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RSSフィード [92] 即興三語小説 ―ハロウィンの仮装はもう決めたか―
   
日時: 2012/10/28 22:43
名前: RYO ID:TEtZjALk

 あけていた窓から飛び込んできた風にはっとする。
 キンモクセイだ。甘い独特の香りだ。
 いつのまにかこんなにも季節が進んでいた。
 窓の外を見ると子猫がキンモクセイの樹の下で、気持ちよさそうにうたた寝をしていた。
 空は秋晴れ。雲がちぎれて遠く流れて、ふいに時間さえ止まってしまったように錯覚する。
 このままどこか遠くに旅立ちたい衝動に駆られてしまう。 
 この前休みを取って、旅行したのはいつだろう?
 五年は前だろうか?
 美紀がたまたま日本に帰ってきたときだった。誕生日だからと、温泉につれていった。美紀は「やっぱり、日本はいいわね」とつぶやいた。ゆっくり風呂につかる余裕もなかったのだろう。そう思えばもっといろいろなところにつれていったやればよかった。
 キンモクセイが香るたびに、この後悔を思い出す。忘れられない後悔は不幸なのか、ずっと覚えていることの引き換えに?
 美紀が逝ったのは、四年前の異国の地。戦場カメラマンをしていた彼女は必ずキンモクセイが咲く誕生日には帰国していた。M16A1の流れ弾を受けてあっけなく逝った。
 キンモクセイの下にいた子猫が立ち上がり、大きくあくびをする。
 目を閉じて大きく息を吐く。
 そろそろ休みをとってどこかにいくのも悪くはないか。秋空に雲のように、樹の赴くままに。
 キンモクセイの香は確かに秋を告げてくれた。
 
 

 そういえば即興で書いたものはまったく保存してないや
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「キンモクセイ」「子猫ちゃん」「M16A1」
▲縛り: なし
▲任意お題:なし

▲投稿締切:11/4(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ!
 それでは今週も、楽しい執筆ライフを!

メンテ

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キンモクセイの女 ( No.1 )
   
日時: 2012/11/04 13:36
名前: もげ ID:hDKiVATk

「まるでオモチャね」
 その女性は軽い身のこなしでロゼに迫ると、その手にあったM16A1をひっつかんで銃口を逸らさせた。ふわり、とキンモクセイの花の香りが漂う。戦場にはそぐわない、存在感を放つ香りだ。敵に私はここだと教えているようなものだ。だが、その傲慢さも彼女の並外れた能力ゆえだということは痛いほどわかる。
「声も出ないようね子猫ちゃん」
 女性の口許に浮かんだ妖艶な笑みに、かっとなって掴んだ手を振り払おうとするが、細身の体に反して力強いその手に軽々と押さえ込まれてしまう。
「まるでオモチャみたい。でもオモチャじゃないのよ」
 ふっと口許の笑みは消えて、掴んだ手に尋常ではない力がこめられる。彼女の目的を感じてとっさに抗うが、圧倒的な力の差にじりじりと銃口が自らの頭の方に向かっていく。汗が伝い、喉がひりつく。脳の血管が切れるかというほど力を込めるが、視界が黒く染まっていくだけで相手の力に勝ることはできなかった。ついに、ぴたりと銃口が頭についた。恐怖で瞳孔が開くのを感じる。
「う……あ……」
思わず漏れた獣のような声に、彼女は満足そうに笑った。
「怖い、でしょ?そう、死ぬのは怖いのよ」
 とっさに手を離しのけぞって逃げようとするが、その喉を力勝負に勝った手が一瞬で追いすがって掴んだ。ぎり、と音がするほど力を込められ、片手だというのに足が地を離れ始める。
 がしゃん、という音がして女性がM16A1を下に落としたことを知る。自由になったもう一方の手で彼女はロゼの腰からナイフを抜き取り、優雅な仕草でその切っ先を少女の頬に沿って走らせた。かすみゆく視界の中で鋭利な輝きが横切り、続いて灼熱が肌を焼く感触がする。
「たす……け……」
 声にならない声で懇願するが、女性はただ困ったように笑うだけだった。
「痛みを、恐怖を、もっと感じて、心に刻み付けなさい。人を殺すということはそういうことよ。決して人差し指を曲げるだけのことじゃないの」頬を伝った血液が口の中に入る。鉄の香りがする。「殺人を道具のせいにしては駄目よ。肌を切り裂いて内蔵を破壊するのはあなたの手よ」
 だからこの女性はナイフを使うのだ。ロゼは白みゆく意識の中でようやく理解した。彼女の纏うキンモクセイの香りは傲慢などではなく一種の警告なのだ。『私は殺したくないの。死にたくないなら逃げて』と。そしてナイフを使うのは決して殺戮を楽しみたいからではなく、相手の死をきちんと自らの責任下に置くためなのだと。
 そうしてついに意識はロゼの手から離れ、彼女は黄色い花の海に墜ちていった。

おわり
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なんだか状況がさっぱりわかりませんが。
1037文字。
執筆時間は通勤時に携帯にちょこちょこ打っているのでわかりません。
もげ


メンテ
思い出 ( No.2 )
   
日時: 2012/11/04 17:38
名前: マルメガネ ID:OM5pVV6E

 キンモクセイの香りが漂っている。
「秋深し、ってところですね」
 マスターが呟くように言った。
「ところで、マスター。その子猫ちゃんのキーホルダーはなんすか?」
 野暮な質問と思いつつ、マスターが握る焙煎室のカギについた古ぼけたキーホルダーについてコウが聞いた。
「ああ、これかね。これは遠い昔に同僚だった猫好きの女の子の形見さ」
 そう言ってマスターがため息をついた。
 あらゆる格闘技、護身術を身に着け、M16A1ですら扱えるマスターの素性はうかがい知れない。
「亡くなったんすか?」
「ええ、亡くなりました。銃器の暴発事故で」
 マスターが言う。
 店内は相変わらず陽気なジャズが流れている。
 コウはどんな女性だったのだろうかと、想像した。

メンテ
Re: 即興三語小説 ―ハロウィンの仮装はもう決めたか― ( No.3 )
   
日時: 2012/11/10 12:45
名前: もげ ID:lHffGvvw

>マルメガネさま
 マスターが素敵です。
 秋とおしゃれな喫茶店は合いますね~◎

メンテ

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