19歳のおこさま
 






生まれてきてくれてありがとうと
そんな馬鹿げた台詞を待ちながら
その日はおつきさまと逢いました。



 おひさまは、ただ、ただ、しらんぷり。



あなたを知らないまま
あたたかい海で浮かんでいられたら
雪の白さなど知らずにいれたのに。



 わたくしは、ぷか、ぷか、ひとりぼっち。




    あなたがわたくしに教えてくれたのは
    いつだって真上を見上げることでした。
    だいきらいなさんすうばかり詰め込んで
    おおきくなったおつむを支えるには
    放ったらかしにされたこころとからだでは
    どうやらそろそろ限界が来たようです。


    「はやく、はやく大人になりなさい」と急かされ
    幼い頃ににこころの時計の針を弄られたせいで
    昔食べさせてもらえなかったおこさまランチを
    情けないことにレストランに行く度
    今でも指をくわえて眺めています。


    あなたから受け継いだ爪を噛む癖もまだ治りません。
    「お揃いねわたしたち」なんて笑ってもいいですか。
    こんなくだらない繋がりに安心感を覚えるほど
    愛に飢えていたなんて。飢えていたなんて。





生まれてきてくれてありがとうと
昔貰ったわたくしの字によく似た手紙は
もう何年も前に息をするのを止めました。



 やぎさんが、むしゃ、むしゃ、たべちゃった。



雪の白さを知らないまま
あの寒空のなか外に投げ出されなければ
きっとなにもかもいとおしく思えたのに。



 わたくしは、ほろ、ほろ、泣いたっけね。



欲しいのは、ひのまるの旗。
そんな十九のわたくしを、ちぎれるくらい愛してほしい。






 
詩葵
2013年01月27日(日) 22時00分23秒 公開
■この作品の著作権は詩葵さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 
年相応でいることが、心に負担をかけないためには必要で。
小学生の頃から大人として扱われた私は、こころが不眠症になってしまいました。

来年の誕生日は、泣かずに愚痴のような詩を書かずにいられますように。
 

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No.2  詩葵  評価:0点  ■2013-02-11 20:41  ID:L6TukelU0BA
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笹百合さん、こんばんは。はじめまして。
なんだか嬉しいお言葉です。まだこころが綺麗だといいなぁ。
うつくしいと思えるあなたのこころがうつくしい、なんて有名な言葉を思いだしました。
この年になり、欲しいものが手に入らないこの環境も楽しめている気もします。
うつくしいままでいられるよう、手だけはボロボロになるまで伸ばそうと思います。
読んでくださってありがとうございました。
 
No.1  笹百合  評価:40点  ■2013-02-09 19:27  ID:gc6YYKZMLsk
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 うつくしいこころを持っている方ね。
 遠く、近く、幻のように思えるかもしれないけれど。本当に欲しいものを見失わなければ、いずれきっとつかまえられるわ。
総レス数 2  合計 40

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