空夢

 大っ嫌い

 そう言ってやった 五月の初め

 あいつは廊下の先でぶっ倒れて

 それきり動かなくなった


 教室 秒針

 花瓶の躑躅

 死んでほしい

 そんなこと言ってない

 消えてほしい

 そんなこと願ってない

 なのに 勝手に

 消えやがった あの根無し草

 まるであたしが

 殺したみたいで


 まだ

 貸した漫画 返してくれてないじゃん

 昨日の授業 ノートどうすんのさ

 来月発売よ あのアルバム買わないの



 この間

 あんたが校舎裏にいるのを見た

 蛇口捻って 水浸しで

 何度も何度も胃液吐いちゃあ

 咽せて 喘いで

 あたしに気づくと あんたは

 人が嘔吐くのがそんな珍しいか愚図

 そう言葉と胃液を 水に吐き捨てた



 最低な奴だった あの野郎

 人の漫画 返しもしないで

 偉そうに世界のこと語る一方

 勉強できなくて 赤点ギリギリ

 ただの馬鹿 大馬鹿野郎

 あたしのことどう思ってたのか

 今となっちゃ 知る術はない



 ねぇ


 漫画返してよ

 最新巻貸すからさ

 ノート 机の中だよ

 どうせ追いついてないんでしょ

 アルバム買いに行こうよ

 またいつもの小さなCDショップで



 ねぇ


 お願い






 帰ってきてよ





 教室 病身

 空っぽの机



 今日さ あんたからメール来たよ


『いつも ありがと』



 いつになく素直じゃないか

 何か気色悪いや

 いつ送ってきたものなのやら

 あたしにはまったく 見当もつかない



 そうやって日々が

 また流れてゆけばいいな

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2014年04月29日(火) 00時39分26秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
夜中に思いつきで一気に書き上げました。

最近青春ネタ多いなぁ。苦手分野なのに。
そういえば一昨日インフルエンザと医者に言われまして絶賛療養中です。
暖かくなりましたけど油断禁物ですねハイ。

この作品の感想をお寄せください。
No.7  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2014-05-08 17:28  ID:ZWJhCf5isMA
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A 様

コメント感謝致します。
ついてもついても尽きることの無い悪態と、嫌っても嫌っても残り消えない誰かへの想いを感じていただければ幸いです。
大事なものは無くなってから気づくものとよく言われておりますが、俺からすれば、本当はみんな最初からわかっていて、でも最初から大事にし続けることは、常にそれを失うことを意識していくことにもなる。それが怖くて、みんな知らないふりをしているのではないかと思うのです。
例え毎日想いを告げていてもきっと、失えば後悔して泣くんですよ。
ありがとうございました。
No.6  A  評価:20点  ■2014-05-07 03:47  ID:pA0QzJ9KbiA
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拝読させていただきました。表面では互いに悪態をつくような事はしていたけど、本当は「あんた」と「あたし」は心が通じ合っていたという事を思うと感じられる切ない感情が、読み進めていくにつれて高まっていくようです。詩の力ですね。
No.5  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2014-05-02 12:50  ID:JU6rwt95.6k
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青ガラス 様

コメント感謝致します。
いやぁ、そんな真っ当な思考で書いたものじゃないんですが(笑)
病人の悪態を拡大していったらこうなったと……結果的にツンデレ型に収まったってだけなのです。

来ないメールを懲りずに待ってしまう自分も、やはり馬鹿の仲間なのでしょうなぁ。
ありがとうございました。
No.4  青ガラス  評価:50点  ■2014-05-01 10:04  ID:6Sbbo4.76/Y
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リアリティありますね〜
大っ嫌いって言えたのも幸せなのかもしれないと
思わせてくれる素敵な詩ですね。
「あたし」は本当にメール待っているような気がしてきます(*^^*)
正夢かもしれないですね。







No.3  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:--点  ■2014-04-30 11:40  ID:2yvcLrrqfRc
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楠山歳幸 様

コメント感謝致します。
PCの前で嬉しさのあまりニヤニヤが止まらないでいます。ニヤニヤしながらこれを書いています。
突発的な思いつきって素敵ですね。大抵いいものが降ってくるからです。

ありがとうございました。




游月 昭 様

コメント感謝致します。こんにちは。
割とノンストップでPCキーを叩きまくった記憶があります。最初思いついたのは
>>人が嘔吐くのがそんな珍しいか愚図
のところだけでしたw 病人の悪態とか罵倒って簡単に言い返していいのかって迷うじゃないですか。あれがちらっと閃いたわけです。憎いですがインフルエンザが授けてくれた台詞です。
前半以降、切り捨てようかとも思いましたが、尻切れトンボが怖いのでやめた次第です。

あぁ〜、試しましたこっそり。悶絶級に素敵なものができて、ちょっと怖かったです。
ありがとうございました。養生します。
No.2  楠山歳幸  評価:50点  ■2014-04-29 22:37  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。

 凄いです。
 少女の慟哭、お互いの心理、状況もありありと浮かんで、圧倒されました。
 思いつきで書いたというところがまた凄いです。
 大した感想が書けなくて申し訳ありません。
 
 ご自愛してください。
No.1  游月 昭  評価:50点  ■2014-04-29 01:02  ID:Lg/anJZZyX6
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こんばんは!

寝てください。ちゃんと良いこと書いてますから。

やられた!前半。
そのまま、悪態のまま突っ切っても
ちゃんと理解出来た。
>ねえ
の前まで、かなりこみ上げてくるものがありました。ちゃんと分かってる。

>ねえ
以降、二手に別れる分岐点ですね。
突っ切っても良し。反転しても良し。

個人的には、突っ切って欲しかった。
後半に「作者の姿」が見えてしまった。

前半のパンチ力には圧倒されます。
こんなの私には書けない。

もしかしたら、前半だけで完成しているかもしれない。


その場合、(私的な試み)
>今となっちゃ 知る術はない
を、次に書かれてある言葉に変えて締めくくる。

>ねぇ、漫画返してよ
と。

こっそり試してみてください。

嗚呼、みんな良い詩書くなあ〜。
追いかけるのが大変!
総レス数 7  合計 170

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