うんこうんこうんこ出るうう
 その朝、父は腹痛により悪い目覚めをした。額を舐める汗を掛けていた布団で拭うと上半身を起こして、
 「なにか悪いものでも食べただろうか」と一人で不安な呟きをする。そして隣ですやすやと眠る妻に向かって「おい、おい」と言い、彼女の体を揺すった。眠たそうな目を開いた妻に
 「お前、腹痛くないか?」
 と問うた。妻は「んー」と一つ唸って
 「あたしは寝てる時に何度か、お腹の痛みで目が覚めましたよ」
 「今は?」
 「少しだけ痛いです」
 そうかぁ、おそらく食べた物が悪いんだろう。と父は思って
 「なら、優子も腹痛かな」
 と優子という十四歳の娘の身を案じて、眠気と腹痛を我慢しながら娘の部屋へと向かった。
 ベッドの上で優子は腹を両手でしっかりと押さえて仰向けに寝ている。優子に父は近づいた。
 「おい、優子は腹痛いか?」
 「うん、すごい痛いよ。パパも?」
 「うん痛いよ。もうちょっと我慢してくれよ」
 「うん、頑張る」
 そんな会話をした後、彼は風呂場へ行った。そして風呂場にある洗面器を三つ手に取るとリビングへと向かい、おもむろにそれを床に並べた。
 「おぉい。準備できたぞお」
 父は二階にいる娘と妻へ聞こえるような大声で言う。
 ドタドタと階段を降りる音がし
 「あー、やっとだああ」
 と娘が快活な声をあげながら姿を表した。続いて静かに静かに妻が降りて来た。
 「もうやってもいい?我慢できないよぉ」
 と娘が父に懇願した。
 「おぉいいぞ」
 「あたしもよろしいですか?」
 妻がそう言いうと
 「いいぞ」
 と父は返答した。
 娘と妻は焦るように寝巻きのズボンとパンツをずるりと下げた。そうして洗面器を和式便所と見立てるように跨がった。妻は青い洗面器、娘は白い洗面器。二人は隣合っていた。それを父は観察でもするかのように眺めている。
 くっと小さく言いながら娘は下を向いて腹に力を入れた。
 開いた肛門から粘液混じりの下痢が洗面器に落ち、びちびちびちちちちーっと音を立てた。その音に混じって隣の妻の肛門からも、粘液混じりの下痢が勢いよく放たれた。
 トウモロコシの粒やらトマトの皮が下痢の茶色い水に浮かんでいた。それを見た父は眉間に皺を寄せた。
 妻と娘の肛門は未だに、ひくひくと痙攣していたが父は二人の間にボックスティッシュとゴミ箱を置いた。
 「あーつかれたー」
 尻を拭きながら娘が言った。
 「腹痛治ったか?」
 「うんっ」
 「お前はどうだ?大丈夫か?」
 父は妻に聞いた。
 「はい、治りました」
 そうか、と父は言い、彼もおもむろにズボンとパンツをずらした。そして黄色の洗面器に跨がった。力んだ。ぶりりぃびちちちと勢いよく排便し終わると尻を拭く。
 部屋に三人の下痢の酸い臭いが充満していだがそれを誰も気にも止めなかった。
 「ほら、学校の準備しなさい」
 「はーい」
 という妻と娘の会話を耳に入れつつ、父は洗面器を三つ持って台所へと向かった。
 「ザルってどこにあったけ?」
 「あー、ここです、ここ」
 妻も台所へ来た。そしてザルを差し出した。
 「はー、やっぱ二人で立つと台所は狭いなぁ」
 「そうですねー」
 と他愛も無い夫婦の会話をしている。妻は卵をフライパンに落とした。
 ザルをシンクに起き、それに向かって父は洗面器の下痢を流し入れ始めた。下痢の水分は排水溝へ、固形物は網目に引っ掛かった。固形物に付着した下痢を少しだけ、適度に水で洗い流すと、トマトの皮と種とモヤシとトウモロコシの粒が黄ばんだ姿を表した。
 「これこれ、これがうまいんだよなぁ」
 父はそう言いながら、それらを小さな皿へと移した。
 「洗い物頼むわ」
 妻にそういうと父は、はしゃぎながら机へと向かった。
 父が箸でトウモロコシをパクリ。
 「うーん、うまい。胆汁の味がする」
 箸で掴んだモヤシは皿に糸を引いた。
 「あぁ、これは腸液だな」
 と呟きながらそれを食った。腸液を舌で舐めとり味が無くなるまでモヤシを噛んだ。
 「あたしにも頂戴よう」
 学校の支度を終えた娘が、あーんと口を広げた。父は下痢の付着したトマトの皮を口に入れてやった。娘は口をもごもごさせて、苦い顔をした。
 「んん、ちょっと胆汁が付き過ぎかなぁ」
 父は、そうかぁ?と首を傾げる。
 「こら、早く行きなさい」
 と妻が台所から娘を咎める。
 消化不良物を美味しく食した父は席を立ち
 「俺も準備するわあ」
 と言うと寝室に吊るされているスーツを取りに向かった。
 「やれやれ、朝は大変だこと。忙しいわねー」
 妻が糞の臭いを発する洗面器を洗いながら幸せそうに呟く。
 どこからか雀の声が耳に届く。朝日はいつもより新鮮。今日も頑張ろうと妻は思った。
com
2012年10月10日(水) 02時41分26秒 公開
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失礼しました。

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No.4  com  評価:0点  ■2012-10-15 02:04  ID:L6TukelU0BA
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蜂蜜さん
感想ありがとうございます!
谷川俊太郎氏の作品に「なんでもおま○こ」と言うものと「うんこ詩集」といったものがあります。僕はその詩を目にし大いに清々しさを感じ、その後、この作品を書きました。悦には浸っていませんが、うんこの事だけを恋人の事のように親身に考え、うんこ以外、例えば、美やらは全く考えていませんでした。もっと考えて投稿しようと思います!
No.3  蜂蜜  評価:10点  ■2012-10-14 23:18  ID:l/PKERnlIUY
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拝読しました。

スラップスティックなコメディとしては40点。
表現性、文学性を考えれば、0点。

間を取って、かなり辛めの10点をつけます。

汚い話、うす汚れた話、何らかのタブーに触れた話は、書こうと思えば誰にでも書けます。
でも、あえてそれをやらないのが、大人です。それをやってしまうのは若い厨二病患者だけです。

何らかの禁忌を超えたこと自体が快感ですか?
「俺って前衛的っっっっwwwうえっっうえっっっw」とか思っていませんか?

だとしたら、失礼ながらcomさんは、まだ文学の入口にすら立っていない、と僕は断言します。
なぜなら、文学とは、たとえ薄汚れたものであっても、純粋にうつくしいものであっても、何らかの「美学」を目指すものだからです。

残念ながら僕は本作に、厨二病的な「禁忌を超えた自己満悦」以上のものを感じることができませんでした。

次回作に期待します。

僕からは以上です。


No.2  com  評価:0点  ■2012-10-11 17:35  ID:L6TukelU0BA
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昼野さん
満点ありがとうございます!
勢いでも嬉しいですw
No.1  昼野陽平  評価:50点  ■2012-10-11 16:28  ID:FJpJfPCO70s
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ひどすぎw
勢いで満点いれますw
総レス数 4  合計 60

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