パンドラの匣

僕はどうして生まれたのでしょうか
僕はどうして生きているのでしょうか
僕がいることで 一体誰が喜んでいるのでしょうか
僕が生きていることで 一体誰を幸福にできるのでしょうか


僕が傷つけてしまったあの人々は
今頃どうしているでしょうか
あの時のあの娘の とても淋しそうな顔を
今でも忘れることができずにいます
それなのに それなのに僕は 
僕から離れていったあの娘を
心のどこかで憎んだりもしていました
あの娘は何にも悪くなんかなかったのに
全部僕がいけなかったのに
僕はとっても弱くてずるくて
そうしてとっても卑怯者だったから
あの娘は今頃 幸福になっているでしょうか
笑って暮らしているでしょうか
こんなことを云っても偽善でしかないことくらい
解りすぎるくらいよく解っています
だけど それでも心にひっかかってとれないのは
あの時ごめんなさいって
ちゃんとちゃんと 
素直にあの娘に伝えることができなかったから


僕を好きになってくれた貴方に尋ねます
僕は貴方を傷つけてはいないでしょうか
貴方を裏切ってはいないでしょうか
貴方の苦しみを解っているでしょうか
解ったつもりになっていい気になって
本当は何ひとつ解っていないのでしょうか
想いは巡り巡って自分に帰ってくると どこかで聞いたことがあるけれど
貴方が僕を傷つけるとき
それは僕が傷つけた その代償なのでしょうか
それでも そうであったとしても
こんな僕を好きになってくれた貴方に
必要としてくれた貴方に
“ありがとう”という言葉を
照れずに言うことができるでしょうか


生きていく確かな理由がどこにあるのでしょうか
夢を持って 希望を忘れず
人を恨まず憎まず 人を信じて 人を愛して
そうしていれば 未来は輝きに満ちていますか
夢なんてなくても生きていける
パンドラの匣の隅っこに残った
ひとかけらの希望
きっと僕らが生まれた瞬間に
そのパンドラの匣の蓋は開いてしまったのですね
だからこんなに苦しくて
死にたくなるくらい苦しくて
それでも手を伸ばして 手を伸ばして
やっと見つけたひとかけらは
いとも容易く壊れてしまって
あれもダメ これもダメ
まだ足りない まだ足りない
確かなものに触れたくて
確かなものを手に入れたくて
目の色変えて探している
それこそがつまり 
生きていく確かな理由
ひとかけらの希望というやつなのでしょう


戦い続けるとは どういうことでしょう
一体何をどれだけ持っていたら勝ったことになるのでしょうか
お金があることですか 出世することですか 
友達の数ですか ずる賢く生きることですか
傷ついた分だけやさしくなれるなんて
そんなもんは嘘っぱちであることを
とうに僕は知ってしまいました
踏みつけられた空き缶が 風に吹かれて転がっています
命は等しく尊いと
今日もどこかで誰かが 無残に殺されてしまったと
相も変わらず ニュースは伝えています
僕らに勝手に勝敗を決めつけて 嘲笑っている奴等は
僕らの一番近くで 親切ぶった顔している
きっと間違いなく そいつらに違いなのです


傷つけられても傷つけたらダメなのよと
そう云ったあなたが一番ひとを傷つけてるじゃないですか
泣いたら負けですか
立ち止まったらそこでお終いですか
淋しいときは淋しいって
痛いときには痛いって云ったら
弱みになるのですか
つけこまれるからやめたほうが身のためですか
何も云わず我慢して 笑ってやり過ごしていればいいのですか
我慢していればそのうちいいことがあるって
そのうちっていつですか
見たくないものは見ないようにして
聞きたくないことは聞かないようにして
そうやって生きていたら このザマですよ
僕はもう 曖昧にごまかして生きることに
ほとほと疲れてしまいました
生まれてきたことをもう 
なかったことになんかできないのだから
もう逃げたくないのです
うやむやにしたまま モヤモヤした気持ちを
心の中にとどめておきたくないのです
僕が僕であったからこそのこの人生
おだやかだった日はあまりなかったけれど
激しい雨に打たれて 凍えて何度も風邪をひいたけど
失ったものの数ばかり数えて
壊してしまったものの数ばかり数えて
いっつもいっつも
なんで自分ばっかり なんで自分ばっかりこんな目に
こんな思いするくらいならもういっそ
痛みも苦しみも喜びさえも 何も感じなくなってしまえばいいと
眠れない夜に何度もそう願ったりもしたけれど
それでも それでも
僕は僕でしかないから
他の何にも変えようがない
この僕だから


