走るみそ汁とバスの間違い
最高のみそ汁を作ろう!!そのためにはみそ汁を距離になおそう!』
え?……なんだろう?この意味不明な展開は……?みそ汁がなんだって?
『できたぞ!!!130キロメートルだ!!!!これからこの距離を13日間にわけて走るぞ!!みそ汁の気持ちになるのだ!!!』
ナツを置き去りにして話はどんどん進んで行く。
 それにしてもいったいみそ汁にどんな事をしたら距離になおったんだろう?……イヤ、はっきり言って今はそんなことはどうでもいい。みそ汁の距離云々の説明をしてほしい。だけど他の人がとても熱心で、どこを走ろうかと頭突き合わせて真剣に相談している。聞くに聞けない状況だ。これはもう今のところ流される以外に打開策が見つからない。とりあえず様子を見ることにした。
 様子をみることにした、ということは必然的に皆と一緒に一日10キロメートル走ることになる。よりにもよって校庭を。あの綿密な話し合いの結果校庭を走ることに決まってしまったらしい。せめて、もう少し景色に変化が欲しいんだけど……そして校庭のトラックは一周200メートルだ。10キロメートルて何周走ればいいんだよ……計算する気にもなれない……
 そしてさらに不思議なのは序盤に張り切りすぎて今現在バテている本田と、彼と仲の悪いはずの体育教師(このみそ汁計画の首謀者)がウンザリするほどの『教師と生徒のベタベタ青春ドラマ』をやっているのだ。ますます意味がわからない……
『まだだ!!本田!お前はまだ走れるぞ!!』
『はい!先生!!』
『ようし!!あの夕日にむかって……』
 なんなんだろうこれは……?



