年の終わり
_初めてリサに会ったのは年の暮れ、新しい世紀に入る一週間かそこら前あたり、俺の家の近くの公園で遊ぶ子の絵を書いていた。淡い水彩画で書き起こされた黄と赤の滑り台と所々錆びてる灰青のブランコ。嬉しそうにブランコに立ち乗りしている子もいれば小さなキャラものの自転車を補助輪付きで乗る子。そんな何の変哲のない絵だった気がする。特別上手いわけでもなかったはず。でも、綺麗な色使いに繊細な書き込み……
「本当は自然を書きたいんですけどね、遠い所にいく時間もお金もないので。」
「……なぁ、キミ。油絵を書いたことはあるかい?」

_リサによれば、家族にプレゼントされた油絵セットがあるそうだが、使い方がイマイチわからないだとかその辺りだった。ついでにキャンバスがどこに売っているのかわからいないと。世界堂ぐらい行っとけバカとか言った気がする。その日はリサに油絵の使い方をレクチャーし、近くでキャンバスを売っている店のメモを渡して帰った。

_それからリサとはたまに遭遇した。街路樹のスケッチをしたり、近くの川を描いたり。そのうち、リサが油絵を描いているところを見たこともある。ありがとうございます、教えて下さって、いえいえ、対したことしてませんとか、そんな会話。その時、リサの油絵を見て彼女の才能を確信した。淡い色使いと繊細なタッチ。細い筆で丁寧に書き込んで行くスタイルは水彩画から油絵に変わった時、グレードアップしていたようだ。
「賞とかに出してみるといいよ、君の絵を。」俺は思わずそう進めてた。

_それから暫しリサとは遭遇しなかった。まあ、引越しでもしたんだろうと特に気には止めず、暫くぶりに彼女といつかの公園でで再開した時、一瞬、誰やと思ったのを覚えている。彼女の髪は茶髪から黒、そしてロングに変わっていた。
「久しぶりだな」
「はい、画家をやっています。」
「……マジか」
「あ、LISAという名前でやっています。」
家に帰ってソッコー調べた。

_次にリサを見つけたのはテレビ越しにリサの作品が紹介されている所だった。彼女がそれなりに成功を収めていることはインターネットなどで知っていたが、改めて俺はあの女性が画家だということを認識した。この人知ってるの?と彼女に聞かれた気がする。どう答えたかは、記憶に無い。

_次にリサと会ったのは、本当に最近。何処かへ引っ越してしまったであろう彼女と再び遭遇したのはあの公園で、冬の足音が聞こえてくる時だった。私は息子を遊ばせに来ていて、彼女は水彩画で遊ぶ子を描いていた。錆きって塗装が塗り直されたブランコと青と緑に塗り直された滑り台。息子はすぐにお気に入りのブランコへ走っていった。リサが私に気がついた。
「息子さんですか?」彼女がモコモコの耳あてを取りながら、尋ねた。
「そうだが……君は活躍しているみたいだね。」
「あ、はい。えっと、」
「丸川だ。」
「 あ、はい。丸川さんが油絵を教えてくれたり、賞に出すことを進めてくれなければこんなところまで来れませんでした。ずっとお礼を言おうと思っていたんですけど、丸川さんはふらりと現れて直ぐに消えるから名前も知らなくて…」
「私こそ、こんな事になるとは。妻がファンなんですよ。」
「本当ですか? 今日、なんかここに来たら丸川さんに会える気がして来たんですよ今日。」
「そうか?」
「 女の感ですよ」
「 そういうものなのか?」
ローズ
2014年10月28日(火) 14時32分39秒 公開
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■作者からのメッセージ
最初の方と最後の方で視点の人の一人称が変わってるのはわざとです。

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No.2  ローズ  評価:0点  ■2014-11-14 13:07  ID:3e88VX7UizM
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田中さん、感想ありがとうございます。
鮮明に現れてない才能って(笑) そんなものないですよ。

では、。
No.1  田中  評価:40点  ■2014-11-13 14:02  ID:xhUpKw9x9wo
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読ませていただきました。

ローズさんて、何か、表に鮮明にあらわれてこない才能のようなものをお持ちですね。
ところどころにハッとさせられるような表現が混じっているなと感じました。
この、ゆったりした流れというか雰囲気というか、真似したいぐらいです。

これからも頑張ってください。

あと、僕の拙作「我が子」ですが、大幅に修正しようと思っているので、明日にでも削除するつもりでいます。
ローズ様からのご感想は保存させていただきました。本当に有り難うございました。
総レス数 2  合計 40

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