大嫌いだけど見捨てることなんて
できようはずがありません
重すぎる荷物だけれど
置いて逃げられるはずもありません


僕はもう 僕を引き受けると決めました
誰に見捨てられようと
誰に置いてきぼりにされようと


僕は僕の手をとって
一緒に歩んでいくつもりです


少しばかり手のかかる僕ではあるけれど
陽炎
2013年04月17日(水) 13時19分17秒 公開
■この作品の著作権は陽炎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
生きるって、生きるって果てしない


☆少しだけ修正しました

この作品の感想をお寄せください。
No.11  陽炎  評価:--点  ■2013-05-31 01:46  ID:te6yfYFg2XA
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☆笹百合さんへ☆

返信が大分遅くなってしまい、もうしわけありません
読んでいただいてありがとうございます

>絶望の上辺をなぞっている
>今心にないものを書いている

思ってもいないことは描けない性質なのですが
そういうふうに受け取られてしまったということは
やはり私の描き方が甘かったのだと思います

貴重なご意見、ありがとうございました


☆楠山歳幸さんへ☆

おひさしぶりです、楠山さん
いつもありがとうございます

いろいろ褒めていただいて
なんだかとても照れくさいですが
素直に喜んでおります

そうですね
いろんな作風で描けるようになりたいなあとは
思っているのですが
根っこが暗いので
どうしてもそっちに行ってしまいがちです(汗)

いつか明るくなるような詩も描いてみたいと思います
ありがとうございました
No.10  楠山歳幸  評価:40点  ■2013-05-28 22:34  ID:3.rK8dssdKA
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 お久しぶりです。読ませていただきました。
 ネガティブなところが多いとはいえ、やはり陽炎さんの文章は良いです。リズム感というか、計算(と言うのも変かもですが)された秩序というか、アリアのような感じとか、とても引き込まれます。
 もしかしたら、無神経かもしれませんが(汗)、陽炎さんのポジティブな詩も読みたいと思ってしまいます。
 失礼しました。
No.9  笹百合  評価:30点  ■2013-05-06 12:57  ID:S6SCLCl937.
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 陽炎さんの詩は以前から目を通しています、が……この詩は絶望の上辺をなぞっているような印象です。最後だけはホンモノで、後は今心にないものを書いているのだろうな、と。創作物としてはそれでもいいのかもしれませんが、禍の、絶望の震央を避けて得た希望は脆いような気がしてなりません。
 あなたに幸せが訪れますように。 
No.8  卯月 燐太郎  評価:0点  ■2013-05-06 11:29  ID:dEezOAm9gyQ
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意味、取り違えていませんよ。


私があなたの作品を読んでの感想は下記までです。
「ギリシャ神話」うんぬんについては、資料として添付しただけです。

御作で「ギリシャ神話」が本題として書いてあると解釈するほど、低レベルの読解力ではありません。
また、そんな読解力では、このサイトに投稿した原稿用紙30枚以上の小説などは書けません。
ミステリー、現代、ファンタジーといろいろ投稿しているので小説を読むなり、感想、批評等を読むなりしてください。
ミステリーと現代は、新しい物から、感想、批評もかなり書いています。

●ちなみにあなたの作品先日読んだのはわかりやすくて、よかったです。
タイトルを覚えていないので、書けないのが残念です。

――――――――――――――――――――――

「パンドラの匣」読みました。

読みましたが、いろいろと書きすぎているためか、状況を把握しにくいですね。
一つに絞って書いたほうが読み手に優しいです。

または一つ一つにサブ・タイトルか目次のようなものをつけると、わかりよくなると思います。

御作は主人公がいて、彼が「パンドラの匣」について、意見を述べています。
要するに、他人事のように放たれた不幸や匣の片隅に残った希望の話をしている。
だから読んでいて、面白味に欠けるのだと思います。

テレビのコメンテーターが世の中に起こっていることについて、解説しているような感じでした。

―――――――――――――――――――――――
点数について40点にしましたが、これは陽炎様の描こうとした世界(内容)が40点という意味です。
描こうとした内容が、伝わりにくい文章なので30点でも不思議ではありません。
――――――――――――――――――――――――

>>なお、これ以上の再訪はしません。
次回は新作に感想を書くことにします、それでは失礼します。<<
No.7  陽炎  評価:--点  ■2013-05-06 09:07  ID:te6yfYFg2XA
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☆卯月 燐太郎さんへ☆

