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RSSフィード [315] 即興三語小説 -「夏」「遠雷」「独占販売」
   
日時: 2016/07/03 22:05
名前: RYO ID:D5QUoNsw

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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「夏」「遠雷」「独占販売」

▲投稿締切:7/10(日)23:59まで 基本的に毎週日曜です。連休のときは連休の末日。投稿がない場合、延期することがあります。

▲文字数制限:6000字以内程度

▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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夏の風物詩の独占販売・IN宇宙ステーション ( No.1 )
   
日時: 2016/07/15 09:56
名前: ウィル ID:x3SlBHo2

 第72宇宙ステーション・シガラキ。
 地球人が宇宙に出て数万年経った。12年前にシングルナンバーの宇宙ステーションは全て廃棄され、ダブルナンバーの宇宙ステーションも半数以上が廃棄されている。
 72という二桁の数字は、もはや骨董品としての価値しかなく、そこに住むのはひどく苦痛だ。
 とはいえ、気温は常に10度から25度と快適な温度で天候の操作も自由とあって、遥か昔のご先祖様に比べたら快適な生活とは言えるのだろうが。
「遠雷が聞こえるな……もうすぐ夏か」
 夏といっても気温が25度を超えることはない。雷の音もただの効果音であり、実際に雷が落ちるということはない。そもそも、空の雲にしたってホログラムであり、実在する雲ではないのだ。
 私の呟きに、30年連れ添った妻は立体映像(もちろん触ることができる)の新聞紙を片手に言う。
「夏ね……またミニスカートを用意しないといけないわね」
「去年みたいにまた若者にナンパされに行くのか? 君が美人なのは認めるが、それを一年も自慢されるこちらとしてはたまったものはないよ」
 妻も私と同じで、もう160歳を超えているのだからそろそろ自重してほしい。すでに昆孫(孫の孫の孫)までいるというのに。
 人類の平均寿命が200年を超え、20歳から180歳までは見た目はそう変わらない。
 160歳以上の年の差婚などはよく耳にするが。
「それより、家計のほうは大丈夫なのか? あれも買わないといけないだろ?」
「そうね……今年もきつくなるわ……夏になると」
「そうだな。全く、困ったものだ。夏の唯一の楽しみを買うのに、こうもお金を払わないといけないとは……」
 私たち、宇宙民(宇宙に住む者のこと。星に住む人は大地民という)にとって、季節とは気分のメリハリをつけるとても大事なものだ。だが、その夏を満喫するためのある商品が、ひとつの企業が独占販売しているため、それの値段も跳ね上がった。
 全く、困ったものだ。
 だが、あれがなければ夏という気がしないのだから仕方がない。
 私は風鈴の音と遠くから聞こえる蝉の音のBGMを流してもらいながら、妻にそれを買ってきてもらうように頼んだ。

 その日の夜。私はベッドで寝ていた。
 とても寝苦しい夜だった。気温調整の装置は壊れていないはずなのにやけに汗が出てくる。なのに肌寒い。いや、寒すぎる。子供の頃、真冬に宇宙ステーションの気候安定装置サクラが壊れ、一カ月間外気温が8度にまで下がってしまった時、宇宙ステーションの全宇宙民が凍え死ぬのではないかと思ったことがあり、その時の記憶が蘇る。
 助けを呼ぼうかとしたが、声が出ない。体が動かない。
 閉じられた目蓋を開けるのが怖い……だが、私は意を決して目を開けた。
 すると、そこにいたのは血塗れの青白い肌の女性だった。
 私は無意識に叫んだ。だが、声が出ないのだから、その叫び声は音にはならない。
 女はふっと微笑むと突然私の体の上から消え去った。
 残ったのは、大量の汗でしめった布団カバーとパジャマだけだった。

 私は妻に昨晩起きた怪奇現象について語った。
 妻はトーストを食べながら私の話を黙って聞いてくれた。
「いや、独占販売だから技術の進歩はないだろうと思って舐めていたが、なかなかのものだったよ。君のところには何が来たんだい?」
「私のところは泣いている女の子だったわ。声をかけたら女の子が振り向いて、目も鼻も口もないのよ。最初はちょっとびっくりしたけど、でも茹で卵みたいで可愛くて、ちょっと残念だったわ」
「そうか、それは残念だったな。いやぁ、さすがは夏の名物、肝試しだ、寝覚めが爽やかだよ。やっぱり夏はビールと怪談だな」
 霊魂の実証実験のため、人の魂の原理が明らかになった。霊魂の存在が証明されたことにより、逆に怪談話は全て作り話だと証明されてしまったが、人はやはり怖いものを恐れる。
 そのため、今や心霊現象の類は全て機械で作り出す。
 それを独占販売しているのが、ホロホロ堂シリーズの「怪談の種シリーズ」だ。
 昨日の女性の幽霊も、怪談の種から生み出された立体映像である。
 そこそこの値段がするのに使い捨てという高価なものだ。
「日曜だからって朝からビールを飲むのはやめてくださいね……はい、麦茶」
 私の思惑を妻に潰され、仕方なく麦茶を飲むことに。
 そして、私は昨日妻が見ていた新聞の広告欄を見て訝しんだ。

『ホロホロ堂怪談シリーズ、怪談の種の一部に動作不良発覚』

 ……私は自室に戻り、怪談の種を見た。怪談の種が動いた形跡がなかった。
 そういえば、昨日私の上に乗っていた血まみれの女性、よく見ると妻に似ていたような気がするが……まさか……と思った瞬間、私は急に胸が苦しくなるのを感じた。

   ※※※

 夫が死んで一年。
 死因は未だに不明のまま。まぁ、呪い殺したなんて誰も信じないでしょうね。
 霊魂の実証実験が終わり、呪いや悪霊が実在すると知った政府はそれを慌てて隠蔽した。
 それはそうでしょう、そんなことが公に知られたら、宇宙中に呪いが溢れてしまうから。
 一部の研究者(私を含めて)の間では今でも様々な実験が秘密裏に続けられている。中には私みたいにそれを悪用する人もいるけれど、それも実験の有用なデータということで誰も咎めはしない。
 こうして、私は無事、前の夫と死別し、若い男と再婚することができたのだが。
「それにしても、君の持ってきた怪談の種、凄いね……まるで本物のようだよ」
 そう言う現在の夫の顔色はあまりよくない。
「そうでしょ? ちなみに、どんな幽霊が出てきたの?」
「男性の霊だったよ。『妻をよくも……』って呪いの怨嗟のような声で僕を睨んでね」
 私は怪談の種なんて買ってきていないことは、彼が死ぬまで黙っておくことにした。
 ちょうど新しい彼氏ができたことだし。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お久しぶりにこのノリで書いてみました。
プロット1分、執筆20分です。

メンテ
感想 ( No.2 )
   
日時: 2016/07/14 22:28
名前: 朝陽 ID:XuHWs4io

 拝読しました。
 SFと怪談という意外な取り合わせ、それもSFと見せ掛けてホラー、と見せ掛けてサスペンス……と見せ掛けてやっぱりホラー。最後の一文でぞわっとしました。
 三語の誓約の中、この長さのショートストーリーでどんでん返しとオチをきれいにつける手腕に脱帽です。


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