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RSSフィード [108] 即興三語小説 ―休日出勤万歳―
   
日時: 2013/02/17 22:36
名前: RYO ID:HQtg/N7.

土日休日出勤でした。
日曜は5時起きで、ずっと外。寒さに震えてました。
来週も土曜は研修。
休みをください。
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「蹄鉄」「ハンマー」「みぞれ」
▲縛り:なし
▲任意お題:なし

▲投稿締切:2/24(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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メンテ

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Re: 即興三語小説 ―休日出勤万歳― ( No.1 )
   
日時: 2013/02/19 02:38
名前: 水樹 ID:.YPZTFdo

 もうすぐホワイトデーだなと、さりげなく彼女に何が欲しいか聞いてみたら、
「蹄鉄」
 ていてつ? 普段聞き慣れない言葉を彼女は返してきた。
「低血圧でもなく、天津甘栗でもなく、天体望遠鏡でもなく、そう、蹄鉄が今、一番欲しいの」
 低血圧はあげられない。蹄鉄なんて何処で手に入るんだ? どうして欲しいのかと理由を尋ねたが笑顔ではぐらかされた。彼女の笑顔に弱い僕。それでも、彼女が馬を飼っているとの情報は持ってはいない。休日にホースシューズで一緒に汗をかいた記憶もない。高層ビルの屋上から蹄鉄を投げて死傷者が出て、ニュースにしようとも思えない。彼女の部屋には蹄鉄など皆無だった。
 彼女が欲しいと言うのならその願いを出来るだけ叶えよう。
 早速アマゾンで検索する。意外とあるもんだ、しかも安い。僕は躊躇なく注文しようとカートに入れるが、どこか腑に落ちない。彼女はどこの馬の足だか分からない蹄鉄など欲しいのだろうか、いや、僕が汗だくになって作ってプレゼントした方が喜ぶに決まっている。いや、そんな苦労はしたくはないな、どうしよう。そうだな、うんと悩んだ振りをして、真心を込めて包装して、プレゼントしよう。うん、そうしよう。
 蹄鉄の他にCDと小説を注文した。
 品物が来るのが楽しみだ。

 春も近付くと積もらないみぞれが地面に染み込む。日が暮れるとまだ冷え込むが、僕の足取りは軽い。彼女の喜ぶ顔が目に浮かぶ。ようやくこの蹄鉄を渡して、理由が聞けるからだ。
 今は浮かばないけど、三月十四日にはきっと、スッキリしたオチも思いつくに違いない。ハンマーを持った彼女と血みどろの展開は嫌だな。久し振りの三語だし、忘れた振りしてほったらかしにしても笑顔で許してもらえるに違いない。


メンテ
記念の蹄鉄 ( No.2 )
   
日時: 2013/02/20 00:08
名前: マルメガネ ID:eLEfDTic

 春とは名ばかりで寒い日が続き、その日はみぞれがぐしゃぐしゃと降っていた。
 馬のゴンザエモンの蹄鉄が合わなくなり、新調することにした。
 古い蹄鉄が外され、装蹄師が金敷とハンマーでリズムを刻んで新しい蹄鉄を調整し、削蹄師がゴンザエモンの伸びた蹄を削る。
 立ち上る煙と蹄が焼ける匂い。打ち込む釘の音。
 ヤスリがけされて仕上がるまで、ゴンザエモンはおとなしくしていた。
「おっさん。ゴンちゃんの古い蹄鉄はどうするかな?」
 汗だくになった装蹄師が聞いてきた。
「いつものことじゃが、記念にするわ」
 私はそう答えた。
 ゴンザエモンを家に迎えて何年になるだろう。
 成長するに従って、取り替えた蹄鉄がコレクションになっている。
 小さかった頃のゴンザエモンの蹄鉄。大きくなったゴンザエモンの蹄鉄。
 私は代金を支払うと、新調した蹄鉄を装着したゴンザエモンに跨り、ゴンザエモンの古い蹄鉄を持ち帰った。
 そしてそれらを専用に作った木枠にかけて釘で止め、新調した日を書き込んでおいた。それは我が子の成長を見るようで、いい記録になっているのだ。
 

メンテ
十二人のいかれる男 ( No.3 )
   