お読みいただき、ありがとうございます

まずは感想をいただいたことに深く感謝いたします

あまり、自分の作品を解説したくはありませんが
あなたはきっと、この詩のタイトル「パンドラの匣」から
ギリシア神話について言及されたのだと思いますが
私は一切、ゼウスやパンドラやそういった背景を
この詩にこめたわけではありませんし

ここに書いたことはすべて私事です

「テレビのコメンテーターが世の中を解説しているように」
感じられてしまったのでしたら
それは私の表現力不足のせいでしょう

ただ、あなたがどれほど詩をご存知なのかは知りませんが、
ひとつの詩にサブタイトルや目次をつけたり
解説を入れたりというのは、無粋以外のなにものでもありません

あなたがこの詩をどのように読んだか
それはあなたの自由です
そこを責めるつもりも正すつもりも毛頭ありません

ただ、まったく意味を取り違えて読まれてしまっていたので、
そんなことは一切書いていないことだけ
ここに記させていただきました

貴重なご意見、ありがとうございました
No.6  卯月 燐太郎  評価:40点  ■2013-05-05 23:46  ID:dEezOAm9gyQ
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「パンドラの匣」読みました。

読みましたが、いろいろと書きすぎているためか、状況を把握しにくいですね。
一つに絞って書いたほうが読み手に優しいです。

または一つ一つにサブ・タイトルか目次のようなものをつけると、わかりよくなると思います。

御作は主人公がいて、彼が「パンドラの匣」について、意見を述べています。
要するに、他人事のように放たれた不幸や匣の片隅に残った希望の話をしている。
だから読んでいて、面白味に欠けるのだと思います。

テレビのコメンテーターが世の中に起こっていることについて、解説しているような感じでした。

―――――――――――――――――――――――

ちなみに下記だけでなくて「ウィキペディア」で「パンドラの匣(はこ)」に関連したことを調べてみましたが、「ゼウス」はただの嫉妬深いオヤジであり、他の神々や人間はゼウスのために迷惑をこうむっているだけだと、感じました。
「ギリシャ神話」とはいえ、嫉妬深いオヤジのゼウスが神々の神であり、神と人間を支配していたからこそ、「パンドラの匣」なるものを人間界初の女性であるパンドラに「禍の箱」を持たして地上に送り込んだ。
またパンドラという女性を作った時に下記のように、「ヘルメース」という神が彼女に「犬のように恥知らずで狡猾な心を与えた」のが間違いの元と思いました。
「アプロディーテー」という神からは「男を苦悩させる魅力」をパンドラに持たせた。
これは、問題ないと思いますけれどね。


>プロメーテウスが天界から火を盗んで人類に与えた事に怒ったゼウスは、人類に災いをもたらすために「女性」というものを作るよう神々に命令したという。<

ヘーシオドス『仕事と日』(47-105)によればヘーパイストスは泥から彼女の形をつくり、神々はあらゆる贈り物(=パンドーラー)を与えた。アテーナーからは機織や女のすべき仕事の能力を、アプロディーテーからは男を苦悩させる魅力を、ヘルメースからは犬のように恥知らずで狡猾な心を与えられた。そして、神々は最後に彼女に決して開けてはいけないと言い含めて箱(壺ともいわれる 詳細は後述)を持たせ、エピメーテウスの元へ送り込んだ。

――――――――――――――――――――――――

大辞泉(国語辞書)ヤフーより

1.ゼウス【Zeus】

ギリシャ神話の最高神。天候・社会秩序をつかさどる。父神クロノスを王座から追放し、3代目の支配者となった。ローマ神話のユピテル(ジュピター)にあたる。


和英辞書の検索結果 - プログレッシブ和英中辞典

1.ゼウス

Zeus (ギ神); 神々と人間を支配する最高の神,ローマ神話ではユピテル,ジュピター

――――――――――――――――――――――――――

1.パンドラ

ギリシャ神話で、人類最初の女性。プロメテウスが天上の火を盗んで人間に与えたのを怒ったゼウスが復讐(ふくしゅう)のためにつくらせ、地上に送り出したという。

2.パンドラ‐の‐はこ【パンドラの箱】

ゼウスがパンドラに持たせた、あらゆる災いの詰まった箱(本来は壺)。彼女が地上に着いたとき好奇心から開けたところ、すべての災いが地上に飛び出したが、急いでふたをしたので希望だけが残ったという。

