小さな寓話


昔、ぼくは一人の少女に恋をした。
少女もまた、ぼくに好意を抱いていた。
だが、武装した兵士が少女を囲んでおり、
ぼくが近づこうとすると、
容赦なく槍で突き、剣で斬りつけた。
傷の痛みに耐えかねたぼくは、
すごすごと退散するしかなかった。

いつしかぼくも、兵士たちに囲まれていた。
しかし、彼らの視線は内側、
すなわちぼくの方に向けられており、
前進しようとするたびに、
武器で攻撃し、血を流させ、行く手を阻んだ。
ぼくは地面に倒れて動けなくなり、
遠くから、少女の泣く声だけが聞こえた。

ところが、一人の男が何の妨害もなく少女に近づき、
その手を取って、愛をささやいた。
少女は頬を赤く染め、目を輝かせ、
男と共にぼくの前から去っていった。
幸福の絶頂にいる少女にとって、
倒れたままのぼくは、もはや透明な空気でしかなかった。
FK
2018年01月02日(火) 16時59分29秒 公開
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No.2  FK  評価:--点  ■2018-01-02 22:23  ID:TdYDgxY0m8k
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Fufuさん、感想・批評、ありがとうございました。これはチェコの小説家カフカが残した『断片』に影響されて書いたものですが、自分の実体験も絡めてあります。
No.1  Fufu  評価:50点  ■2018-01-02 21:36  ID:hCo2XqQy4a.
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言葉にできないほど、共感できる詩です。
何かからの疎外感をテーマにしたものは、心にずしんときます。他の人の感受性の鈍さに傷つけられる人々、純真さから来る要領の悪さに苦しむ人々、私はそういう人たちが好きです。
総レス数 2  合計 50

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