石が流れて木の葉が沈む

悪事千里を走る
4千キロメートルもの距離をどうやって走っていくのかしらね
まさか自分の足でってことはないわよね
駅伝みたいに人から人へと襷リレーしながら走っていくのかしら
あるいは車でってこともありえるわね
悪事だけに盗んだ車で とか
どっちにしろ悪事ってやつのスタミナを侮ってはいけないわね


祭りのあとの淋しさは なんていう
吉田拓郎の歌があったけれども
山車も神輿も通り過ぎていってしまった後の祭りを
いつまでも悔やんでいたってどうしようもないことじゃない
こんなときは出店でやきそばとかイカのポッポ焼きとか
チョコバナナとかわたあめなんかを買って
家でお酒でも飲むのが一番よ
ねえ そうは思わない?


青菜に塩かけたみたいにぐったりとうなだれているあなた
追い打ちをかけるように傷口に塩を擦り付ける人たち
いまはそっとしておいてあげてほしいのに
いまだけは責めないであげてほしいのに
いつかもう一度 自分で立ち上がるその時まで
ただ見守っててあげてほしいだけなのに


自分の頭の上の蝿も追えないなんてっていうけど
蝿を追いかけている人を一度でも見たことがあるかしら
ブンブンとうるさくて鬱陶しい蝿
申し訳ないけど 私なら追いかけるよりもむしろ
殺虫剤をまき散らし続けるでしょうね


牛を馬に乗り換えるように
いいとこまわりばかりしている
よく云えば世渡り上手
悪く云えばずるがしこい
そうして大概は人に嫌われることが少ない
私が見てきた限りで云えば
の話だけれど


私がしゃべり下手なのは
奥歯に物が挟まってなかなか取れないからです
というのは真っ赤な嘘です


鬼が笑うというけれど
鬼だって笑いたいときくらいあるでしょうに
いつも金棒もって厳つい顔ばかりしていたら
ストレスたまって鬱になっちゃうでしょ
それに鬼が念仏を唱えることがあったっていいじゃない
でも考えてみればかわいそうな生き物よね 鬼って
神妙な顔をしてみせれば 何か企んでるんじゃないかと疑われ
殊勝に振る舞えば 今度は何か裏があるんじゃないかと
あらぬ疑いをかけられる
そりゃ 念仏のひとつも唱えたくなるのも
ちょっとわかるような気がしてくるわ


あばたもえくぼ 恋は盲目
たとえ付き合いだした途端に仕事を辞めてしまっても
息が詰まるほど束縛するようになっても
顔が変形するほど 肋骨にヒビが入るほど暴力をふるわれても
それさえも愛情表現であると
そのすべてを愛することができれば
きっと彼も変わってくれるはずと 最初から信じて疑うことを知らない
人をキライになるより好きになる方がいいけど
はまりすぎて自力で抜け出せなくなってしまうこともあるから
これはなかなか 侮ってはいけない感情なのかもわかりません


あさりやはまぐりはいいわ
だっていつも2つピッタリくっついて離れない
両想いのふたりなんですもの
アタシなんてひとり岩場にしがみついて
打ち寄せる波を体に浴びながら
恋しいあのお方のことばかり考えているのよ
多分あの方は アタシがひそかに慕い続けていることさえ知らない
え? 気持ちを伝えたらどうかって?
嫌われたりしたらどうするのよ
いいのよ いいの
こうしてあの方を想いつづけているだけで
一生片恋だとしても 強がりとかじゃなく
ホントにアタシ それだけで幸福なの


会うは別れの始めというけれど
こんな日がきてしまうことは 最初からわかっていました
お互い意地の張り合いみたいなことはいい加減よしに致しましょう
どれだけ同じ時間を過ごしても
どれだけ言葉を尽くして語り合っても
結局解ったことと云えば
あなたは私を 私はあなたを
なにひとつ理解できなかったということだけでした
お別れいたしましょう
悲しいことなど何もありません
だってこれは必然的なことなのですから
あなたのメモリはすべて
今日を限りに削除いたします
これですべて終わりにできます


