或る夜、羽虫の月。
 今夜

 昼を忘れたような、
 鬱々とした、雨の翌日

 敷かれた布団の隙間から
 冷えた夜風が舞い込んで
 薄い寝間着の襟に触れる

 蒼くくすんだ空に
 金色の満月が
 嘲笑うように光を振り撒いて
 山影を色濃く
 草木を淡く

 それは縁にも伸びて
 凛と
 美し
 僕を射る

 君は静かに
 傍ら 寄り添い
 貴方は優しいと
 耳元 囁く

 虫の音が 満ちて
 月に共鳴し
 光を吟う

 あそこに咲いていた
 夕顔は枯れたのか
 訊いたら君は
 黙り 笑んだ

 露が月を映す

 少し冷えて 咳が出た
 君は驚いて
 小鹿の如く慌て
 何か暖かい掛け物でも
 取りに行こうとして
 僕はそれを
 腕を掴んで止めた

 何故 と
 怯えた瞳

 君の華奢な腕を掴む
 僕の痩せ細った腕を見て
 君は 小さく息をついた

 もう無意味なんだと
 何度言っても
 聞かない君

 せめて今夜は縁で
 月を見たいと我が儘を
 言った

 僕は

 腕を掴んだまま
 君を引き寄せて

 長い睫毛の潤んだ瞳に
 そっと 接吻した

 君は


 虫の音響く
 夜の庭 月明かり
 貴方は優しい
 でも
 こんなにも
 残酷
 と
 泣いて
 笑った

 金の月と
 蒼い空と
 黒い山影
 宵の庭
 君の笑顔

 閉じる瞼に
 光が零れ
 微かな息に
 風が吹く

 小さな羽虫が一匹
 唇に止まって
 飛んで往った

 君の袖を
 僕の汚い血で
 染めなくてよくなると
 そう思うと ずいぶん
 気が楽になるのです

 言わず 言えず

 月は照らす
 くすんだ空に

 星 一粒

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2013年09月29日(日) 02時01分03秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
十五夜に思いを馳せて。

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No.2  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:--点  ■2013-09-29 10:03  ID:c6myLs4LTaA
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SHIRIAI 様

コメント感謝いたします。
深夜にふと思い付きで書いたので、あちこちあやしいのはそのせいかと……。この前の十五夜がモデルです。
コメントを参考に、もっといい詩が書けるよう、精進していきます。
ありがとうございました。
No.1  SHIRIAI  評価:40点  ■2013-09-29 04:14  ID:FBi49ZD.T0o
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こんばんは。

虫の音を背景にして美しい光が差す様を静かに歌う感じ、雰囲気がいいと思いました。
最初の方の流れは特に良かった。
文体が変わる辺りから少しずつ文があやしくなっています。

> 月に共鳴し
ぶち壊し、に感じました。

> 訊いたら君は
> 黙り 笑んだ
おやおや。

しだいに現在形と過去形が入り交じり、
ああ、ここ、現在形ならいいのにというのがいくつもありました。

おやおやのところは、たとえば、
>>君に訊くと(訊けば)
>>黙り 笑む
なんかでいくとイメージを維持出来るかなと思いました。

月があざ笑ったり、月夜の景色の表現を見て、自分が投稿するのを忘れてることに気づきました。
なにはともあれ、雰囲気に酔いました。
ありがとうございました。

このあと、投稿しようかなっと
総レス数 2  合計 40

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