景を眺めながらとか
でも、気取らず、高級、バーン!が、なんかいいです!
で、最後の待っている。私には謎です。。。

いつもヘタなコメントですみません!こらえて下さーい。
ギャグじゃ無いです(笑)

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