さようなら
さようなら


元気でねなんて云わないわ
陽炎
2014年04月19日(土) 08時14分18秒 公開
■この作品の著作権は陽炎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ことわざシリーズ第3弾です


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No.8  陽炎  評価:0点  ■2014-05-04 21:34  ID:u.WSYo.ISRY
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☆ゆうすけさんへ☆

こんばんは、ゆうすけさん
お久しぶりです
ゴールデンウィークも休みなしですか
お疲れ様です
そして、いつもありがとうございます

今回はことわざひとつひとつに
短いですが、物語性を強めに出して描いてみました

いろいろな視点や角度
すでに慣用句のように使われている言葉からだって
そこに己自身の解釈や意味を展開したり
思いを表現することはできるんですね

男性の方が後を引きずるものらしいですね
昔の彼女が、いまも自分を思ってくれてると
どこかで思いたがっているのでしょうか

幸福であってほしいと願うことができるゆうすけさんは
優しい人なんだと思います

青菜に塩をかけると
くたっとなってしまうのと同時に
色鮮やかな緑色にもなりますよね
あべこべのようだけれど
ぐったりうなだれているときというのは
本来の自分自身が出ている
あるいは、休息や助けが必要だということを
目の覚めるような青さの中に託しているのではないか
そんなふうにも、ふっと思いいたりました

ありがとうございました
No.7  ゆうすけ  評価:40点  ■2014-05-03 21:52  ID:7Ifq/xqLE0U
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今晩は、お久しぶりです。
ゴールデンウィーク関係なく仕事中、ようやく時間を見つけて文芸の世界をのぞきにきました。ああ、やっぱり詩はいいなあ。魂が自由に逍遥します。
青菜に塩……ぐったりくたびれた感じ、今の私にしっくりときそう。

ことわざにつっこみ、私も大好き。ひねくれ精神がなきゃ創作はできない……と思いますよ。ねじれた心がなきゃ変化球投げられないし、直球ばっかりじゃ疲れるし。
楠山さんがいい事言っていますね。男は未練がましいと、たしかにそう、割り切る女性と思い返す男、この差も詩にいかせそうですね。
元気でねなんて云わないわと言われたって、あいつが幸せでいてほしいと、そっと思っていますもん。内緒だけど。
陽炎さんの詩を読むと、いろんな言葉が心に浮かぶんですよね。
今思い悩んでいる事、ささやかな楽しみ、多忙な日々に沈んでしまう言葉たちを拾い上げて形にしていきたいものです。
No.6  陽炎  評価:0点  ■2014-04-25 16:54  ID:u.WSYo.ISRY
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☆游月昭さんへ☆

こんにちは
お読みいただき、ありがとうございます

何度も読んでいただいて恐縮ですが
この詩に関しては、1連1連に繋がりは持たせていないんです
ことわざにツッコミを入れる、という形が結構楽しくて
時々、思い立ったように描きたくなるシリーズでして

私の詩を読むのは、勇気がいりますか(^^;
いやはや、振り絞って読んでいただいて
ホント、感謝です

ありがとうございました


☆青ガラスさんへ☆

こんにちは
お久しぶりです
いつもありがとうございます

勝手にシリーズとか云っちゃってますが
いやはや、こういう大仰な言葉にツッコんでみたり
私語りで綴ってみたりするのって
いつもの詩作とはまた違った意味で楽しくてね
時々、描きたくなる衝動に駆られちゃうのですよ

本当は怖いグリム童話ねえ
原作は本当に、子供に読ませてはいけないんじゃないかってくらい
怖いらしいからね
性描写なんかもかなり生々しかったり

白雪姫の話にしても、毒りんごを食べて死んでしまった姫を
王子がキスで目覚めさせるっていうのは
あれはディズニーがそういうふうに書き換えたものだというしね

でもさ、怖いほうのが惹きつける魅力を感じてしまうよね
ホントはそんな話なの〜? みたいなね

ありがとうございました
No.5  青ガラス  評価:40点  ■2014-04-24 08:06  ID:6Sbbo4.76/Y
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陽炎さん、
おはようございます!
ま〜た、ことわざ相手に楽しんでいますね(笑)
展開に陽炎さんらしさが出ていて面白いですし
ペンが進むに連れ本気を注入して陽炎ワールド構築してますよね。

本当は怖いグリム童話、、とかいう本を見た時も
やっぱりね!
って妙にタイトルに納得しましたことを思い出しました。(*^^*)

シリーズ化したんですか!


