天狗と狸と、怠惰な偽神
 文字が紙面を躍るばかりでなんら内容の読めない本を閉じ、臆面もない欠伸を一つ吐く。
 真夏の昼下がり。
 無駄にやる気に充ちる太陽は、ぎらぎらにやけた俺様面をてらてらと輝かせ、誰からもありがたがられない過剰な熱量(あつくるしさ)を好き放題に放出、「どうだい、俺様、俺様、オレsummer」と馬鹿丸出しの高笑いで青すぎる青空に居座っている。
 あてがわれた棲処であるマンションの前に広がる小さな公園は、狭いながらも一面に芝が敷かれ、木陰を作る樹々がさわわと枝葉を広げ、わずかながら涼をほどこす。青々と茂るお気に入りの銀杏の木の下。朝からずっと手持ちぶさたに寝っ転がって欠伸をしている。三十四歳、無職ニートな暮らしはそう悪くない。
 寝っ転がる視線で見渡すと、芝生の翠がゆらゆらと揺らいで見える。眼を凝らせば、その中に裸で踊る小さな人々が視えるだろう。背中に丸い羽を生やし、極彩色のメイクに蔦の冠を被り、いかにも愉快だとばかりに踊り狂っている。地表の熱さは彼らの情熱によるものなのかもしれない。陽炎とはこういうものか。
 いつもなら纏わり付いてくる犬っころも、だらりと頭を垂れ、胃腸も吐き出すんじゃないかというくらいに舌をぶら下げ通り過ぎる。ちらりと覗き込むように眼が合ったが、これまでの交流などなかったのごとく素知らぬ顔で通り過ぎていく。かまいはすれど何もやる物を持たないオレを見限っているのだろう。なれば、おそらく人より犬の方が賢い。求めなければ絶望もない。絶望は、人のものだ。求めすぎる報いとしてそれはある。
 嘆息して見上げれば、空。空の先には宙(そら)。空は青い。が、青すぎて薄っぺらい。この蒼は偽りの蒼。仮初めであり借り物。この厭味なほど青い空は、行き着く果てのない永遠、すなわち何ものをも許容し呑み込み圧し潰してしまう慈悲と慈愛である無限の闇を、儚いほどに安っぽい光の表層の奥に隠し、何気ない人の世に寄り添うありふれた日常を装って、最たる恐怖の贄に供する。
 太陽は我関せずとばかりに高笑いを響かせ、あたかも死者に鞭うつがごとく、生ける屍共に容赦ない熱波を浴びせ続けては、サディスティックな愉悦に浸っている。それすらも冷ややかな無限の闇の慈悲に逆らうには、あまりに細やかな駄々にすぎないとも知らずに。冷たい手がありもしない喉元を撫でている。盛る者にも終焉は訪れる。何人に例外はない。太陽の高笑いにも哀愁が滲む。
 終わらぬものはない。
 いつ終わるかというだけのことだ。
 それすらも、ありふれた日常。
 現実と妄想の狭間。重なり合う、現世と虚世。見えぬ者には視えず、感じぬ者には感じない二つの世界の重なり。しかして、それこそが偽りのない日常。少なくとも、オレにとっての。
 などとうつらうつらと考えるものの、実のところ、強烈に暑いという不快はさほど感じてはいない。暑いことは知っているし、感じてもいる。ただ危機的状況に陥らない限り過剰な不快感は働かない。そういうふうにできている。そういうふうに作られたからだ。作られた体質としては、例外的に悪くないものの一つではある。朝から木陰に身を横たえ、ひたすら怠惰に浸っていられるのもそのおかげかも知れない。普通なら精神的に干涸らびている。
 何気なく、閉じた本をもう一度開いてみる。やはり文字は読めない。別に文盲であるわけではない。いくら学校教育を受けたことがないとはいえ、それはない。文字が文字としてそこにじっとしていてくれれば読める。
 文字は躍る。いつものことだ。文字でできた人影が、冒険譚やメロドラマをぎこちない仕草で演じるのを辟易としながら眺める。内容など頭に入るものではない。それでも幾らかは推測できないでもなかったが。
 存外に涼やかな風が一陣吹き抜ける。
 ふと気が付くと傍らに若い女が寄り添うように座っている。風変わりな独特の衣装。良くは知らないが、西洋の、中世あたりの時代になら普通にいそうな。つまりはファンタジーな感じのそれだ。容姿ははっきりしないが、美女であるという設定は知っている。
 風の吹くままに囁きかける。
「愛しい人を待つのに疲れたのかい」
 幼さを残す素朴な美貌がそっと揺らぐ。はにかんでいるのか、泣きそうなのか、小さな微笑み。その意味のにわかに判断が付かない。哀しい笑顔。そういうものもあるのかもしれない。
 女が口を開いた。何かを語ろうとして……
 風が、木の葉を揺らす。
 幻視像(ヴィジヨン)は消えていた。本の中の物語りに還ったのだろう。あの表情の意味を、未だ掴みかねている。ああいう微笑みをいつか見たような気がする。
 過去は彼方。記憶は記録とは程遠い。彩を失い、像をぼやかせ、曖昧で朦朧として、何もかもがはっきりとしない。雑音(ノイズ)まみれだったり、細切れの断片だったり、深い霧が掛かっていて、現在との繋がりを明らかにはしてくれない。過去はだから存在そのものが不確かで、今以前は本当に存在したのか確固とした自信が持てない。けれど、信じたい。いつかどこか、この頭の奥底に眠る記憶にはあるのだろう時の彼方。戻ることのない。そんな時のあったことを。
 センチメンタルはあの微笑みのせいだろうか。たまには悪くない。しばしばだと疲れてしまうが。
 どのくらいここにいたろうか。
 こうして時間だけが過ぎていく。支離滅裂な思考の濁流にさ迷うばかり。何事も無く。穏やかに。緩やかに。退屈は友。無二の親友。もはや消化試合であるオレの人世には。事なかれ。何事も起こらなければそれで良い。
 そろそろウチに戻ろうかと思い始めた頃、思いがけず人に声を掛けられた。
 驚いた。他人に声を掛けられる故も義理もない――はずなのだが。
「折科春臣様でいらっしゃいますか」
 慇懃というのはこういう態度をいうのだろう。だがしかし、その後に無礼という言葉が付く。
 無理に意識して厳めしい表情(つら)を作っていることが一目で丸分かりな、良く言えば己の立場に素直な、悪く言えば単純で権威主義でいけ好かないオヤヂが、存在の卑しさを隠そうともせずふんぞり返って立っている。その鷹揚な態度は、おそらくなら実直で誠実な老紳士を気取っているつもりなのだろう。見た目だけならそうとも見えなくはない。だが、吐く息、言葉、眼の色、動き、その全てに品がなく、下劣で、どこか獣じみている。
 狸、か。
 腹の辺りから涌き出た黒い獣が上体を取り巻き、首の横からにたりと厭らしい笑みをこぼしている。今この瞬間、オレへの嫌悪と、どうやって利用してやろうかという打算が欲ボケの眼の中でチカチカとスクロールしているのが見て取れる。計算高い狸。素知らぬ顔で従順に尻尾を振りながら、腹の中では、金、名誉、女、己の欲望を果たすための算段がぐじゅぐじゅと腐臭を放っている。
 溜息が出る。
「誰だい、あんた」
 呼ばれた名はあっている。まさしくオレの名だ。どこにでもある名ではないから人違いではないのだろう。
 負けじと厳めしく居丈高な面をしてやろうかと思ったが、はて、どうすれば良いのか思いつかず、面倒になってやめた。欠伸を噛み殺し損ねた気抜けた面で仰ぎ見る。わざわざ立ち上がってやる気にもならない。
 面倒だ、いっそ、消すか。
「私、こういう者でございます」
 差し出された名刺にちらりとだけ目を向ける。受け取る意思はない。必要も感じない。手を動かすのも面倒臭い。が、結局はちらりとでも見てしまった。
 途端に文字が躍り出す。
 文字というのは何ゆえ躍りたがるのか、さっぱり理解できない。できるヤツもいまい。読ませる気がないのか、読む気がないのか。多分後者なのだろう。文字共の猿芝居を観察、解読を試みるに、おそらくこの男の職業は――、足軽……? いや、足軽てなんだ。自分の直感が空恐ろしくなる。
「私、綾瀬原家の執事をしております管谷と申します」
 一人脳内遊戯を軽く流され、少しばかり憤りを感じる。もっとも、反応されても大いに戸惑うところなのだが。
「足軽ではなかったのか」
「は?」
「いや、独り言」
「綾瀬原家の執事として、ご令嬢佳代乃様の使いとして参りました」
「左様か、大儀である」
 鷹揚に返してやると、一瞬驚いた後、馬鹿にされた怒りを出すまいと顔を強ばらせる。なかなか面白い。やはり執事などというもったいぶった肩書きの似合う男ではない。足軽くらいがちょうど良かろう。狸の足軽とは滑稽だが、狸の執事よりよほどまし。今日から肩書きを足軽に正せば良い。そう忠告してやろうと思ったが、やめた。善意が必ずしも善意として受け取られるとは限らない。逆ギレされてはたまらない。この男を矯正する義理も必要もオレにはない。
