戯曲・習作「ヘンリーとその他の面々」
ヘンリー 男性。45歳。オーキッドハウスの管理人。ガーデニング用の丈夫な服。神経質。
エマ 女性。20歳。ビジネススーツのうえにレインコート。隠し事がありそう。魅力的。
フレッド 男性。19歳。アルバイト。スポーツマンタイプ。「ラン」と書かれたティーシャツ。
リリアン 女性。67歳。ヘンリーの母。隙のない服装。才気のある感じ、ピリピリしている。

ヘンリーはオーキッド・ハウスの中をランを点検しながら歩いている。その最中、小言をぶつぶつ呟いている。
足元にあるランに何かを発見して

ヘンリー ん?あちゃあ、また変な虫が入り込んでるな。また虫の駆除をしなきゃならん。

 エマ、下手から駆け込んでくる。息が上っており、何か切羽詰ったような感じを受ける

エマ ちょ、ちょ、ちょ、すいませーん!私を少し匿ってもらえませんか?
ヘンリー なんだ君は、いきなり飛び込んできて
エマ そ、それが、その…ある人に追われていて
ヘンリー ある人…?何のことだそれは?言っておくが、面倒ごとをしょいこむような余裕はないからな
エマ 今ほんとうに大変なんです。ほんの数分でいいですから
ヘンリー いやいや、悪いがうちもそんな慈善事業は行っていないからな

 ヘンリー、エマを出入り口に追いやろうとする。が、エマはしゃがみ込んで動こうとしない。

ヘンリー おいおい、なんだってんだ

 フレッド、下手から歩いてくる。のんびりした顔でエマを見つけて

フレッド あ、あれ?エマ、なんでここにいるの?
エマ あっ!フレッド!実は、またあいつらに追われているのよ。

 エマ、目で合図する。フレッドはその合図を受け取る。

フレッド ああ、またか!ヘンリーさん、うちに被害はおそらくないですから、少しの間おいてあげましょうよ
ヘンリー ああ、…ああ
フレッド いつまでいるのかい?
エマ もっと…と言おうと思ったけど、どうやら消えたみたい、おじさんどうもありがとう

 エマが去る。ヘンリーとフレッドは少し近づいて

ヘンリー うーん、なんだったんだろうね、あの人
フレッド あの子はエマといって、僕の知り合いなんです
ヘンリー へえ、そうなんだ

 二人、お互いの思いを感じて、少し間。

ヘンリー ところで、あのことだけど、もう少し考えてくれないか?
フレッド でも、僕達、そういう事をするにはまだ時間が足りないと思いますけど
ヘンリー (ぶちまけるように)だって、もう心は通じ合ってるじゃないか!

 間。

フレッド そ、そんな…大きな声で…
ヘンリー す、すまん。

 リリアンがやってくる、フレッドは急いで去る。

リリアン おや、フレッドがいたようだね。
ヘンリー ん、ああ、なんかどこかに行ったようだけど、なんで?
リリアン だって、足跡、お前のものとは違うものが…あれ?もう一つあるね
ヘンリー ああ、さっき妙な女の子が入ってきて、誰かに追われてるうんたらかんたらで、すぐに出て行ったけど
リリアン あら、そうかい。何か取られたりはしなかったね?
ヘンリー いや、取られてはないよ。さいわい
リリアン まったく頼むよ。私もこの歳だから変な心労をしょうようなことはしたくないからね。
ヘンリー ああ、ああ、分かってるよ。

 ヘンリー、持っていたランの鉢を落とす。短い間。

ヘンリー ああ、もういちいち気が散るようなこと言うから、落ちたじゃないか
リリアン ああ…ああ、悪かったね。でも、あんたも気をつけなよ。
ヘンリー これでまた無駄金が飛んでいっちまう
リリアン って、私の金で出してきたのによく言うよ。

 ヘンリーがリリアンを連れて外に出る。エマとフレッドが別のところから入ってくる。

フレッド お前、急にどうしたの?俺も働いてるから急に来られても困るんだよ

 エマ、言葉に窮し、少し間。

エマ ああ、悪い。悪い。近くに寄ったから気になってね
フレッド 用もないのに来るなよ
エマ 悪かったね、もう来ないよ。

 エマが去り、ヘンリーが入ってくる

ヘンリー あれ?…誰かいた?
フレッド え…ああ、どうでしょう
ヘンリー さっきママの小言攻撃をくらっちゃってさあ
フレッド また、ですか?(笑)
ヘンリー また…じゃなくてあの子が原因なんだからね
フレッド ああ、すんません

 フレッド、出て行く。ヘンリーのみ。

ヘンリー くそ!やってられん。

 ヘンリー、近くの鉢を衝動的に蹴る、中身が床にぶちまけられる

ヘンリー またやっちまった!

このあと、実はエマがヘンリーの妻に雇われた探偵で、ヘンリーの女の気を探っていたのが
フレッドとヘンリーが恋仲であることを目撃し仰天します
エマは二人から詰問され、自身の素性をばらしますが、どうしたものか三人とも困惑
何も知らないリリアンまでが介入してきて事態はあらぬ方向に向かうーみたいな
もぶ
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2011年09月20日(火) 00時56分46秒 公開
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■作者からのメッセージ
自明のことだろうってのも含めて、率直な乾燥できれば

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No.1  夕凪  評価:30点  ■2011-09-30 12:32  ID:qwuq6su/k/I
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 だうも劇作とか戯曲とか、チェーホフやファウストとか よう読め無いんですが これはスンナリ読めて面白かった。屋根の上のバイオリン弾きやシェイクスピアも舞台とか観れば面白いんでしょうが・・・配役と台詞を読むのは、どうも苦手で。。。それが初めて戯曲の台本を読んで ケッサクだったです。特にヘンリーの「面倒事を背負い込む余裕が無い」と「慈善をやって無い」という言葉に、成る程、突然他人からそんな風に頼まれたら、さう断るべきなんだと判りました。とエマが、追っ払おうとしても しゃがみ込んで動こうとし無いのが 憎らしくて良かった。
総レス数 1  合計 30

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