理由 (長文)
生きる理由がないので
死ぬことにしたが
死ぬ理由がないので
ほっておくことにした

そうすると不思議なもので
生きてしまうんだな

自分の意思とは関係なく
体が勝手に生きている

だけれども

生きる理由がないので
飯は食わない

そうすると
ただ
ゆるやかに
飢餓が私を侵食して
時間という何か漠然としたものが
柔らかい凶器のように
僕を奪っていく

永遠とイコールの時間
そのあとすっかり僕はいなくなって
世界にポッカリに
僕の形の隙間ができた

生きていた証のように
真空の空間は
ただ
涙の色をしている


気が付いたら
立ち上がって
無色透明の水を
蛇口から飲んでいる

カルキとうすい鉄の味

僕の体を流れる液体も
これほど美しければ

そうおもうと
嗚咽した


そして矛盾を繰り返し

死ぬ理由もまたないのだと

病院で点滴を打たれる

その色も

また透明で

しかし多量の栄養が

あるという




意味のあるものでも透明でいられるのに


つぶやくは
濁った己が
意味がないのに

悲しいからで悲しいからです




でもまだいきる


死ぬ理由を見つけるまで



まだ
死ねない
史裕
2012年05月02日(水) 12時54分19秒 公開
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作者からのメッセージはありません。

この作品の感想をお寄せください。
No.3  ぢみへん  評価:30点  ■2012-05-21 14:24  ID:64MGDiR2nqY
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技巧云々の前に、所々に本当の叫びや虚しさが滲む言葉に息を飲みました。
本当に心に響く言葉なら、本来技巧とかは関係ないのかもしれません。
ただ一歩間違うと、ただの哲学披露に終わってしまうので、そこが難しいのでしょうね。

でもこの作品に関しては、もっと何か差し迫ったものを感じました。
No.2  史裕  評価:0点  ■2012-05-13 18:11  ID:33E/nA6Ip9Y
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ご感想、ご指摘ありがとうございます。
励みになります
No.1  陽炎  評価:30点  ■2012-05-02 21:42  ID:o8nsDp1H04c
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それでいいじゃないでしょうか
死ぬ理由が特にないのであれば

理由がなく死んでしまう人も
中にはあると思いますが

作者さんは
明確な何かを求めていらっしゃるようだし

それはもしかしたら
死ぬ理由であると同時に
生きてきた理由でもあるのかも

「僕の体を流れる液体も
これほど美しければ」

↑、ここの表現、ドキッとさせられました

悲しいほどに美しさを求めているから
生きて穢れる自分自身に失望してしまうのかもしれません

最後に気になった点をひとつ
7連目の
>世界にポッカリに
       ↑ここ
ポッカリと
のがしっくりくるんではないかなあと

できれば、死ぬ理由なんて見つかってほしくないです
また書きに来てください

では
総レス数 3  合計 60

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