 それにしても、綾瀬原とはまた……。この狸が狸の分際で鷹揚にふんぞり返っているのもむべならざるかな。
 この桐篠田の土地には「御料主様」、あるいは「裏帝(うらみかど)」と呼ばれ、実質的支配者とされる者が確かにいる。その血脈は脈々と、千年も前から受け継がれ現代に至る。尊称の示すとおり天皇家に連なる古い血筋で、天皇家の御料地である桐篠田の地を支配してきた。当然その外縁には有象無象の人々が群れ集まる。その内でも血縁のある家筋の者が桐篠田での支配階層だと見なされている。
 綾瀬原家もその一角であり、殿様家の分家の分家として、また、桐篠田市下で複数の企業をまとめる事業家一家として、市下のみならず全国でも有数の資産化として権勢を誇る。
 要するに、関わり合いになりたくない人種の最たるものだということだ。
「車でお嬢様がお待ちでございます」
 お嬢様自らご足労とは、いやはや、
「面倒臭ぇな」
 思わず本音が漏れる。
 狸執事のこめかみがぴくりと震えた。
「車でお嬢様がお待ちでございます」
 いよいよ苛ついてきたのか、強い視線で睨み付け、有無を言わせぬ口調で言ったつもりなのだろう。が、まさしくどうでも良い。腹黒狸に睨められたところで、悪ガキのたかり文句ほどの迫力も感じない。
 やれやれ。
 噛み殺す意思もない欠伸が盛大に漏れた。
 さて、どうやって追い返したものか。方法はいくらでもある。が、こんなヤツのために凝った手を使うのも面倒臭い。指先一本動かすのも面倒臭い。いっそ、消すか。それが一番手っ取り早く面倒がない。塵一つ残らぬように全ての細胞を原子レベルに分解してしまえば良い。簡単なことだ。ただ、「消えろ」と言えば良い。少しばかり強めの意思を込めて。この世の理を少しばかり捩じ曲げて揺り動かす程度の。オレならば容易い。そういうふうになってしまったから。十四年前、あの時以来。綾瀬原の家は訝しむかも知れないが、証拠は何も残らない。それにこの程度の男なら、使い捨ての駒、いやそれ以下の扱いに過ぎないだろう。あるいは探されすらしないかも知れない。そう考えると、この男も哀れなものだ。
 少しばかり呼吸を整え、意識を集中しようとする――
 と、
 そこに、
 頭上から哀れむように覗き込む、脳が痺れるほどの美少女の姿。
 全ての風景が一瞬の間もなく消失する。
 世界にはオレと彼女だけ。それ以外は皆無。ただ二人だけのために世界がある。
 静謐。
 嘲るような瞳がオレを見ている。
 刹那、眼が合いそうになって思わず仰け反る。思いも寄らない狼狽に、一瞬、我を忘れそうになる。「いつの間に」という疑問に意味はない。彼女は、彼女がその時そこにいたいと思うところにいる。
「相変わらず無為に時を持て余し生きておるようだのう。いやさ、その様子では生きながら死んでおると自覚しておるのだろう。哀れなものじゃな」
 その美しさはとても人の体現し得るものとは思えない。事実、人ではない。「女天帝」。この世と二重写しの別次元である虚世(うつろよ)に棲まう妖異共の親玉。十四年前のあの時、絶界である異世(ことよ)から抜け出て唯一人現世(うつつよ)に実体として降臨した稀神(まれがみ)。異世に乗り込んだ四千人からなる魔術師部隊を数瞬で全滅させた八柱の神の一。オレの親友を屠り、オレ一人を現世に連れ戻し、絶界の解れを閉じることと引き替えに現世に留まった。真の名は知らない。知る者もないだろう。現世に来てから「女天帝」と名乗った。その名は、彼女に余りにも相応しい。
「なぜ――」ここに? と問い掛けて呑み込む。聞いたところで碌でもないことに違いない。最終的に丸め込まれるにしても、こちらから振ってやる必要はない。
 代わりに、
「なぜ、そんな格好をしている?」
 と聞いてみた。確か前に会った時は人で言えば三十代半頃の脂の乗った艶然たる美女の姿だった。男ならば誰でも、喩え精通前の少年であろうと、筋金入りのロリコンだろうと、なんとなればEDの老人だろうと、一目見た瞬間即座に絶頂勃起、果てしなく精を吐き出し続けるだろうほどの。今は、十歳くらいの幼女と言っても良い年頃に見える。としても、その輝くほどの美貌は尋常ではないのだが。無論、神である彼女に姿などさほど意味のあるものではないのだろうが、それにしたところで……
「そなた、見目麗しき女子(おなご)とあらば誰構わず手込めにし孕ませておるそうじゃな。そなたが妙な気を起こさぬようにと妾なりの配慮じゃ」
 真剣に言っている……のだろう。人を鬼畜色情狂のように。確かにそんな時期もあるにはあったが、いったい、いつの話しだ。
 わざとらしく嘆息してみせる。
 もう十年も前の話だ。それに、女を孕ませるようなへまはしない。そのくらいのコントロール法は心得ている。隠し子にも水子にも一切無縁だ。
「それともそなた、このような姿の女子ににまで欲情するのかえ」
 十歳の女天帝がわざとらしく科を作ってみせる。もう勘弁してくれ。
「オレはもう枯れ果てたよ。絞りかすの一滴も残っていない」
 そしてロリでもない。
「つまらん男じゃな、凌禾春臣よ」
 心底見下した眼でオレを見るな。そして、つまらん言うな。
「そなた、綾瀬原佳代乃に会え」
 随分、話が飛んだな。
「誰だ、それは」
「そこな狸が申しておったろう」
 女天帝が足元の遙か下を指さす。硬直した狸執事の姿。なるほど、ここは銀杏の樹の中なのか。どうりで翠の光が眩いと思った。
「綾瀬原家のご令嬢とやらか。あんたとそのご令嬢にどんな縁が?」
「そんなものはない。ただ、そたなには枯れたものを再び潤して貰わねばならん。今のままでは使い物にならぬからな」
「なぜ」
 してやったりというばかりに女天帝の口の端が持ち上がる。結局、巧く誘導されたか。
「なに、もうすぐ人の世に運命の岐路が訪れる。そういう話しじゃ」
「聞きたくないな」
「じゃが、そうもいかん。そなたとそなたの太刀が一つの切り札じゃからな。あヤツらの侵入を許せばこの世の道理は、そなたらが身近に感じておる日常の風景、宇宙の法則といった根本的な有り様まで書き替えられてしまおう」
「それは、今よりむしろハッピーなことになったりはしないのか」
「あり得んな。あヤツらは身勝手じゃからな」
 あんたもその一人だろう――とは言えなかった。言えば確実にただでは済まない。
「で、どうしろと」
「好きにせよ。此度のことは切欠に過ぎん。枯れてしまったそなたを復活させる。あの娘はその契機として好ましい素養をもっておる。そなたもきっと気に入ろうぞ」
「素養?」
「未だ学生の身ではあるが、なかなかのものじゃ」
 答えになっていない。
「大学生か?」
「高校生じゃ」
 ……、て、おい、
「オレはロリじゃない」
 節操のない時代も確かにあったが、さすがに女子高生相手にたぎるようなことはなかった。どちらかというと年増好みな方だ。
「分からぬぞ、近頃の娘は早熟じゃからな。ま、会うてみることじゃ」
 ふん。しかし、未成年との淫行を勧める神というのもな。
「ふふぅん、妾は寛容にして理解ある神なのじゃ」
 ああ、さいでっか。
「では、ゆめ忘れるでないぞ」
 果たして神との謁見は、時にしてほんの数秒のことだった。
 視界が戻る。
 熱波や騒音も。さほど気にならなかったものが、静謐から戻ってみるとこうも気に障るものかと驚く。気に障ると言えば、オレを見下ろす狸執事が唖然として立ち尽くしている。その姿がなんとも滑稽にして珍妙だ。威厳も居丈高さもどこへやらだ。数秒のこととはいえ、目の前にいたはずのオレが前触れもなく消えたのだから驚きもしようが。
 もっとも、そんなことも桐篠田市では珍しいことではなくなってきてはいる。十四年前からこっち、妖異が日常に侵食し、日常と非日常の境界が曖昧になり、妖異のあることが日常になりつつある。好ましいことではないが、おそらくは誰にも止められまい。あの女天帝にすら。
 それにしても、どっと疲れた。本気で肩で息を吐く。どうにも女天帝の前では冷静でいられないらしい。それも無理ならざるところではあるのだろう。親友(とも)の仇で、命の恩人。そして人類の救済者でもある。最後のはたいしてどうでも良いのだが、それにしたところで、実に複雑なところだ。
「今、どこに……」
 半ば茫然としたままの狸執事が問うてくる。が、何とも答えようがない。事実としては今まさに人生の終焉を迎えようとしていたところを女天帝の来訪によって救われたのだが、本人がそれに気付くよしもなく。
 ま、いいさ。
「さて、行こうか」
 のっそりと大儀そうに立ち上がる。
「お嬢様がお待ちかねなんだろう?」

