BLACK COFFEE
 

ブラック珈琲の缶は黒くて格好いい
わざわざ「無糖」と言い張っているのだから
珈琲そのものなのだろう
と思えば
キレ味を追究しているらしい


 あなた最近ちょっと太ったんじゃない?
 そんな事ないだろう
 じゃあ、そのお腹の膨らみは?
  え?そう?
 ほら、プヨプヨ!
  こら!


プルトップを引き上げると
飲み口を切り裂く音までシャープに感じて
謳い文句を確認しながら
口元に運ぶしぐさに凝ってみる


  なるほど、キレ、か


脳裏に自分の腹のゆくえが映る


 まあ、あなたお腹が!
  なんだい、どうかしたか?
 だって、割れてるじゃない!
  そりゃあ男だからな
 素敵だわ!
  惚れなおしたかい?


明日から毎朝歩こう


 明日は雨らしいわよ
  え?そうなの?
 雷注意報も出てるわよ 
  マジ?


男は一度決めたことを簡単には諦めない
ブラックを飲み終え、缶をテーブルに叩く
軽やかにひびく未来が心地よい



翌朝、大雨にもかかわらず早起きをする
駅に着くと階段が私を見てほくそ笑んでいる
速足で上がりきると
はっ、と忘れ物に気づいたふりをして
向きなおり、駆け降りる
向かいの階段も速足で上がりきり
また忘れ物に気づいたふりをする

同じことを幾度か繰り返し
張り切った太ももをしっかり上げながら電車に乗った

さて、と腹をさすり悦に入る


 課長って脱ぐと凄いんですね!
  そんなことはないよ


いやらしい妄想に顔色を気にしながら
つり革を握りしめ腹に力を入れた


駅に着いても雨は止む気配がない
たくさんの傘とすれ違う中で
ひとりの男の腹に目がとまる 


(勝った!君もたくさん歩いた方がいいよ)


明日は会社の階段で忘れ物をしようと心に決め
自動販売機のブラック珈琲のボタンを押す
雨がこうもり傘を叩く向こうで雷鳴が轟き
ブラック珈琲が顔を見せる
冷たい缶を取りだし


  負けない!


と呟き、雨を弾きながら
無口な朝を颯爽と歩きはじめた



 
游月 昭
2014年02月06日(木) 22時18分22秒 公開
■この作品の著作権は游月 昭さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
このところ詩が書けないと言った若い友人に、目の前に在るものに思いを込めてみたらいいよ、と即興で綴ってみたものです。
『BLEND COFFEE』に続く珈琲詩第二弾!!
軽く読み流してやってください。

※ちなみに私の腹は出ていません!!

こうなると『MILK COFFEE』も書かなきゃなぁ。

この作品の感想をお寄せください。
No.8  游月 昭  評価:0点  ■2014-02-11 20:53  ID:STGQyRbvtcY
PASS 編集 削除
石井さん、ご感想ありがとうございます。

注意書に
※お好みでシロップやミルクをお入れ下さい。
とでも書いておけばよかったなぁ、なんて思います。

とにかく足りません。

またのご来店をお待ち申し上げております。
No.7  石井大心  評価:20点  ■2014-02-11 17:44  ID:Lf8Xjdi/zBs
PASS 編集 削除
とても面白いです。少し詩的な表現があると最高です。応援しています。
No.6  游月 昭  評価:0点  ■2014-02-10 00:08  ID:qVUr7kcrwv.
PASS 編集 削除
青ガラスさん、ご感想ありがとうございます。

匂い立つイメージは、最近の缶珈琲自体が旨くなっているからでしょう。

上質の珈琲をのみながら読んでも満足出来る詩を書くように努力していきたいと思います。
No.5  游月 昭  評価:0点  ■2014-02-09 23:59  ID:HchH4ncRDDY
PASS 編集 削除
菊池さん、ご感想ありがとうございます。
コメントへの誤解は、ちょっと激しい文面からのものでした。お応えいただき感謝いたします。
さて、「期待を込めて」頂いているということですが、次回は一応のレベルには達していると思いますのでご安心下さい!
私は最近は生死についての詩ばかり書いていましたが、数ヵ月まえに父が亡くなり、ふっ切れて、これがどういう訳か、恋愛や愛に関する詩ばかり書いております。それも、音楽で言えば短調の詩ばかりで気が滅入るかもしれませんが、次回からもよろしく。
No.4  游月 昭  評価:0点  ■2014-02-09 23:45  ID:m.6gUmQkDJ2
PASS 編集 削除
楠山さん、ご感想ありがとうございます。

だらだら書きすぎたようです。
実は友人だけでなく、私も、仕事で徹夜など重なり、なんとなく集中力に欠けていたのか、5作ほど没になり、そんなときは、「駄文でもなんでも毎日書くこと。それが物書きの条件!」という、師匠的存在の言葉の喝!で書いたものですが、コミカルにしても「薄味」過ぎますね。投稿した直後からたくさん詩が書けたので、次回は、とりあえずは元のレベルに戻ると思います。またまた頑張ります。
No.3  青ガラス  評価:40点  ■2014-02-08 08:09  ID:6Sbbo4.76/Y
PASS 編集 削除
おはようございます

プルトップを上げた音、わたしもキレを感じてしまいました。
切り裂く音がこれからはよりシャープな音に聞こえてきそうです。

なぜか、香道の香りを聞く、香りを問い答えを導き出すというイメージが
浮かんで
あるいは、香水のトップノートからラストノートまで
というような、なぜ香りにつながるか自分でもわからないのですが
もしかして、腹筋割れからムスキーな香りに繋がったのかもです(笑)

通勤の無口な朝、無表情の朝に表情が現れて
コミカルに味合わせていただきました。
No.2  菊池清美  評価:30点  ■2014-02-08 05:10  ID:/dxzQ0Wmf36
PASS 編集 削除
 ブレンドコーヒーに比べて惚れ込みが少ないでしょうか、言い回しは流石ですが二番煎じ感は拭えないですね。
好みの問題ですがテクは重視していません、題材はヤッパリ心動かされたものかと思います。

失礼なコメントを書くならスルーするのが礼儀かも知れませんが、次作への期待を込めて敢えて書かせていただきます。  
  
No.1  楠山歳幸  評価:30点  ■2014-02-07 20:08  ID:3.rK8dssdKA
PASS 編集 削除
 読ませていただきました。
 少しあれ?となり、メッセージを見て納得しました。
 わたしの游月さんの勝手なイメージ(の一つ)「俺はこれだからあれなんだ!」なのですが、ラストで、良い意味で游月さんだ、と思いました。
 今作は軽い感じ(失礼)に味がでてますね。しかし、尺の長さと比べると少し軽すぎるかなあ、と思いました。
「なるほど、キレ、か」から「軽やかにひびく未来が心地よい」の間、
「さて、と腹をさすり悦に入る」から「勝った!君もたくさん歩いた方がいいよ」の間、必要かな、必要としてまとまるような気がします。素人判断です軽く聞き流してやってください。

 
 ちなみに、わたしがお世話になる前のTC、詩は読んでいないので知らないのですが、小説のほうは「仲間にゃ容赦しねえ!!」「言うことはわかるけど俺(わたし)はこれを書く!!」みたいな風潮があったようです。是非はわかりませんが……。
 余談でした。失礼しました。


総レス数 8  合計 120

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除