アヤメ

僕が君に伝えたメッセージ
君は何度も破り捨てた
グラウンドに向かってひらひらと
それは舞い散る花のように
あの手から放り投げた
漆黒の手すりに立って僕は見ていた
少し風が吹けばもう死ぬのに
なにも怖くなかった

ゆらゆらと揺れる僕の髪に
風が押し寄せてきた
さよなら、さよならとでも言うかのように
どうせ積もらない雪が降った
真っ白なその雪が
赤と青が混ざっている僕の笑顔を
暖かく包んで浄化した

後ろで誰かの声がした
やめろ、やめろと駆けてきた
その人よりも速く駆け抜ける風
もう間に合うはずもない
例え灯を取り戻したとしても
現在の僕の息は乱れてばかり
苦しさが繰り返すだけ
無駄な事

昔は苦しくなかった
みんながキレイだキレイだって
四角い光で僕を映した
ただ咲いていただけなのに
何もしてないのに
ありがとう、ありがとうと
足跡を残して行ったみんな

風が背中をなでた
僕にはそれがもういいよ、と聴こえた
今になって右腕に彫った
君の名前がうずいてた
風がほほに痛いくらいなでる
瞳を開ければメッセージ舞うグラウンド
左を向いたら鞄背負う君の横顔
この瞬間に鳥になれたらいいのに
そう思ったって
しょせんアヤメ
生まれ変わっても多分アヤメ
そういう運命なんだ


もうアヤメは咲く事はなかった
メッセージに包まれながら
枯れ散っていった腕は
紫色の笑顔さえ奪っていく
右を見ればグラウンドの花壇
左を見れば君の面影
前だけ見てればアヤメは咲き誇る









田中未来
2011年03月17日(木) 18時18分37秒 公開
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No.1  緋色彰弥  評価:40点  ■2011-04-12 11:02  ID:.BEHR6pPreU
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感想を書かせていただくのは初めてです。
以前私の詩に感想をいただいたのに、お返事できず申し訳ありませんでした。

この詩がアヤメの視点で書かれていることにはすぐに気づいたのに、一人の人間を描いているように感じました。
不思議な感覚ですね。
短い時を生きるのは、花にとっても哀しいことなのかもしれません。
アヤメは私の町のシンボルなのでよく写真などで見ますが、その花を題材にこのようなことばが生まれるとは思っていませんでした。
ありがとうございました。
総レス数 1  合計 40

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