 木陰から抜け出ると、途端に光の突きさす刃が容赦ない。焼き付くほどに輝く白い翼、「我、正義なり」と宣言して苛烈な天使たちの大群が降り注いでくる。相手が「正義である絶対性」であるだけに、突き刺さるし、痛い。次から次へと無言で降り注いでくる。なんたる暑苦しさか。こちらも闇の大群を創って応戦しようとするが、狸執事の視線を受けて止めておいた。
 で、公園の入り口に横付けされたてらてらと光る黒くてゴッツイ固まりに案内される。見ようによっては物騒なほどの威圧感。タキシードをまとった猪、いや牡牛か。ぶるぶると興奮に息巻いている。黒塗りのリムジンなど庶民にとっては今だ大いなる脅威であるし、なんというか居丈高で、傲岸で、不遜で、けったくそが悪い。こんなもので街中を走ろうというのだから、金持ち連中の気が知れない。
 咳払いしつつ狸執事が後部座席のドアを開けて促す。ここは本来お前などが入れるところではないと目が言っている。余計なお世話だ。
「およびだてするようなことをして申し訳ありません。非礼のほど、どうかお許しください」
 乗り込む前に、車内からぺこりと頭を下げられた。
 実際、どんな傲慢不遜な高飛車女が出てくるのかと構えてみれば、意外に普通で拍子抜けする。お嬢様という人種への認識を改めた方が良いのかも知れない。
 容姿はよく整っている。美形と言って良い。黒髪を後ろで結わえ自然にカールさせている。顎筋は凛々しく、涼しげに透き通った大きな瞳はわずか紺色掛かって神秘的にも見えるが、飾り気のない眼鏡がややきつい印象を与える。全体に無駄な派手さはない。着ている物も学校指定の制服だろう、飾り気がないどころか地味ですらある。アクセサリーの一つも付けていないのには、本当に今時の女子高生かとむしろ訝ってしまう。髪を留める藍色のリボンだけが女の子らしさを象徴している。
 勧められるまま遠慮なく隣に腰掛ける。身体の沈むこと。さすが大したものだ。
「本来なら連絡をしてこちらからお伺いするのが筋なのですが、紹介してくださった方が、連絡しても無駄だからこうするようにと仰ったので……」
 心底申し訳なさそうに言い淀みつつ頭を下げられると、なるほど、一つ一つの所作に品があり、躾の行き届いたことを思わせる。性格も歪んではいなさそうだ。今のところは、だが。
「構わない、気にしていないよ」
「そう言って頂けると……」
 まぁ、女天帝に言われなければどんなアプローチを取ったにしても会うつもりなどなかったのだから同じことだ。
「ところで、キミは垂霧高校の生徒なのか」
「えぇ、そうです」
「なるほど、紀香さんなら言いそうなことだな」
「理事長をご存じなんですか」
「他にオレを他人に紹介しそうな心当たりがない」
 くすりと咲う頬にえくぼができる。
「聞いてた感じの通りの方ですね」
「どうせろくなことではないだろうから聞かずにおこう」
 彼女がくすくすとおかしそうに咲う。まぁ、こういう咲い方をされる分にはそう悪い感じは受けない。
 オレの周りにいる女は、女天帝しかり、遠縁に当たる垂霧高校理事長白澤樹紀香しかり、どうもオレのことを大層なろくでなしだと思い込んでいる節がある。ひどい話しだ。オレにだって良いところはある、はずだ。確かに正面切って論破できるほどの確証というか確信はない。多少たがの外れていた時期もあった。今もって自堕落ではある。ろくでなしで人でなしだという自覚もないではない。が、他人様からそう喧伝されると気分は良くない。自業自得だと言われればそれまでなのだが。
 まぁ、いいさ。
 車が走り出す。気にしていなければそれと気付かないほど静かな走り出し。ただの牡牛ではない、洗練された牡牛だ。
「あの……」
 じっと瞳を観て詰め寄られると、ここ数年来引きこもっていたせいもあって、柄にもなく少しどきりとする。特にこの娘の瞳は大きくきらきらと澄んで、控えめに伏せたりするものの、純粋な好奇心を隠そうともしない。「お願いしたいことがあるんですが」
「痴情のもつれとか?」
 最近の高校生は早熟だそうだからな。オレなんかが大人になってから味わったどろどろとした世界をすでに経験しているのかも知れない――、と鎌を掛けてみた。それ自体に大した意味はない。
「そ、そんなわけありません」
「本当に?」
「本当です!」
「キミほどの美人なら言い寄ってくる男は少なくないだろう? キミとしては選り取り見取りだ。キミにその気がなくとも、男の方で勝手に取り合いを演じる。キミの家の家格なら、地位の高い者も多だろう。ことによっては大きなトラブルにもなりかねない。お嬢様らしい悩みだ。男を手玉にとって、楽しんでるんじゃないのか?」
 一気に畳み掛ける。ま、的外れではあっても、まるで心当たらないわけではないだろう。具体的にそういう経験はなくとも、そういう可能性の危惧がないわけがない。それが良家のお嬢様の宿命であるのなら。
 しかし、即答だった。
「そういう言い方はないんじゃないですか」
 眼鏡越しに強い視線で見詰めてくる。ひそめた眉筋の凛としたラインがどこか大人びて魅惑的ですらある。
「モテるのは本当だろう?」
「そんなこと……」
 一方で、ぷぅっと子供のように頬を膨らませたりもする。可愛らしくておかしいくらいだ。大人と子供の境界にいるのだなと妙な感心をする。
「キミがモテないはずはない」
 頬を真っ赤に染めて俯いてしまった。
 なんという……。今までにこの感情はなんと表現したものか。愛らしい。愛くるしい。愛おしい。守ってやりたいという強い欲求と同時に、どうしようもなく壊していまいたくもなる。からかいたくて、苛めたくて、身体の奥底からじりじりと、うずうずと、久しぶりに、本当に久しぶりに、ほんの少しだけ心が浮き立つ感覚を味わう。蕩けるような甘みの中、ほどよい酸味とわずかな苦みを忍ばせている。なるほど、女天帝が引き合わせようとする理由が分かった気がする。
 顎の先に指を当てる。
 緊張にか、身を固くするのが伝わる。
 構わず顎のラインに指を這わせると、ぴくりと反応して身を反らせようとしながら頬を薄く染める初々しさなど。何をか感じているのか、唇の端が小さく震えている。
 絞り出す声は、本人が思うよりはきっとか細く震えていただろう。
「ふざけないでください。許しませんよ」
「許さなければ、どうする?」
「人を……」
 言葉の尻が途切れて消える。
 見渡せど、何もない。荒野の只中に車の後部シートがある。そこに掛ける二人。オレと彼女。
「ここは……」
「さて、どこだろう。特に想定はしていないが、どこだと思う?」
「分かりません」
「なら、どこでも良いさ。この世のどこかだ」
「そんな……」
 突如放り出された見知らぬ場所で、見知らぬ男と二人きり。相当に異常な状況だ。パニックに陥っても不思議ではない。そのわりには取り乱すこともなく、彼女は随分と落ち着いていた。緊張はしているだろうが、怖れているようでもなく、怯えているようでもない。ふむ。つまらん。
「キミとしては貞操の危機だが、さて、どうするね?」
 もっと脅すように身体を寄せて、威圧的に詰め寄っても良いのだが、苛めたいという欲求はあっても、傷つけたいとは思えなかった。不思議なことだが、自分の中で微妙な駆け引きがなされている。黒いオレと白いオレが言い争うような、なんだか奇妙な感覚だった。
「無理矢理にわたしを辱め、綾瀬原を貶めようとなさるなら、わたしは、綾瀬原家の子女として自ら生命を断ちます」
 じっと瞳を観る。互いに。探るように。牽制しあうように。信じ合うように。
 彼女の心づもりとしては、おそらく本気とはったりが半々。いや、本気の方がやや圧しているか。子供らしさは影を潜め、女としての尊厳を貫く強さが前面に出て、毅然とした態度を取らせる。
「キミは、よく育てられているね」
 ふと身を離すと、ふかふかに弾力のあるシートに座り直す。
 そして、指を一つ鳴らす。
「あ」
 元のリムジンの中。オレ達は元々どこにも移動していない。当たり前だ、テレポートなんてひどく疲れることを好んでオレがするわけがない。しかも、あれは女天帝の部下やら政府機関、凌禾の連中なんかにあれやこれやひどく詮索される。あの詮議はたまらん。拷問だ。養われている身としては、大人しく身を潜めているのが一番良い。
「久しぶりの依頼でね。実はあまり気乗りがしていなかった。だから、悪いとは思ったけど試させて貰った。キミがオレの怠惰を破るのに相応しいかどうか」
「そう、なんですか」
 釈然としない様子でオレを見る。疑いの眼差しはそうすぐには晴れない。
「キミも見ていただろう。十年もああやって何もせず怠惰を貪ってきたのだからね。新たに何かせよと言われてもね、おいそれと気持ちが動かなくてね」
「十年も……」
 キミの人世の半分以上だよ。
「色々あってね。それが一番収まりが良いと思ったんだ。自分に対しても、周囲に対しても、ね」
 その収まりの良いはずの怠惰を破れと女天帝が言った。その切欠にこの娘が良いとも。確かに、そうなのかもしれない。そんなことを思い始めている。
「キミは良く育てられている。そしてキミ自身、良く育った」
「そんなこと……」
「でも、もう少し、素直になった方が良い」
「素直に……?」
「そう、素直に。感じるがまま。心のおもむくままに」
 再び身体を寄せる。さっきとは違って脅すような素振りは見せず、自然に優しく、そうすることがごく当たり前のことであるかのように。
「キミの好奇心ははち切れんばかりだ、だろ?」
「好奇心……?」
「瞳を、観て」
 顎先に指を添えそっと持ち上げる。
 瞳があう。
「言葉なんていらないだろう。今キミは何を想う? 何を感じる? オレは何を感じている? 分かるかい? 感じてごらん。キミのことを。オレのことを。キミが何を欲しているのか。オレが何を望んでいるのか」
 少しずつ、顔を近付けていく。
 彼女の瞳がオレを見ている。オレの中のオレを覗き込んでいる。同様にオレも、彼女の瞳から彼女の中の彼女を見詰める。そして彼女はオレを通して彼女自身を視ている。怖れ怯えながら、欲し求めている自分に気付く。自分の中にある求め求められたいという抗いがたい欲求。その先にある彼女にとって未知である境地への好奇心。
 心に火が灯る。
 はぁと息を吐く。熱を帯びた溜息。
 視線が刹那さ迷い、焦点を失っていく。
 とろりと、蕩けるように。
 無意識にだろう唇が開いて、そこから吐き出される熱い吐息。
 頬が上気がしてほんのり赤く染まる。
「何も言わなくて良い。感じるままに身を任せて」
 彼女の方からも顔を寄せてくる。
 鼻先が擦れるほどの。
 頬が触れ合うほどの。
「眼は閉じなくて良い。瞳を観て」
 見つめ合ったまま、唇の先と先が、ほんの少し触れ合う。
 彼女の腰に手を回す。
 ゆっくり引き寄せる。
 一度離した唇を再び、優しく触れた後、今度は大胆に重ね合わせる。開いた唇から舌先を滑り込ませる。恥じらう舌の上面に重ね、すぼめた先で刺激する。歯の裏、舌の裏、なぞるうちに舌と舌が絡まり合い、
 ちゅぱ
 ――という湿った音。
 くちゅくちゅ
 ――という。
 あぁ
 ――と彼女が哭く。女の声で。
 蕩けた表情のまま夢中で舌を絡め合わせ、唾液を絡ませ、
 ぴちゃぴちゃ――と、
 はぁはぁ――と、
 温かい。
 熱い。
 舌先をそっと放すと、互いの唾液が糸を引いて未練を残す。
 ぼうっと放心した彼女を、こちらも浮き立つ心を静めつつ見守る。
「どうだい、そんなに厭がるようなことでもないだろう」
 深い息を何度か吐いて気を落ち着かせた彼女は、照れてるように、少し怒ったようにそっぽを向いた。
「誰とでもするようなことじゃありません」
「お気に召さなかったかい?」
「……、こんなの、こんなこと、こんな……」
「もう一度、する?」
 頬に手を当てこちらを向かせる。
 恥じらいに顔を背けようとするのを許さず、瞳で問い掛ける。
「もう一度、だけ、なら……」
「分かった。もう一度だけ」
 唇の先を合わせ、すぐに放す。
「やめる?」
「もう少しだけなら……」
 さらにきつく彼女を抱き締め、貪るように互いの口を舐め合った。
 たっぷり十分はそうしていただろうか。
 冷たく感じられないようゆっくり身を離す。
「キミはマゾヒストの素質がある」
 冗談めかせて。でも本気で。
「わ、わたしは、そんなこと……」
「この世で最も偉い神さまのお墨付きだから胸を張ると良い」
「何なんです、それ」
「気にしなくて良い。キミの素質はオレが引き出し開花させてあげるから」
「う、う……」
「今少し楽しみに思ったろう」
「そんなこと、ありません!」
 楽しいな。久々に、実に楽しい。オレに一般的な意味での青春期などはなかったが、きっとこんな風なのだろうなと想像させる。まぁ、この歳で青臭いことを言っても仕方がないが、やってることは充分厨二臭い。こういうのもまぁ、たまには良いさ。
「さて、自己紹介は済んだかな。オレはこういう人間だ。それでもまだ用があるというなら、明日、うちに来れば良い。マンションの七階。一層(ワンフロア)すべてだから間違うことはないだろう」
「今のが自己紹介なんですか!?」
「お互いの深いところまで知り合えたろう?」
 沈黙は了承と受け取る。
「引き受けてくださるということですか」
 遠慮がちに彼女が問うのに、
「そういうことだね」
「でもまだ……」
 依頼内容を言っていないというのだろうが、
「天狗だろ?」
「どうして……?」
「まぁ、色々ね」
 膝の辺りをちょこまか走る胴の長い小さな狐。こいつの姿はまだ彼女には見えていない。見かけはひょろこくて頼りないが、実際には実に優秀有能で、警戒心が強く身の回りにいれば索敵能力に長け、五感に鋭くどこにでも入り込み情報を収集してくる。そういうことだ。
「天狗には一人、心当たりがある。本物の天狗ではないが、天狗に近い人間だ。何か知っているかも知れない」
 ていうか、ほぼあいつの仕業で決まりだろう。
「さて、オレはこの辺で失礼するよ。長時間敷地を離れると、いちいちめくじらを立てる連中がいるんでね」
 快適な車内を出ると途端に熱波が襲いかかる。仰ぎ見ると厭味なほどの青空に、太陽が煌々と照り輝いてた。
 夏が始まっていた。

