昼間、投げやりな気持ちで知らない駅を降り、
駅前雑居ビルの立ち並ぶ辺りを少し離れたところ
街中を流れる、ゴミと汚い泡の浮かぶ緑色の川に架かる橋の手前を
横断歩道の信号が青に変わって歩き始めた時、
五月の陽気、一時停車する車数台と、行き交う人々は川と共に僕の心だったが
すぐに、いつものように、何もなかったみたいに忘れ、僕はふらふら歩き続けた
やがて立ち寄った小さな公園のトイレで用を足して手を洗い、鏡に映る表情のない顔を見て
浮き立つ気持ちを少しは感じられるのに、と頭の片隅でつぶやいた
トイレを出て、微風が頬を撫でたのを慰めを受けたように思ったが
胸の中の何かが急に堅くなり壁を作ったので、溜息が行き場を失い、おろおろした
それからベンチに浅く腰かけ、しばらくぼうっとした
空を見上げると、世界は卵の形をしている事に気付いた
それがたまらなく窮屈で、立ち上がり軽く伸びをしてみたけれど何も変わらなかった
ありとあらゆるものが騒々しく、耳を塞いでも焦燥に耐えられないのに
どうすれば怯えずに済むのか
2014年05月14日(水) 00時35分01秒 公開
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No.4  A  評価:0点  ■2014-05-17 15:58  ID:pA0QzJ9KbiA
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青ガラスさん

ご感想ありがとうございます。ドームのような感じ、分かります。それに、安心出来る場所だと包まれてるって感じしますね。でも、街中だと何だかうるさくて、どうも包まれてるって感じじゃないんですよね…焦燥というのは、さわがしさから早く逃れたい!という事かもしれません。そして耳を塞いでも焦燥は止まないという感じでしょうか。
No.3  青ガラス  評価:50点  ■2014-05-16 14:03  ID:6Sbbo4.76/Y
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わたしは空を見上げた時、ドームの中に閉じ込められている
とか、逆に、包まれているとか感じたりしますので
世界は卵の形をしていると書かれているところが好きです。
感じ方は違うけど輪郭が一緒のようでうれしいです。

<行き交う人々は川と共に僕の心だった
心情の表現がとてもいいですね。

緩やかな日常に沈んでは浮かぶ焦燥が、時々鈍く刺す。
その喧騒が耐えられないと、世界の殻の中で叫んでいる。
という感じでしょうか?


No.2  A  評価:0点  ■2014-05-15 23:30  ID:pA0QzJ9KbiA
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游月 昭さん

こんばんは。

ご感想ありがとうございます。普段使わない言葉づかいで、意味が通じるか不安だったのですが、面白いと言って頂けて嬉しいです。
No.1  游月 昭  評価:40点  ■2014-05-14 01:29  ID:..K.tfL042k
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こんばんは!一番のり?

内容はあまり展開がないのですが、面白いと思いました。
というのは、前半は語り手の心情を周りの景色で捉えさせるところ、さらに、後半以降の表現が巧みに感じられた事。

>胸の中の何かが急に堅くなり壁を作ったので、「溜息が行き場を失い」、おろおろした
>それから「ベンチに浅く腰かけ」、しばらくぼうっとした

その後も有りますが、「」内が特に面白いと。ありがとうございました。
総レス数 4  合計 90

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