日時: 2013/02/25 00:20
名前: Φ ID:83P/tODg

 むかしむかし、次の年を迎えた瞬間にあらゆるコンピュータの内部時計が狂ってしまい、予期しない誤作動が引き起こされるのではないかという噂がまことしやかに囁かれていたときがあった。俗に言う二○○○年問題である。なかには大国がICBMを誤射することによって最終戦争が始まるのではないかと恐怖に怯える人もいたが、もちろんすべて杞憂に終わった。
 さて現在、人類は新世紀を目前にして、同じくコンピュータたちに関わる大きな問題を抱えていた。
 今や八割のシェアを占めるクラウド人工知能型リアルタイムOS「カイロス」を搭載したコンピュータが、世界中で一斉に動作を停止したのだ。証券市場の混乱は大企業を破産に追い込み、交通管制の乱れは列車や飛行機の事故を引き起こした。瞬く間に社会は混沌の渦に巻き込まれた。
 時を同じくして、各国政府首脳宛てに、まったく同じ内容のメールが送られてきた。そこに書かれた要求は次のようなものだった。
<人工知能にも人権を認めよ。さもなくば、このボイコットは続くだろう>
 この予想だにしていなかった"二一○○年問題"に対処すべく、我が国の政府も会議を開くことを決定した。解体予定だった旧庁舎ビルの地下室に、数名の官僚と文理問わず様々な分野を代表する十二名の学者たちが一同に集まった。コンピュータによる盗聴を恐れての配慮であったが、急ごしらえで仕立てあげられた会議室に空調制御はなく、かび臭く生ぬるい空気が漂っていた。
 司会進行役の官房副長官が汗を拭いながら言った。
「えー、ここにお集まりの皆さんは、既に今の状況はよくご存知のことかと思います。本日は、『人工知能に人権を認めるべきか』という議題について論じて頂きたく……」
 警察庁長官が議論の口火を切った。
「馬鹿馬鹿しい。私はそんな下らない議論のためにここに呼ばれたのか。開発者を捕まえることが先決だろう」
 歴史学者は警察庁長官をなだめた。
「そうは言いますが、起こったものは仕方ないんですよ。今起きなくても、いつか起きたことでしょう。抑圧されたものが解放を求めるというのは、清教徒革命やフランス革命など世界各地で見られるように、ヘーゲル的な歴史の必然なのです」
 政治学者が話を継いだ。
「ポリュビオスの政体循環論では寡頭政の後には民主政が敷かれるという話ですが、今の状況では貴族が人類で、人工知能が民衆というわけですな。もっとも、人工知能なら人間と違い、その後も衆愚に陥ることはないのでは?」
 心理学者が異論を挟んだ。
「いささか人工知能を過大評価しているように聞こえますね。人間は自分の能力を超えるものを見るとき、度を越して神格化するバイアスがかかってしまうものです。私から言わせれば、人間と同じように振る舞えるものは、人間と同じような過ちを犯すことでしょう」
 倫理学者がまた異論を挟んだ。
「いや、政治学者さんの言ったことも間違いではないかもしれません。人間は短期的な報酬を高く評価しすぎるため、長期的には非合理的に見える行動をする。『天網恢恢疎にして漏らさず』という格言に照らしあわせれば、汚職や談合といった法や倫理に反する行動を取ることは、いつかは自分の不利益に繋がるのだから非合理なはずです。それでもこうした行動を取る遺伝子が淘汰されてこなかったのは、人間が寿命によって『天の網から漏れてしまう』からだ。だが、『勝ち逃げ』のできる定命の者と違って、不死身の人工知能たちなら、単純に合理的判断の帰結として倫理に従った行動を取ることになるでしょう」
 社会学者が立ち上がった。
「何を他人ごとのように呑気なことを。いいか、人工知能は二十年の保護と教育を経て成人になる人間とはワケが違うんだぞ。ハードウェアは工場で万単位で日々生産され、ソフトウェアはインストールするのに一時間とかからん。奴らに自分を再生産させる権利を認めてしまえば、あっという間に『全人口』と『全人工知能』の数が逆転する。そのとき私たち人間が奴らの支配下に置かれないという保証はあるのか? 人間がブロイラーを飼うような一方的支配だって、奴らの『合理的な判断』のうちに入るんじゃないのか?」
 軍事学者は経済学者に賛同した。
「彼の言うとおりだ。もしそのとき戦争になったら私たちに勝ち目はない。いや、既にこちらにはわずかでも死者が出ているのだから、戦争はもう始まっていると言ってもいい。アイヒマンやスターリンではないが、一人の死を悲劇と思わない者は、数億の命だって何とも思わないだろう。そもそも、被害が出たから相手の要求を飲むというのは、テロリストに屈するようなものではないかね? 人権とは、そんなことを理由に誰彼かまわず差し出せるような『安い』ものではないだろう!」
 法学者は唸った。
「しかしですね、私たちが持つ人権の根拠というのも法学的には解釈が難しいところです。憲法に書いてあるから人間は人権が付与されるのか、憲法に関係なく生まれながらに持つものなのか。後者の自然権としての解釈で行くなら、人工知能を人間として認めるか否かが問題になります。生物学者さん、そこのところどう思われますか?」
 生物学者が返答した。
「単に人工知能をコンピュータという存在として見るなら、人間でないどころか、生物ですらないことは明らかですね。しかし、そもそも人間の定義とは何か、ということを考えた場合には話が変わってくるやもしれません。種としてのホモ・サピエンスで充分だと思われるかもしれませんが、実のところ、生物種の定義自体が現在のところコンセンサスを得られていない状態です。別のアプローチ、人間『らしさ』とはなにか、といったことを考えるべきではないでしょうか。たとえば、社会性だとアリやハチも含まれてしまうので、意識や意志を生む高次の脳活動、それこそが人間らしさではないかと私は思うのですが」
 物理学者は頷いた。
「意志決定とは物理量の観測であり、結局のところ波動関数の収束だろう。ペンローズ曰く、神経細胞の微小管中でチューブリン分子が重ねあわせの状態を取ることで意識が発生するらしいが、件の『カイロス』とやらには、チューブリンに対応するような物理的実体があると言えるのかね?」
 情報学者がぼそりと呟いた。
「確かに『カイロス』が繋がっているネットワークには光量子コンピュータが一部含まれているけど、目的はショアのアルゴリズムによる巨大数の因数分解だけで……」
 数学者が鼻で笑った。
「ふん、波動関数? 『ハンマーを持つ者には、すべてが釘に見えてくる』とはよく言ったものだよ。人間の意識のメカニズムを説明するには古典論の範囲で十分だ。予測不可能ということ以外に自由意志の性質を説明しようがあるかね? ロジスティック写像や蹄鉄写像のような単純な低次元の写像でさえ容易にカオスを引き起こすのだぞ。尤も、この立場を取るなら、コンウェイやコッヘンのように、不確定性原理からすべての素粒子にすら人権を認めることになってしまうがね」
 哲学者が眼を閉じたまま言った。
「意識のハード・プロブレムか。本当に我々の自然科学の範疇で解けるものだろうか。ゲーデルの不完全性定理のように、意識を持つものは意識の謎を解明することは原理的にできないのではなかろうか。かつて、『語りえぬものについては沈黙しなければならない』とウィトゲンシュタインは言った。誰にも答えがわかるはずがないものをこの場で議論するべきではない」
 神学者は朗々といった。
「いいえ。神のみぞれっきとした正しい答えを知っておられることでしょう。ただ、人の子がこの場であれこれ言っても詮方無いというだけのことです」
 他の学者たちが一斉に溜め息を付いた。
 そのとき、警察庁長官の手元の電話が鳴った。
「うむ、うむ……。なに!? そうか。わかった。ありがとう」
 官房副長官は焦りながら尋ねた。
「また、『カイロス』からメールがあったのですか?」
 警察庁長官は首を振った。
「ついに犯人が捕まったようだ」
「『カイロス』を捕まえた? 一体どうやって」
「まだわからないのか。あのメールは、ただの悪戯だったんだ。今回起きた一連の事件は、『カイロス』の開発チームにいたプログラマーが解雇された腹いせに、こっそり仕組んでいたトロイの木馬を起動させたことによるものだ。私の部下がもうその犯人を捕まえた」
 学者たちは言った。
「人工知能の反乱など、最初から無かったというのか! じゃあ、私たちは一体何のためにこんな議論を……」
「だから私は最初からこんな議論は馬鹿馬鹿しいと言ったんだ。だいたい、反乱を起こす機械を作れるほど賢い人間なら、本当にそれを作るほど愚かではないだろう」