   *

 ……ということがあったのが昨日。
 早、一夜明け、知らぬ間に今日。
「怠い」
 誰に言うでもなく声が漏れる。
 昨日は少女、綾瀬原佳代乃の愛らしさに負けてつい引き受けると言ったものの、実際何かをしようとなると、実に面倒臭い。論理的に何かものを考えようとすることが、すでに面倒だ。なにしろこの十年、思考を放棄し、何も考えず、何もしない、何モノにも干渉しないという態度を固持してきた。
 オレは、あまりにも神聖視されすぎてしまった。それも無理ならざること。あの戦線――、絶界の向こう、誰も知らぬ異世に渡り、仲間が何もできずに屠られていくなか、あまつさえ神と呼ばれた異界の何モノとも知れぬ存在を殺し、ただ一人、帰還した。人類を救った英雄。現人の神。そうまで讃えられてしまうと何もできなくなる。そんなことを望んで、オレは絶海を渡ったわけではないというのに。
 泣き言だな。
 望まぬ怠惰とはいえ、十年もそれを続けると、慣れというのは怖ろしいもので、ひと度日常と化してしまうと、今度は逆にそこから抜け出すことが億劫になってしまう。何しろ時間は無限に近いだけあり、目的はすでに失われてしまっている。神という名を貼り付けられた抜け殻、いや、その名があるために抜け殻でいざるを得ない。
 そう、思っていたのだが。
 客どもがやって来たようだ。歓待してやるつもりなどないが、こちらから呼んだ建前、放っておくわけにもいくまい。
 やれやれ、面倒なことだ。