―――――――――――――――――――――――――

人間は21世紀のうちに心を持ったロボットを作るかもしれませんが、「ゼウス」のように、また「ヘルメース」のように、馬鹿なことはしないと思います。
ギリシア神話の神々は、まるで人間界のスキャンダラスな部分を中心にドラマを作ったような話でした。

――――――――――――――――――――――――
点数について40点にしましたが、これは陽炎様の描こうとした世界(内容)が40点という意味です。
描こうとした内容が、伝わりにくい文章なので30点でも不思議ではありません。
――――――――――――――――――――――――


それでは、頑張ってください。
No.5  陽炎  評価:--点  ■2013-04-30 17:42  ID:te6yfYFg2XA
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☆ゆうすけさんへ☆

いつもありがとうございます

ゴールデンウィークもお仕事なんですね
お疲れ様です

自分の弱い部分を好きだと云って貰えることって
なんていうか、それだけで
これまで生きてきてよかったって思ってもいいのかなって
そう思いますよね

確固たる何かがほしくて
安心できる何かがほしくて
不確かなものばかり掴んできたような気もするし
不確かだったからこそ、掴めたものも
中にはあったような
そんな気がしますね

「僕は僕の手をとって〜」
気に入っていただけてうれしいです

明日から5月ですね
新緑がまぶしい季節です

創作できる余裕ができましたら
また読ませてください

ありがとうございました
No.4  ゆうすけ  評価:40点  ■2013-04-28 16:17  ID:lvspLO.e7O6
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息付く間もなく駆け抜ける日々
ふと立ち止まり振り返る
ここに続かぬ行き止まりの道で立ち尽くし泣いている僕の顔が見えた
その目に映るあの人の顔
僕の弱いところを好きだと、初めて言ってくれたあの人
割れた魂のかけらを埋めてくれたあの人の顔


割れた愛の器には、愛を注ぎ続けなければいつだって飢えたまま
注いで増えて、与えて満ちる愛の器を探して


秘密日記に書きなぐっていた言葉と当時の感情が蘇り、つい書いてしまいました。
「僕は僕の手をとって
一緒に歩んでいくつもりです」私もここ大好き。
消え入りそうな気力を、自らの力で呼び起こしていたあの日を思い出します。

ゴールデンウィークですらも仕事続きで目が回りそうなんですけど、やっぱり創作は続けたい。こういう心を震わす言葉を書きたい。陽炎さんの詩を読むと多忙の嵐に吹き消されそうな創作の火が息を吹き返します。

No.3  陽炎  評価:--点  ■2013-04-27 08:59  ID:te6yfYFg2XA
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☆小夜さんへ☆

小夜さん、コメントどうもありがとう(=^・^=)

ラストまでスムーズに読んでもらえて
とお〜ってもうれしいです
締めも褒めてもらっちゃった(*^_^*)

力量不足だなんてそんなそんな
小夜さんの想像力の豊かさに比べたら
私なんて足元にも及びませんよ(^^)

小夜さんの作品、楽しみに待ってるんで
また新作が出来たら読ませてくださいね

ありがとうございました


☆史裕さんへ☆

お読みいただき、ありがとうございます

「僕は僕の手をとって」
ここのフレーズ、気に入って頂けてうれしいです

史裕さんから感想もらえるなんて
短くともなんとも、とってもうれしかったです

ありがとうございました
No.2  史裕  評価:40点  ■2013-04-26 21:20  ID:dJ/dE12Tc8A
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>僕は僕の手をとって

このフレーズが素敵だと思います

短い感想で申し訳ありません。
また読ませていただけたらと思います。
それでは失礼しました。
No.1  小夜  評価:40点  ■2013-04-26 11:37  ID:9zdOFIOafLE
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こんにちわ☆
遅ればせながら、コメントを。

こうゆう言い方をするのは失礼になっちゃうかもしれないけれど…。
す、凄いっ!!
長めの作品なのに、ラストまでスムーズに読む事が出来ました。
さすがです、陽炎さん!!
そしてラストの部分!
素敵ですぅ☆
こうゆう締め方、個人的にめちゃ好きですぅ♪
ご馳走様でしたぁ♪♪

で、でも…。
力量不足の私には、とてもじゃないけどこんなに素敵な作品は書けないですぅ(涙)
ぐすん。

では。では。
次回作も楽しみに待ってまぁす☆

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