捨て猫と人

とある公園でうずくまる捨て猫を
見て見ぬフリする人がいる
餌をあげてる人もいる
連れて帰る人もいる

僕は捨て猫とじゃれあった
可愛い子猫の捨て猫だった
でも拾うコトは出来なかった
餌を与えただけだった

後から悲しくなってきて
とある公園へ探しにいった
けれども捨て猫はいなかった
あったのはカラのダンボール
そして家出をした反抗期の中坊

恐る恐る聞いてみた
子猫を見ませんでしたかと
敬語をつかった電話声
ふるえる手をおさえてるうちに
煙草を捨てたひとりの中坊から
さぁ?という低い声が返ってきた
僕はおじぎをひとつして家へ向かった

コンビニで買ってきた猫缶と水が
鞄の中で揺れている
連れて帰ればよかったのに
助けてあげればよかったのに
後悔しか心になくて
晩御飯をのどがとおせんぼしてた

ちょっとでも役に立ちたくて
あの日撮った捨て猫の写真を
画用紙に拡大コピーしてはった
その横にかいた場所と連絡先
何枚も何枚も街中にはった画用紙
けっきょく季節をいくつ重ねても
連絡は来なかった

今でもまだ連絡を待っている
あのダンボールももうないのに
猫缶と水は冷蔵庫の中
電話をいつでも握ってた
あの日ふるえてた手
今だ記憶に残る中坊と捨て猫
いつかまた会いたい


とある場所でうずくまる捨て猫を
見て見ぬフリをする人がいます
餌をあげてる人もいます
連れて帰る人もいます

さてあなたは
どの人ですか




田中未来
2011年02月18日(金) 22時00分44秒 公開
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作者からのメッセージはありません。

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No.5  音羽  評価:50点  ■2013-12-19 03:58  ID:rMAQZW5kXMI
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私は真っ先に連れて帰るタイプの人間です。
子供の頃は捨て犬や捨て猫と遊ぶだけで連れて帰れなかったのですが、保健所の現状を知ってからは連れて帰ってしまいます。
捨てるぐらいなら飼わなければいいのにと思ってしまいます。
猫を見殺しにしてしまったと思う僕の後悔が強く印象に残る詩でした。
No.4  田中未来  評価:--点  ■2011-02-23 17:30  ID:6G1KAS8HmaE
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言葉に惹かれてさんへ

はじめまして。田中未来です。
良い内容ですね!共感できました。
僕も一度猫を失ったし、捨て猫も母に飼うのを反対され見殺しになってしまったのです。だからもう捨て猫は見たくないから、ダンボールの中が猫じゃないコトにほっとします。
No.3  言葉に惹かれて  評価:40点  ■2011-02-23 14:18  ID:DtFcOSyTsW2
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はじめまして。

拝読しました。

ついこの前読了したばかりの、内田百閧ニいう人が書いた『ノラや』という
本を思い出しました。

著者はもとは野良猫だった「ノラ」を育てていたのですが、ある日、そのノラが居なくなり、一年しても帰って来ない。
ノラが帰ってこないまま、こんどは「クルツ」という、ノラによく似た猫を育てる。しかしクルツは病死。
最後は、風で扉が軋む音が「子猫ではない、風の音だつた事を確かめてから、ほつとする」 と、そこで筆が途絶えています。
八年経っても帰ってこないノラを、筆者はずっと待ち続け……。

動物が捨てられる。そんな現実がなくなる日は、来るのでしょうか。
自分がこのような状況に置かれたなら、どうするか。
そんな、勇気が試されるような、はっとさせられた作品でした。
No.2  田中未来  評価:--点  ■2011-02-21 17:57  ID:6G1KAS8HmaE
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楠山歳幸さんへ

感想ありがとうございます。
僕の実話をちょっとかえた詩でした。
またよかったらお会いしましょう。
No.1  楠山歳幸  評価:30点  ■2011-02-19 22:05  ID:sTN9Yl0gdCk
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拝読しました。

 僕は素人なので、理論的なことはわからなくて恐縮ですが、
 不本意にもはみ出してしまった命の、寂しい現実を感じました。
 猫はどこか人を訪ねて消えたとしても、もしかしたら誰かに拾われたとしても、冷蔵庫に残った猫缶がイメージに残る詩でした。

 拙い感想、失礼しました。


 
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