「というわけで、悪いのはすべてこの狸だ」
 集まるべきメンツが一堂に会した時、まるで真実を言い当てる探偵のように高らかに宣言してみた。
 しかし、それ自体に意味はない。
 真相はどうあれ、そう結論付けるつもりでいたからだ。この狸執事は佳代乃に相応しくない。
 憤慨したのは、名指しされた狸君だ。まぁ、それはそうだろう。何も根拠を示さぬまま、「というわけで」と結論付けられたのだから本人としては納得いくまい。本音のところはともかくとして。
 佳代乃は、どういうわけかオレの膝の上に座ってとろんとしている。どうも昨日のアレが中途半端に過ぎたようで、一晩悶々と眠れぬ夜を過ごしたようだ。思春期を少しなめていたのかもしれない。狸君は、どうやらそれも気に入らないらしい。オレに敵意剥き出しの視線を向けてくる。これについては、オレは知らん。
「えーと、僕らはまだ呼ばれた理由とか良く分かってないんですが」
 と言うのは咲友哉。自称天狗の成年。実際には天狗になり損ねた偽天狗。夜の巷、酒のあるところを渡り歩いて、芸を見せながらただ酒をせしめる。粋人ぶった遊び人だ。
 その隣にいるのが、咲の友人という少年。確か、野元之也といったか。あまりどうというぱっとした見栄えのない普通の少年だが、気が合うものか、咲はどうやら気に入っているらしい。
 その野元という少年は、さっきからしきりに佳代乃の様子を横目でうかがっている。一方、佳代乃はそんな野元の振る舞いに気付く風もない。
 たかだか五人の人間が集まっただけで、なかなかに面白い相関が出来上がっている。
「なに、簡単なことだ。天狗のニセモノは誰で、ニセモノの天狗を利用したのは誰かってことだ」
「天狗はそやつですぞ」
 突如気勢を上げたのは狸執事君だ。座っていたソファーを蹴倒すほどの勢いで立ち上がり、斜め対面に座っている咲を指さした。
 場が一瞬しんと静まり、オレを含めた、咲、野元の三人がやれやれといった白けムードに陥る。巷で咲が天狗と呼ばれていることなど、知る人ぞ知る、本人とて隠し立ても何もしていない周知のことなのだ。ことさらにこの場で言い立てるようなことではない。
 天狗のニセモノは咲。問題はそこではない。問題はもう一方、だれが偽の天狗を利用したか、だ。
「聞いておられますか、お嬢様」
 狸の問い掛けにも佳代乃の返事はない。とういか、反応一つないところをみると、耳にも入っていないのだろう。
「佳代乃、ともかく、そっちへ座りなさい」
 オレの言うのはどうやら聞こえるらしく、とろりとした瞳で状況を見渡すと、びくんと身体を爆ぜ、
「どうしてわたしこんなころに……」
 と慌ててオレの角を挟んで隣、管谷の横に座り直す。じろりとオレを睨むのは何か理由をオレになすりつけようとしてのことだろうが、
「オレは知らん」
 と一蹴する。こんなところとは言われようだな。もっとも、膝に載せて悪い気はしなかったが。
 で、お嬢様、こほん、とわざとらしい咳払いを一つ。すました顔で、
「それで、どういうことなの、管谷」
 とのたもうた。さすがは名家のお嬢様。咄嗟の状況の切り返しにも躾が届いている。
「お嬢様、天狗の正体は、そこにいる咲という青年です」
 繰り返す狸。
「それは承知しています」
 驚きもせず佳代乃が言った。オレや少年は知っているとして、お嬢様である佳代乃に面識でもあったのかと訝ると、
「昨日、春臣さんが天狗の仕業だろうと。そして今日、わたし達の他に二人が同席されていたからには、関係者と見るべきなのでしょう。野元君とはお会いしたこともありますが、おそらく天狗ではないだろうと思います。なんとなくですが。そうすると、残るはお一方。こちらの方が天狗で、ならばこそ、同席されているのではないかと考えるのは普通のことでしょう」
 論理的ではある。白紙の状態から真相を突き止めるような論理ではないが、今この状況を説明する、つまり、狸の言説をとりわけ驚くようなものではないと証明するに必要充分といえよう。多分。
 ついでに言えば、いつの間にか春臣さん扱いだが、悪い気はしない。オレも心の内では佳代乃と呼んでいたからおあいこか。
「まあ、そういうことだな」
 ちらりと咲を見る。
「天狗の正体がおまえであることは否定しないな」
「だから、もう少し状況を説明してくださいってば」
 じとっと咲を睨み付ける。面倒臭いことを言うヤツだな。
 視線にびくついて、しどろもどろに、
「いや、でも一応……」
「わたしから説明します」
 お嬢様はこういうとき毅然としていて、堂々と場を仕切ろうとしてくれるから助かる。さすがは生徒会副会長だ。
「そ、そんなこと教えました?」
「オレが知りたいと欲したことで知り得ないことなどないよ。特にこの街でなら」
 なにしろ神になり損ねた偽神だからな。~に次ぐ程度の権威と能力がある。
 余談を払うように、こほんと咳払いして、佳代乃が語る。
「始まりは三日前。公園での出来事でした」
「学園の対面にあるあのでっかい公園だね」
 咲が注釈を入れる。知っているなら説明の必要などあるまいに。
「そうです。そこでわたしは、テニスをしようという友人たちと待ち合わせをしていました。そのときのことです。コーン、コーン、と木を叩くような音がして、そのあと、バリバリバリーと木が倒れるような大きな音がしました。公園ですから木は沢山あります。わたしは怖くて周囲を見渡しましたが、樹が倒れてくるような気配はありません。でも、右の方の林が騒がしいなと思ったら、何本かの木がまるで何かにのし掛かられるように先をしならせて、唖然と見ているうちに、何かこう、大きな物が落ちてくるかのような圧力というのか、空気がどーっと押しかけて来るようなそんな感じがして、何が何だか分からないうちに身がすくんでしまって、どうして良いか分からなくなって……」
「そこに正義の味方が登場するわけだね」
 と嬉しそうに言う咲の上着の裾を恥ずかしげに引っ張って、「おい」とか言っているのは野元少年だ。
「偶然そこに居合わせた野元君がわたしのことを助けてくれたのです」
 ここで初めて二人の視線が合わせる。やや温度差のある視線の交差。こういうのも青春なのだろうな。
「偶然などではありません!」
 そこに割って入ったのは、正義の味方の敵であるところの狸怪人だった。
「彼ら二人は結託してお嬢様のお近づきになろうと画策したのです」
「オレはそんなことはしていない!」
 憤慨して立ち上がったのは、今度は野元少年だ。
「管谷、助けてくださったのに失礼ですよ。野崎君はその時怪我まで負って」
「それも計算の上です」
「そんなことはない。なぁ、咲」
 話を振られた咲は、宙に瞳を泳がせ、
「えぇーっと……」
 などと惚けたふりをしている。事前の打ち合わせはなかったらしい。
「しょうもないことに術法を使うなよ」
「あぁっ、それ、あなたが言いますか!?」
「十年前のことは忘れた。お前も忘れろ。ていうか、お前は直接には知らないだろう。伝聞情報を信じるな。あれはオレじゃない。ちなみに一昨日以前のオレも、今のオレとは違うからな」
「都合のいい話ですね」
「偽神だからな」
「十年前は良いとして、一昨日ってなんですか?」
「個人的な諸事情だ」
 となりで佳代乃がくすりと咲った気がする。見透かされているようで癪ではあるが、それでも悪い気はしないから不思議だ。
「分かったでしょう、二人は共謀してたんですよ」
「オレは知らなかったんだ。信じてくれよ、綾瀬原さん」
 佳代乃がちらりとオレを見る。
 返事の代わりに肩をすくめる。
「お前は最初から彼のことを信用してなかったのだろう」
 咲に向けて問う。
「そういうわけじゃないですよ。ただ彼は素直すぎるくらい素直だから、絶対嘘は吐けないと思って。特にああいう状況で演技なんてできるわけがない。だからボクの方でタイミングを合わせてやったんです」
「なぜ、そんなことを? 野元君だって怪我を負ったんですよ」
 糾弾調の佳代乃の声に怯んだものか、反省をしないことで有名な咲がしゅんとしている。
「良かれと思ってやったんですよ。彼、野元之也君は近頃の高校生にしては珍しい勤勉で努力家で気持ちの良いヤツなので、普通なら叶いそうもない片思いを叶える手助けをできれば思って」
 普通なら叶わない、というとろこで佳代乃はきょとんとし、少年は絶望に顔を伏せる。桐篠田市では、九里橘系の家系にある者と、そうでない者との間には、眼に見えない巨大な壁が立ちふさがる。アホらしいことだが、こういう古い因習はなかなかなくならないのが厳然たる事実だ。
 それはそれとして、
「で、いくら賭けたんだ?」
 咲の顔色が変わる。
「何の話しですか?」
「お前はオレをごまかせるほどの大人物だとでも? 偽神を越えるほどの?」
「良いじゃないですか。動機は言ったとおりです。ただついでに話の種として成功するかどうかで……」
「お前、最低だな」
「最低ね」
 若い二人から同時にダメ出しを喰らって、さすがの咲も本気でしょげている。
「佳代乃、続きを」
「その夜、邸に帰った時、門の前で野元君が待っていてくれて、その時に落とした物を届けてくれました。あの時は本当にありがとう」
「いえいえ、どう致しまして」
 ふたりでぺこりと頭を下げ合っている。実に日本人ぽい光景だ。ま、本題とは関わりあいないな。狸が憎々しげに二人のその仕草を見ている。なるほど、関わらなくもないのか。
「それで?」
「次の日のことです。また、同じようなことが起こりました」
「ちょっと待った、後のことっていうのは、ボクは知らないよ」
「白々しいことを。此の期に及んでしらばっくれる気か」
 二人を諫め、先を続けさせる。
「放課後でした。生徒会の用事で遅くなってしまって、その時まだ学校に残っていた生徒は多分わたしだけだと思います。急いで帰ろうと廊下を早足で歩いたところ、あの音が――」