 『チャッチャラッチャッチャッチャー、チャッチャラッチャッチャッチャー、チャララーチャーラーラー』
 いつものアラームが枕元で鳴っている。停止させずに、やり過ごす。スヌーズ機能でもう一回なったけど放置。またスヌーズで鳴った。今度は止めて、ノソノソとベッドから這い出る。ベッドの前に突っ立ったまま考える。(今のは夢か……?)疑問を残したまま、ナツは自分の部屋に行き、半分寝ながらYシャツに袖を通した。朝食を食べて学校へ。
 その日は学年末テストの初日でもあり、親友の香奈の誕生日の前日だった。放課後は香奈とSヶ丘駅に香奈自身の誕生日プレゼントを一緒に買いに行くことになっている。(本人が選んだ方が後で文句をいわれないから)
 1時間目社会のテスト。どうか70点きりませんように。
 2時間目数学のテスト。どうか30点きりませんように。(※100点満点です)
 3時間目美術のテスト。あわよくば満点で……
 4時間目数学の通常授業。聞き流す。
 給食はなく、香奈とダラダラ下校。
 家で昼食を食べ終わると香奈から電話がきた。
香奈「行く?」
ナツ「ここで『行かない』ってウチが答えたら今年香奈の誕生日プレゼントはないよ」
香奈「行く!行こう!!レッツゴー!!!」
ナツ「はいはい。えーと何だっけ?あの巨大なデパート。うーんと……オー〇か。んじゃオー〇の前ね。」
香奈「はいよ〜」
 ちなみに香奈の家はSヶ丘にある。といっても今から行くSヶ丘の駅とは離れた場所にある。
 N駅からバスに揺られること数分。(ナツの家はN駅)Sヶ丘駅到着。オー〇前で香奈とおちあった。
 ナツと香奈はみそ汁の夢の話をしながら、オー〇内をうろつく。
香奈「まったくやっぱりお前の頭ン中は意味がわからんな……」
ナツ「仕方ないじゃん。みそ汁が距離に、なおっちゃったんだから」
 斜め方向の受け答えをしながら進む先も話の内容もフラフラ、フラフラしながら進んでいく。
香奈「あ〜いいものない……」
ナツ「これは?」
 ナツがからかい半分でさしだした、よだれかけは黙殺された。
香奈「あ〜やっぱいいものないよ〜」
 香奈がアニ〇イトを物色しながらぼやく
ナツ「なにぃ!!!こんなにいいものがあるのに『いいものはない』と言うのか!?お前の目は節穴か!?」
「じゃあ『これ買って』って言ったら買ってくれる?」
 香奈がさしだしたのは2846円もする、某漫画の香奈もナツも好きなキャラが文字盤にプリントされた目覚まし時計だった。
ナツ「……無理」
香奈「でしょ?」
 ちなみに今回のプレゼントの予算は500円ほどだ。オーバーできるのは6円まで。
ナツ「うーじゃあTセンターにでも行く?」
 Tセンターとは別の駅で、位置的にはN駅とTセンターとSヶ丘駅で逆三角形になっている。Sヶ丘駅を一番手前の頂点とすると、右上にTセンター。左上にN駅があるかんじだ。TセンターとSヶ丘駅は市内有数の大通りで真っすぐ繋がっており、行こうと思えば歩いてでも行ける。ただ歩くと1時間ぐらいかかるのではないだろうか?普通は歩こうだなんて、おもわない。
香奈「あ〜そうか〜行く?」
ナツ「どうする?」
香奈「じゃあ行こっか」
ナツ「んじゃ一回バスでN駅まで戻ってから電車に乗り換えてTセンターまでいく?」
香奈「うーん確かここからバスで直接Tセンターに行くやつあった気がするよ?」
ナツ「ああ、そうなの?じゃそれで行こう」
 話がまとまった。
 オー〇を出てバスターミナルへむかった。Sヶ丘のバスターミナルは乗り場が10以上ある所で、目的のバス停を捜すのは至難の技だ。一応どのバスがどこに行って、何番乗り場なのかを書いた一覧表のようなものはあるのだが、その表の中から目的地に、早く安く効率よく行くバスを見つけるのも大変だし、何より表で見つけたバス乗り場を実際に歩いて捜すのが一番大変だ。
 苦労の末、8番乗り場に来るバスが一番いいことが一覧表からわかった。あとは乗り場を捜し出してバスに乗るだけだ。
 ターミナル内をさまようこと数分。そろそろ人に聞こうか、と相談し始めた時、やっと8番乗り場を見つけた。ムカツクことにバスの一覧表の真ん前だった。
 8番乗り場には、丁度バスが停まっていた。香奈と二人で何の疑いもなく乗ってしまった。そう、乗ってしまったのだ。
 バスは走る二人を乗せて……
ナツ「Tセンターまだかね〜?」
香奈「うーん次じゃない?」
ナツ「えっホント?」
香奈「イヤ、知らない」
ナツ「あてずっぽ………」香奈「あ、ブック〇フだ」「Tセンターに……」「…?―――!」「――!………」
