わるぐち
「ねえB美、今のふたり見た?」
A子はB美に話しかけた。今しがた若いふたり組の男が横を通りすぎたのだ。
「うん。見た見た」
「どう思った?」
 B美は眉にしわをよせ、うめぼしを食べたあとのようなすっぱい顔をした。
「最悪。気持ち悪い」
 それを聞いてA子は、だよね、とうなずいた。
「まずルックスに難あり。ふたりとも原始人みたいな顔してる。服もださい。中学生みたいなファッションセンス。ママにスーパーで買ってもらったのをいまだに着てる感じ。ありゃそうとう女にモテないとみた」
 とうとうと語るB美にたいして、そうそうわかるわと相槌をうつ。
「しかもあのふたり、こっちをじろじろと舐めるように見てたわよね。あれ絶対わたしたちを誘ってたのよ」
「あ、やっぱり。B美もそう思った?」
「あのねっとりとした目つき。確実にわたしらを狙ってたわ。無視してやったけどね」
 はあ、とため息をつきながらB美は腕を組んだ。
「まったくこれだから勘違い男は困るわ。同じレベルだと思ってるのねきっと。身の程をわきまえろって感じよ」
「でも、安心はできないわ。あとから追いかけてくるかも」
 A子は不安げな表情を見せる。まるでライオンに見つかって今にも追いかけられそうな草食動物のようだ。
「そんなことしてきたら言ってやるわよ。お前らとわたしたちじゃ住む世界がちがうんだよ! ってね」
 ふん、と鼻を鳴らしながらB美は言い放った。たくましいかぎりである。
「とくに右にいた男。黒い長袖着てた方ね。あれはきっとA子にひとめぼれしてるわよ」
「え、うそ」
「ほんとほんと。あなたを見る目つき異常だったもの。そういえばあなた今フリーよね。つきあっちゃえば?」
「ちょっと、やめてよ」
 A子は嫌そうな顔をした。誰があんな気持ちの悪い男とつきあうものですか、とでも言いたげな表情だ。
「冗談よ。あんなさえない男、わたしたちとはつりあわないもの」
「そうよ。もし無人島にふたりきりになったとしても、絶対に間違いは起きないって自信あるわ」
 その言葉にB美はクスりと笑った。彼女も同感らしい。
 それからも男たちの悪口を言いながら渋谷の街をふらふらとさまよった。良い男に声をかけられないかと期待をしながら。

「なあD助、今のふたり見たか?」
 C太はD助に話しかけた。今しがた若いふたり組の女が横を通りすぎたのだ。
「ああ、見たぜ。気持ちの悪い女どもだったな」
「お前もそう思ったか友よ」
 D助が自分と同じことを感じたのが面白かったのか、C太は思わずにやけた。
「けばけばしい化粧をしていて不愉快だなと思いながら見ていたら、あの女たち見つめ返してきやがった。あれは誘っている目つきだったよ。正直寒気がしたね。ほら見てくれ、いまだに鳥肌が立っている」
 D助は黒い長袖を二の腕までめくった。ほそい腕があらわになる。
「ほんとだ。やばいな。鶏がらスープでも作れそうな勢いだな」
「誰がお前らみたいな薄汚いビッチを相手にするものかと思ったよ。俺らとあいつらでは住む世界がちがいすぎる」
「そうそう。まったくこれだから勘違い女はこわいよ。身の程をわきまえてほしい」
 それからも女たちの悪口を言いながら夜の街をさまよった。声をかけるに値する女をさがしながら。
のぼる
2012年10月13日(土) 02時05分57秒 公開
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No.2  のぼる  評価:--点  ■2012-10-16 17:55  ID:/H.KPsVwOeE
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>>アブラクサス ガラ ガラ ツェ ツェさん

はじめまして。読んでいただきありがとうございます。
ご意見ご感想もありがとうございます。
参考にさせていただきます。
No.1  アブラクサス ガラ ガラ ツェ ツェ  評価:30点  ■2012-10-13 21:52  ID:oE2tK3DWyuo
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はじめまして、拝読しました。
部品はキッチリそろっているとおもいました。
よく言えばウェルメイド、悪く言えばすこし凡庸です。
あと、もうすこし、いろんな部分で、細部に突っ込んで書かれると、この感覚は、すごく広いところに出そうだなー、まねしたいなーと思いました。
ありがとうございました。
総レス数 2  合計 30

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