No.4  游月 昭  評価:20点  ■2014-04-23 17:01  ID:eN7YfPmp65A
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こんにちは!

勇気を振り絞って読みました!

ラストでなんとなく繋がってはいるものの、繋がりが薄いかなあ、と感じました。遊びと受け止めてもいいんですが、それにしても。3〜4回読んだんですが、もっと読めばわかるのかなあ。すみません分からなくて。


マンガで、『コージ苑』(?)っていうのがありましたが・・・・・・
参考までに。
No.3  陽炎  評価:0点  ■2014-04-22 09:57  ID:u.WSYo.ISRY
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☆時雨ノ宮蜉蝣丸さんへ☆

こんにちは、お久しぶりです
いつもありがとうございます

そうですね、たしかに同じ言葉でも
使う状況だったり感情だったりで
随分と聴こえ方が違ってくるものですよね

言葉の反抗期
面白い言葉ですね

なんだかとっても詩的なレスをいただきました

ありがとうございました
心より感謝


☆楠山歳幸さんへ☆

いつもありがとうございます

ことわざってず〜っと昔の人がつくったものですよね
大体がなにかの比喩として表現されていて
それを一番最初に考えた人って多分詩人だったんだろうなあ
なんてことを思ったりするんです

でも、その言葉が生まれてから
時は大分経っているわけで

今回第3弾なんですけど
今回のは物語性を強めに出して描いてみました

「青菜」と「牛を馬」、共感してもらえてよかったです

「あばたもえくぼ」から確かにエンジンがかかったかもしれません
ここからは完全なる私語りになってますね(^^;

一連一連は独立した別べつの話なので
「幸せなの」はこれはこれでいいと思っているのですが
過去形のほうが、ラストに向けてすんなりつながったかも
というご意見は、今後の参考にさせていただきますね

ラストのフレーズは自分でも気に入っているので
良いと云ってもらえてよかったです

ありがとうございました

No.2  楠山歳幸  評価:30点  ■2014-04-20 12:24  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。

 ことわざに気持ちが入っていて面白かったです。
 陽炎さんを感じさせる文章が、そっと泣きながら皮肉ってますという感じでいいですね。良いなんて言うのは失礼かも知れませんが。語彙の乏しい奴で申し訳ありません。

「青菜」と「牛を馬」が特に共感してしまいました。

 あばたとえくぼからエンジンがかかったみたいな印象です。そして、ここではさりげなく凄まじいことを言っているように感じました。

 最後の言葉に結び付けるために「幸福なの」を「幸福だったの」のようにどこかが過去形のほうがいいかな、と思いました。
 男は未練がましいと聞いたことがありますが、そういう意味で、最後の言葉が女性らしくて良かったです。
No.1  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:30点  ■2014-04-20 01:18  ID:2yvcLrrqfRc
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こんばんは。お久しぶりな気がします。

言葉ってある種の媒体だと思うのです。意味はあっても、そこに込める感情は人それぞれ、銘々好き勝手にメモリー化してゆきます。そうしてできる言葉の塊が、記録だったり物語だったりするんだと思います。

作品という作者の子供。想い、育て、時に手に余り、暴走し、突き放したくもなる子供達は、皆言葉でできています。俺が生み出し殺したあの子達も、バラして言葉に還そうとすればできたのです。
この詩を読みながら、ふとそんなことを思いました。言葉の反抗期、的な。

ただの文字と化したあの子達を、もう一度拾うことができたならばなんて。
ありがとうございました。
総レス数 8  合計 160

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