 ずっと続く適当な会話……
 そしてバスの車内に地獄のアナウンスが響く。
「次は終点T車庫前。終点T車庫前。」
「「ええっ!?Tセンターは!?」」
 2人同時に叫ぶ。
香奈「え、どうすんの?どうすんの?なんでなんで?」
ナツ「え、え、えーと……あ、そういえば8番乗り場に来るバスは他にも4台ぐらいあって……確かTセンターに行くのは1台だけだったような……」
香奈「もっと早く言えー!!」
 バス車内を香奈の控えめだけど悲痛且つもっともな叫び声がぬけていく。
 そして成す術もなくT車庫に到着。とりあえず運転席へ。
ナツ「あの〜このバスってTセンター行かないんですか?」
「え?何?君らTセンター行きたかったの?ダメだよ〜ちゃんと行き先みなきゃ」
「「は〜い」」
「対向車線側にあるバス停に来るバスに乗るとTセンター行けるから、そっちに行きな。あっ、お代はいいよ。おまけだおまけ。」
 なんて気前のいい人だろう……この御恩は(多分)一生忘れません。
「「ありがとうございます!!」」
 頭を下げながらバスから降り、対向車線に目を向けると、確かにバス停がある。向こうのバス停まで直で行ける横断歩道がなかったので、少し大回りをして道路をわたった。
ナツ「今何時?」
香奈「えーとね、3時46分」
ナツ「夜?」
香奈「今が夜に見える?」
ナツ「ううん、見えない」
香奈「だよね。ナツの頭元々おかしかったけど、いよいよダメかとおもった」
 さらりと言われた香奈の毒舌を無視して、時刻表を指でたどっていく。
ナツ「あった、次のバス来るの4時半だって」
香奈「え゙……」
「「どうする?」」
ナツ「そういえば、さっきブック〇フあったよね?確かあそこのタダバスTセンター経由するよ」
香奈「んじゃそれで行こっか?」
ナツ「ウィ。じゃあ戻ろう。」
 そして2人はワニャワニャと、くっちゃべりながらブック〇フへと歩く。さらなる災難が待っているとも知らずに……
 ブック〇フ着。
 その店舗は比較的大きく、1フロアだけで、その辺のコンビニが20個程おさまるぐらいの広さがある。それが4階あり、全部がブック〇フなのだ。それだけ大きいと利用者も多く、Tセンター駅とN駅と某書店、ブック〇フの間を無料のシャトルバスが通っている。ナツと香奈はそのバスを使ってTセンターまで行こうとしているのだ。
 バスの時刻表を見上げた。
香奈「今何時?」
ナツ「4時」
香奈「次のバス4時半までないよ……どうする?」
ナツ「え〜そんなぁ〜なんでこんな運悪いの〜……じゃあ仕方ないからN駅まで歩く?」
香奈「いいけど無事Tセンターにたどり着いたとしても5時には向こうを出なくちゃだよ?」
ナツ「……じゃあ走る!!」
 もうヤケだ。走るのと歩くのでどのぐらいの違いがあるのかはわからないけど、やるしかない。
香奈「あい、わかった」
 2人がブック〇フをでて走ろうとした時だった。ナツ「バスだ!!」
香奈「ホントだ!!」
 ブック○フのタダバスが今、まさにブック〇フに入ろうとしていたのである。時刻表を完全に無視している。2人はもう一度ブック〇フ戻り、バスからお客さんがおりてくるのを待った。
 お客さんがおりきったところで、ナツはステップを半分だけ登り、バス車内に身を乗り出した。
ナツ「おじさん、このバス何分に出ますか?」
「ん?少し時間あけて、4時20分に出るよ」
ナツ「わかりました、ありがとうございます」
 どうやらダイヤがかなり早くまわっているらしい。
ナツ「20分まで待てないよな……走ろう」
香奈「了解」
 2人はブック〇フを出て走り出した。
 走ってる途中で香奈が言う。
香奈「ナツの夢さぁ〜正夢になってない?」
ナツ「え?みそ汁?」
香奈「130キロメートル走るんでしょ?」
ナツ「あ゙あ゙!!そうか!!」
香奈「うわーなんでそんな夢見たんだよ〜」
ナツ「だって『悪い夢は人に話すと現実にならない』ってクロちゃんが言ってたんだよ〜」
香奈「うわ〜ガセだ。おもいっきりなってるよ現実に……」
ナツ「そんなことないよ〜まだみそ汁が登場してないよ〜」
香奈「あ〜このまま130キロメートル走るのか〜」
ナツ「少なくともN駅まで1.3キロメートルはあるな……」
香奈「もーヤダ〜」
 走っていて息もあがっているので叫ぶような会話になっている。(この後、地図をみたらブック〇フとN駅は2キロ以上離れていた。でも起伏が激しいので体感距離はもっとあるだろう。)
 しゃべりながら(叫びながら。まわりはさぞ迷惑だったことだろう。)走って走って……そしてついに……