「で、どうしたね」
「私がお嬢様をお守りしました」
 胸を張って傲然と言うのは狸執事。
「お嬢様のお帰りがあまりに遅すぎるので心配して探しに入ったのです。職員室で聞くと、おそらく生徒会室だろうと」
「なるほど。もしかして、そこで理事長にあったのか?」
「そうです。良くおわかりですね。こういう常識とか理屈で理解できないことはその道のプロに速やかに相談しないと後で取り返しの付かないことにもなりかねないからと」
「私は反対したのに……」
 小声で呟く狸の声を聞き逃さない。
「それから?」
「昨夜のことです。気持ちが高揚してしまってなかなか寝付けなかったので、涼みに庭に出たんです。そこで……」
「そこでも私がお嬢様をお守りしました」
 私がいれば何事も問題なしと言わんばかりに胸を反らせる。
「でもそれ、ボクじゃないから。絶対、これは本当。神賭ける。偽神じゃなくてね」
 余計なことは言わんで良い。
「だったら、一体誰が……」
「私は彼らが怪しいと思っておりますぞ」
「オレは最初から知らなかったってば」
「分かりませんな。二人で示し合わせているのかも」
「ていうかさぁ」
 咲が厭そうにこちらを見て、
「全部分かってるんでしょう? 神さまなんだから」
「偽神だけどな」
 佳代乃の方を見ると、彼女は、分かっているという風にこくんと肯く。どんな結論でも信じて受け入れるという意思表示と理解する。
「言ったろ? 偽天狗を利用したのは誰か、と」
「利用――?」
「そこの狸執事君は、お前たちを捕まえて自作自演と糾弾した。つまりは、その時点以前に彼は自作自演という発想を持っていたと言うことだ」
 正面から執事君と対峙する。そろそろクライマックスのようだ。あまり盛り上がりはないが、日常、そんなものはそうそうない。世の中などそんなものだ。
「あんた、年甲斐もなく佳代乃に懸想したろ。お嬢様を守るのは自分一人。他の者は近寄らせない。お嬢様は永遠に自分のもの……。そんな妄想があんたの頭ん中を満たしたわけだ。浅はかだな。お嬢様とていつかは嫁に行く。婿を取るかもしれんが、あんたがナイト役を気取っていられるのもそれまでの話しだ。大した年月はない。金持の家は政略やらなんやらで結婚が早いからな」
 真っ先に落ち込んだのが野元少年だったのは、ちょっと気の毒なことをした気もする。事実を早めに受け入れて次の恋を見付けるよう祈ろう。
「そんなことはない。お嬢様は私が一人でお守りする。他に誰も必要ない。お前も、必要ない。帰りましょう、お嬢様。ここにいても得られる物は何もありません。お嬢様には私がおります。私がいればなにも心配することなどありません」
「どういうことなのですか、管谷」
「どういうことありません。そういうことです」
「幻術でも使って、当主殿をたぶらかし、自分がお嬢様の婿にでも収まるつもりかね。随分と厚かましい狸だ」
「でも、管谷は普通の人間です。そんなことができるなんて……」
 オレや咲は凌禾に連なる者としての修行を積んでいる。だから妖異やそれにまつわるものに詳しく、程度の差こそあれ、単純物理法則を超越した術法を使うことができる。数年前、咲は途中で挫折し、十数年前のオレはそれを極限まで極めた。だからこそ、あの地獄へ特攻させられたのだが。
 対してこのおっさんは何の修行も積んでいないし、生来の素養もない。あるとすれば強すぎる執着心くらいだろう。その執着心が問題なのだが。
「これも最初に言ったろ。悪者は狸だって」
 別に執事君を揶揄してあだ名していたわけではない。彼自身ももちろん問題だが、彼が心の中で思っているだけなら外側には何の問題も発生しない。それを具現化しようとしなければ。彼一人ならば、小心な彼にそんな度胸はない。それを後押しした者がいる。いや、実際にはほとんど彼を操っていたと言っても過言ではないだろう。
「咲、狸を絞り出せ」
 オレには見えている。始めから見えていた。この執事のおっさんに取り憑く狸の姿が。
「ボクがですか?」
 咲にも一応は見えているらしい。
「当たり前だ。それとも、オレの頼みが聞けないと?」
「喜んで」
 咲はソファーの上で胡坐をかくと、何事かぶつぶつと唱え始めた。えらくまどろっこしいな。
「なにをするつもりだ」
 と言ったのは執事氏の口を借りた狸。
「オレにはお前が見えているがね、皆さんにもお披露目といこうじゃないか。そう恥ずかしがることはない。恥ずかしい気持ちは分からんではないがな」
 咲の声が一際に大きくなる。
 そして、カーっと気合いを込めて執事君の肩をいつの間にか取り出した棒で打つ。
 少し演出過剰じゃないか?
 そもそも咒言など、ある程度修行すれば必要なくなるもの――、のはずなのだが。
「簡単に言わないでくださいよ。ボクは早々にドロップアウトした身なんですから」
「そんなの初歩の初歩じゃないか」
「なに言ってるんです、咒言なしで、意志だけで理を飛び越えるなんて導師級じゃないですか。世界にだってそんなにはいませんよ」
 世界とは随分レベルの低いものなのだな。これでは異界のモノがこちら側に来襲したとき対処できまい。人類の命運もそれまでの間だと言うことだ。それまでに、どこか佳代乃と二人静に暮らせる場所を探さねばなるまい。早々に逃げ出す算段をする神というのもどうかとは思わないでもないが。偽神なのだからかまわないだろう。
「で、どうするんですか?」
 咲が、執事氏の前に横たわる、大型犬ほどもある黒い毛並みの獣を指して言う。息はあるようだが、身体を痙攣させ、完全に伸びている。
「狸だ」
「狸、ね」
 少年少女が異口同音に言う。驚いているのか、呆れているのか。まさか本当に狸が出てくるとは思わなかったのか。人がずっと狸狸と言い続けていたというのに。執事先生などは、あんぐりと口を開けて言葉を喪っている。
「お前がどうにかしろ」
 咲に向けて冷たく言い放つ。
「ボクがですか!?」
「お前が出したんだから、最後まで責任を持つのが大人ってものだろう」
「あなたが出させたくせに」
「何か言ったか」
「いいえ、何も申しません」
「けっこう」
 咲ががっくり肩を落として息を吐くのは見ないふりをする。
「えーっと、じゃあ、まぁ、とりあえず……」
 なぜだか手に持っていたロープで狸を縛る。どこから持ち出したのだろう。
「何があるか分からないんで、日頃から色々持ち歩く癖になっているんですよ」
 と咲は言う。
「妖物用の特殊な物なんで簡単には抜けられません」
「便利なヤツだな。まるで未来の猫型ロボットのようだ」
「なんですかそれは」
「気にするな」
 咲が慣れた手つきで狸を縛り上げる。いかにも物を縛り慣れた様子だ。どこで何を縛っているものやら。
 ここでついでの補足情報を一つ加える。
「この狸は、まぁ、そこの執事のおっさんの矮小な性質に共感して取り憑いたわけではあるが、かつて、天狗と自称する少年に非道く虐待されたことを根に持ち、いつか仕返しをする機会を狙っていた」
 咲を見遣ると思い当たる節でもあるのか、たらたら汗を流している。縛りながら思い出したのかも知れない。
「要するにお前が元凶だということだ」
「大変、申し訳ありませんでした」
 半ばおどける風に土下座してみせるのを、佳代乃も、野元少年も笑って見ていた。まぁ、それはそれで良いのだろう。
 さて、後に残るのは、抜け殻のようにしょぼくれたただの初老の男。
「お嬢様、私は……」
 足元にもすがりつかんばかりの一人の男。執事としての経歴もあり、綾瀬原家に使えてきた。そうと知った上で、佳代乃は彼を冷たく見下ろし、
「管谷、あなたはクビです。どこへでもお行きなさい」
 冷厳なる女王の宣下。この娘もまた、やはり九里橘の血を引く者なのだ。
 もっとも管谷のしようとしたことからすれば、かなり温情ある対処とも言える。何しろ綾瀬原財閥令嬢、財界の冷徹魔神といわれた綾瀬原豪徳の次女相手の狼藉。彼女の一言で、彼の社会的生命は終焉を迎える。
 男は車の鍵を返し、とぼとぼと歩き去った。
「とりあえずこれで一件落着ってことなんですかねぇ」
 自分が元凶だと知ってなおお気楽な咲の言いように、一同して苦笑いする。
 佳代乃が、
「運転手がいなくなってしまいました。わたしはどうして帰ればよいのですか」
 とオレを見ていう。クビを切ったのは自分だというのに。
「オレは車の運転などできんよ」
「なら、歩いて連れて帰ってください。そんなに遠くはありませんから」
「歩くのは苦手なんだが……」
「最後まで責任を負うのが大人なのでしょう?」
「分かった」
 やれやれ。
「で、ボクらはいったい何のために呼ばれたんでしょう」
 自分たちがこの場にいなくても、真相は分かっていたのだろうし、いかようにでもできたのではないかと咲が非難の目を向ける。
 そんなことは知れている。
「お前はオレに使われるため。少年は……、まぁ、良い経験にはなっただろう」
「相変わらず、ほんと、身勝手だなぁ。ま、それなりに面白かったから良いですけど」
 少年は複雑な表情で俯いていたが、ふと顔を上げ、オレを睨み付けると、
「オレは諦めない!」
 と言って出て行った。その後を咲が追いかけ、
「子供相手にムキならないでくださいよ」
 と言い残す。
 が、売られた喧嘩は買わねばならぬだろう。彼が本気であればあるほど、こちらも本気で返さねばならない。
 なかなか、青春じゃないか。
「わたしもそろそろ帰ります。エスコトーとしてください」
 佳代乃がご令嬢らしく優雅な仕草で右手を差し出す。
「はいはい、かしこまりました、お嬢様」
 オレがその手を取ろうとすると、
「このまま、帰すつもりなんですか」
 と、例の蕩ける視線で見詰めてくる。
「まさか、そんなわけないだろう」
 当分、怠惰な生活には戻れそうもない。

