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RSSフィード [18] 意訳詩
   
日時: 2011/10/31 12:06
名前: 闇の吟遊詩人(闇雅人) ID:Ru30e.qY

昔、私がTCの常連だったころ、管理人の闇さんに提案して拒否された企画(苦笑)。裏でやるならいいでしょう。参加は自由です。ちなみに「外国の詩」を「教科書的に直訳」せず、「意訳して日本語の詩」にする「意訳詩」というジャンルはあります。上田敏の『海潮音』や、佐藤春夫の『玉笛譜』などがその例です。

なお、TCから離れるにあたり、私の記事は全て削除しておきます。私の企画で孤軍奮闘してくれた「うんこ太郎さん」の応援のために「一時的に」投稿したランボーの詩も削除します。では、失礼致します。もう二度とここへは来ません。

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Anna Świrszczyńska ( No.19 )
   
日時: 2011/12/19 09:54
名前: うんこ太郎 ID:RpWLkMF.

Anna Świrszczyńska (Anna Swire) 1909–1984 はポーランドの女性詩人です。ナチスドイツのポーランド占領時代は従軍看護婦としてレジスタンスを支えました。
SFみたいな詩ですが、キリスト教徒が過去を遡って行けば、人間が土くれからはじまったアダムとイヴの神話にたどりつくところが、なんとなく納得できておもしろいです。
日本人はどこにたどりつくのでしょう。
 
タイトル:Woman Unborn
作者:Anna Świrszczyńska
英訳者:Czeslaw Milosz、Leonard Nathan


<意訳>

タイトル:まだ生まれていない女

わたしはまだ生まれていない
生まれるまでは五分かかる
この世に生まれるまでの時間は
もっと遡ってゆける
ほら生まれる十分前
ほら生まれる一時間前
逆行してゆく
走ってゆく
マイナスの時間を

生まれる前の時間を歩いてゆく
ときおり奇妙な景色の見える
トンネルの中を歩くようにして
十年前
百五十年前
わたしが歩いてゆくと足音が響く
生まれるずっと前へ
壮大な過去へとゆこう

逆行してゆく時間は
どこまでも続く
なにもないということは
こんなにも、永遠とそっくりだ

ロマンティシズムの時代
わたしは未婚のまま
おばさんなったかもしれない
ルネッサンスの時代
わたしは気難しい旦那と結婚して
醜くて愛されない女だったかもしれない
中世
わたしはどこかの居酒屋で
水を運んでいたかもしれない

わたしはまだ遠くまで歩いてゆく
足音が響く
マイナスの時間をたどりながら
人生を遡ってゆくあいだ
足音が響きつづける
わたしはアダムとイヴに追いついた
もうなにも見えない
ただ暗い
わたしの不在すらも
ここでは死んでしまう
わたしがそれぞれの時代に
生まれていたとして
きっと繰り返していたであろう
数々のありふれた死と一緒に

※ ※ ※

Woman Unborn
BY ANNA SWIR

I am not born as yet,
five minutes before my birth.
I can still go back
into my unbirth.
Now it’s ten minutes before,
now, it’s one hour before birth.
I go back,
I run
into my minus life.

I walk through my unbirth as in a tunnel
with bizarre perspectives.
Ten years before,
a hundred and fifty years before,
I walk, my steps thump,
a fantastic journey through epochs
in which there was no me.

How long is my minus life,
nonexistence so much resembles immortality.

Here is Romanticism, where I could have been a spinster,
Here is the Renaissance, where I would have been
an ugly and unloved wife of an evil husband,
The Middle Ages, where I would have carried water in a tavern.

I walk still further,
what an echo,
my steps thump
through my minus life,
through the reverse of life.
I reach Adam and Eve,
nothing is seen anymore, it’s dark.
Now my nonexistence dies already
with the trite death of mathematical fiction.
As trite as the death of my existence would have been
had I been really born.

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