打算的な犬
 Aが営むペットショップに、近所に住む動物学者のZ博士が犬を連れてやってきた。リードをつけていないその犬は、白いシェパードだ。
「おい、犬の餌をよこせ。この袋につめられるほどな」 Zはぶっきらぼうに紙袋を渡してくる。
 Aはむっとしながらも、ドッグフードを用意しに棚に向かう。
「大変賢そうな犬ですね」 Aは近所で気難しい男として有名なZにも積極的に話しかける。最近のペットショップにやってくる客と言えば、デートのスポットとして冷やかしに来るカップルばかり。営業が傾きがちなペットショップのオーナーとしては、無愛想な客でもむげにはできない。
「ふん、君にこの犬の本当の価値などわかるものか」
「本当の価値?」
「さよう。この犬は「忠義」などというあいまいなものでなく、「契約」というものを理解する。仕事を果たし、餌という報酬を得るためにな」
「へぇ、まるで人間のようですね」
「さよう。人間は打算的な生き物だ。そうだな、いわばこの犬は「打算犬」というわけだな。きちんと餌を用意すれば、その分仕事を果たしてくれる。だからこそ私は安心して寝られるのだ」
 Aはドッグフードをつめた袋をAに渡す。Zはお金をAに渡す。ここに契約は完了し、社会は成り立つ。だが往々にして、社会のルールを破ろうとするものは存在する。

 人の寝静まった深夜、AはZ博士の邸宅に忍び込む。
「しめしめ、あの袋に詰め込んだドッグフードはうちの店で一番不人気なドッグフードだったのだ。こちらの一番人気のドッグフードは風味も味わいも段違い。あの犬が本当にZの言うとおりの「打算犬」なら、こちらの餌に夢中になるに違いない。その隙に、俺はZの金を奪おうって寸法さ」
 Aは打算犬に近づき、 お皿に盛り付けた上質ドッグフードをちらつかせる。しかし犬は皿には目もくれずにAだけを見つめたままだ。
「あれ、おかしいな。 さてはZめ、打算犬と銘打っておきながら、本当のところはただの役立たずの馬鹿犬なんだな」
 Aは犬を無視して家に忍び込もうとする。しかしそのとき犬が大声でほえ始める。ばう、ばう、ばう!!
 Aは吃驚して、足をもたつかせながら慌ててZ家を去る。脅威がなくなったことを確認した「打算犬」は体を伏せ、静かに目を閉じた。
 「打算犬」は知っていたのだ。一回限りのご馳走よりも、毎日の食事、散歩、ブラッシングが、犬生(いぬせい)において大事だということを。
ムネキチ
2012年10月10日(水) 21時57分40秒 公開
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■作者からのメッセージ
読んで頂いてありがとうございます!「小さな物語の作り方(著・江坂遊)」という本を読んで、試しに一丁作ってみるか!と思い、創作しました。文章が下手くそ味噌くそで申し訳ありません。感想いただけるとうれしいです。

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No.2  ムネキチ  評価:--点  ■2012-10-17 22:47  ID:n8TRsD1DNlk
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comさん
うわぁ、こちらこそ、読んで頂きありがとうございました!
感想ってすごいうれしいですね!
これからも投稿することあったら、ぜひご一読いただけたらと思います
私もcomさんの作品見ていろいろ勉強させてもらいます!
ありがとうどざいました!
No.1  com  評価:30点  ■2012-10-17 06:01  ID:L6TukelU0BA
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童話でも読んでるような気分になりました。
犬は吠えるだけでAに噛みつかないところも打算的ですね。
ほんわかした話でした
ありがとうございます
総レス数 2  合計 30

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