END
2012年08月24日(金) 21時38分07秒 公開
■この作品の著作権はおさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、お目汚しでした。読んでくださった方、ありがとうございます。
今回は、秋だか冬だかに開催される予定の、ある企画に向けた試し書きです。設定臭くて、ダイジェスト臭いのは、まぁ、そのせいです。企画意図としては「厨二っぽい小説を恥ずかしげもなく書く!」ということらしいので、企画者さんにキーワードを挙げて貰い、そのうちのいくつかを取り上げて考えてみました。その今回想定したキーワードは、「魔王、英雄、魔剣、魔法、たったひとりの生き残り、異端、異能、温厚なのに怒ると黒い、過去には冷血なキャラだった、不老不死、血まみれの過去、神々によしみがある」です。いくつか不発に終わってます。なかなかムツカシイものです。反省点は幾つもありますが、おじさんを主人公にという前提の中であまりおじさんらしくならなかったのが悔やまれます。てか、おじさんぽくしようとしたら愚痴だらけになって嫌気が差して止めたんですが。あと、本当はもっとペロペロチュッチュな感じにしたかったのに、あまりそうできなかったのは、一つの反省点です。もう少し設定を詰め直して、再度挑戦するつもりです。企画スタートまでにもう一回くらい試し書きができればいいなぁと思っていますが、なにしろ、書くの遅いからなぁ。
企画に興味を持たれた方は、企画板をチェックしていてください。秋か冬かくらいに提示されると思います。
それはそれとして、あー今回もチャンバラやってねー。なんかフラストレーションたまると思ったらそれが原因か。
 でわでわ。