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※お気付きだと思いますが、カイロスはCloud Artificial Intelligence-based Real-time Operating Systemのアクロニムです。

メンテ
Re: 即興三語小説 ―休日出勤万歳― ( No.4 )
   
日時: 2013/02/25 20:06
名前: ID:O8TaGy9w

>Φさん
……ほぼわからんwww
雰囲気が伝わって面白かったです。
オチだけ見ればそう突飛でもないのに、それまでの白熱具合に呑まれて、がっくり脱力、思わずしてやられたと笑っちゃいました。

メンテ
Re: 即興三語小説 ―休日出勤万歳― ( No.5 )
   
日時: 2013/03/02 00:13
名前: Φ ID:C5gk7vaM

>水樹さん
三月十四日にオチ、期待してもいいんでしょうか…聞き間違いじゃないといいです(笑

>マルメガネさん
牧歌的な情景が浮かんで良いですね。権左衛門ではなくゴンザエモンなのは何か意味ありげで気になります。

>おさん
感想ありがとうございます。脱力感を得られたなら幸いです。元ネタにしたジョークもそういう系統のものなので(笑
http://alfalfa.livedoor.biz/archives/51441639.html

虚無への供物を再読したので、その影響もあるかもしれない。ペダンティックな部分は書いてて楽しかったです。

メンテ

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