   道に迷った。


香奈「ここどこ?」
ナツ「さぁ?」
香奈「駅はどっち?」
ナツ「うーん……あっち?」
 ナツは地面を指差す。
香奈「地面の中に駅があるの?この辺は地下鉄なんてオシャレなものは通ってないよ?」
ナツ「だろうね……」
 2人でキョロキョロあたりを見回していると、ふいに声がかかった。
「駅ならあっちよ。おいで」
 声の主は知らないおばちゃんだった。
「「あ、ありがとうごさいます!!」」
 天の助け……普通のおばちゃんから後光が差しているようにみえた。
 おばちゃんの後ろを、「誰のせいで道に迷ったとおもってる!!」「お前だ!!」「お前がみそ汁が走る夢なんて見るからだ!!」「そもそもSヶ丘でバスを見ないのが悪いんだ!!」「それはお前もだろ!!」「〜!!」「!――!!」「〜!!〜!――!〜!!」「!!」と、ギャンギャン騒ぎながら歩いて行くと、見なれたタクシー乗り場とバス乗り場が……
「じゃあ、あのタクシーがたくさん溜まってる辺りが駅だからね。バイバイ」
「「はい、ありがとうございました!!」」
 2人そろえて礼を言い、駅に向かって最後の坂道をどちらからともなく、走り出す。
 N駅着4時20分。
香奈「あ、あのバスTセンター行くって!」
 香奈がバス停にいた1台のバスを指差して言う。だがナツは
ナツ「もう乗らない!!もう懲りた!!バスなんか乗るもんか!!」
 と、切り捨てた。
 N駅からTセンターまでは、電車で1駅。2分もかからない。乗る電車を間違えることもない。
 Tセンター駅着。4時半少し前。
 言いようもない、達成感と安堵感、冒険が終わってしまう名残惜しい気持ちと『勉強もせずに何やってんだ』という自嘲。色んな気持ちが渦巻いている。
ナツ「はぁ〜香奈の誕生日プレゼントも買ったし、とくに望んだわけじゃなかったけど冒険もしたし、よかったね」
香奈「そうだね〜……そういえば、ブック〇フのバスって4時20分に出るって言ってたよね?そのバスに乗れば4時半までにTセンターに着いたんじゃない?お金も一番最初にSヶ丘に行った時のバス代と今いるTセンターから、ナツの場合N駅に帰るまでの電車代だけですんだよね?こんなに疲れることもなかっただろうし……」
ナツ「……」
 言われてみれば確かにその通りだ。ナツたちが通ったルートは〈@ブック〇フA徒歩でN駅B電車でTセンター駅〉だ。でも、もしブック〇フでタダバスに乗っていたらAをすっ飛ばすことができる。出発まで20分間待たなきゃいけないけど、そこはブック〇フだ。漫画でもなんでも読んでいれば暇することはまずないだろう。それにAからBの時にかかった電車代もない。
ナツ「……」
 もはや後の祭だ。
 ポンッ
 香奈がナツの右肩に手を置いた。ナツも香奈の右肩に手を置く。そして2人で声をそろえた

「ドンマイ……」

たった一言だったけど、色々な意味を含んでいた。

 テクテク歩く。家に向かって……

ナツ
2011年03月02日(水) 17時09分35秒 公開
■この作品の著作権はナツさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
一作目とかなり間があいてしまいました。
今回の話は一応私の体験談です。
文章の中で読みにくかった、もしくは分かりにくかった、というところを教えてください。お願いします。

この作品の感想をお寄せください。
No.1  ひじりあや  評価:30点  ■2011-03-17 00:13  ID:ma1wuI1TGe2
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こんにちわ。大きな地震がありましたが大丈夫ですか?

読みにくいと言ったら全体的に読みにくいです。ただ、これは普通に本を読んでいけば解消されるはずなので、ひとまず本を読みましょう。

実話というだけあって、わたしには書けないだろうリアルなところがあって、それはいいなと思いました。

たとえば。
>2時間目数学のテスト。どうか30点きりませんように。

>今回のプレゼントの予算は500円ほどだ。オーバーできるのは6円まで。

>その店舗は比較的大きく、1フロアだけで、その辺のコンビニが20個程おさまるぐらいの広さがある。それが4階あり、全部がブック〇フなのだ。

数学の点数やプレゼントの予算は怖いくらいなリアルさがありますし、ブックオフの説明が他の描写よりも多くなっているのは、おそらくそれが作者さんの等身大の世界だからなのでしょう。そういう箇所は真似したくても出来ないなと思います。

それと、地名をわざわざ伏せる必要はあるのかな、という疑問はあります。
TセンターやSヶ丘で場所はもう分かりますし、某ジブリアニメの舞台ですよね?
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