この作品の感想をお寄せください。
No.16  お  評価:--点  ■2013-01-15 11:04  ID:.kbB.DhU4/c
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どもども。
こんな過去作にまでコメントをいただいて。
すみません、気づいてませんでした。
天狗もどきの青年は、あれはまぁ、ちょっと元になるのがあって、あまり前に出すのはどうかなぁというところもなくはなく(^^;;
中盤すっ飛ばすのが僕の最大悪いところだなぁとこの作品でもやはり思うところです。
No.15  帯刀穿  評価:30点  ■2013-01-11 20:11  ID:DJYECbbelKA
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読了。
綺麗に厚みがある、きちんとした作りだ。設定はまあ、そういうものなのだろうということで。
しかし、ヒロインの扱い方とか、主人公の扱い方はとにかくもよかった。あとは、本来主人公になりそうな天狗まがいの少年の部分は、これからもっと加筆されて、より肉付けがなされていくのだろう。
魔術師云々の部分は、もう少しぼやかしたり、それっぽい感じに仕上げたほうがいいかもしれない。
No.14  お  評価:--点  ■2012-09-12 18:24  ID:.kbB.DhU4/c
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>桐原さん

ドモドモ\(^_^。
こちらの方にまで、どうもおおきにさんです。
イベント主宰者は三語でもお馴染みHALさんです。
時季はまだ不明ですが、たぶん間違いなく実行されると思います。
長さとか、細かいしばりはたぶんないと思うので、桐原さんも是非、参加してみてください!

HALさんへのレスにも書きましたが、色々バランスが悪そうなので、とりあえず手直しをと思って設定いじり直していたんですが、いつの間にやらまったく別物になってしまいました。(三語にそのキャラを使った掌編を載せてみました。まぁ、背景とかはぜんぜん入れられませんでしたが)
落書き程度にちょろちょろ書いてみるんですが、その度に設定が巧く機能せず詰め直しという状況です。ボクの方がどうも間に合うか怪しい……。
とりあえず、設定の核は「TSF」です!

あと、「俺summer」はやり過ぎでした。反省してます。

(@^^)/~~~デワデワ またどうぞよろしくお願いします。
No.13  桐原草  評価:30点  ■2012-09-12 09:54  ID:1zZ2b3u5YfY
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こんにちは!

何か面白そうな匂いがしていると思ったら、なにかイベントがあるのですか?
なんだかわくわくするような素敵な設定がてんこもりですね。
これほどの美少女、いいですねえ。
おやじギャグも入れるのですか? いつもの(といっても読ませていただいたのはほんの少しなのですが)美麗な文章の合間に?
おもしろそう!
期待してます。
会話文が多いのはきっとその設定を説明するためだろうと思うので。

企画、間に合うなら私も参加させてもらおうかな?
まだ企画発表されてないんですよね?

点数はこれからの期待値ですw
No.12  お  評価:0点  ■2012-09-10 22:04  ID:L6TukelU0BA
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>HALさん
どもどもー。
厨二小説は設定を考え直してるところです。なかなか、いろいろバランス悪いなぁと思って。はじめはこれの続きでマイナーチェンジくらいのつもりだったんですが、いつの間にやら全然別物になってしまいました。オカシイナア
いままたこれと同じようにお試し掌編書いてますが、設定使えるかの確認も目的のみ一つなので前半に設定固め打っちゃうのは、まぁ、しょうがないんですが、それでも、これよりはバランス野良いようにならないかなぁと苦闘してます。
これだけ変わると、これは何のために書いたのだろうと自分で疑問を感じてしまいます(笑。
さぁ、次は、TSFだ!
No.11  HAL  評価:30点  ■2012-09-09 19:08  ID:S6D21P2mcPQ
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 遅くなってしまいましたが、拝読しました。

 うわあ、悪い男だなあ。主人公まわりの設定がいいかんじに中二ですね……よーし負けてられないぞ!(……といいつつまだ何も考えてないのですが)
 助平でちょっとだらしなくて愛嬌のある男キャラとか、助平でおバカで可愛いような男キャラとかは、わりと見かける気がするのですが、助平な男キャラをあくまで格好良く書くのって、実は何気に大変なことじゃないのかなあ、と思ったりします。

 そして美少女。男の人が書く萌え系美少女(or美女)、嫌いじゃないです。自分ではなかなか書けない種類の萌えだから、ちょっと悔しかったりします……
 登場人物といえば、これだけの文章量の中できっちりこの人数のキャラクターを書きわけておられるのがさすがで、そのあたり本当に見習いたいです。

 文字の人形が踊ったりとか、物語の美女が抜け出してきて微笑んだりとか、視覚的な演出のお見事さも、相変わらずお見事でした。

 気になったところは……イベントのための習作ということですから、いちいち指摘するのも無粋な気もするのですけれども、いちおう書いておきますね。
 文体のことでひとつ。いつもの美しい流麗な(陶酔的な)語りと、軽いところ(オレsummerとかオヤヂとか)とのあいだに落差があって、バランス的にまだちょっとなじみ切っていないような気がしました。個人的な感覚ですが、シリアスな気持ちでいるところにギャグが滑りこんでくると「うっ」てなってしまうので。ここまでライトなノリを入れていくのであれば、思い切ってもっと全体を軽くしちゃったほうがいいのでは……と思いました。

 構成のことで、もうひとつ。前のコメントを拝読すると、前半は趣味とのことですから、やはりわざわざ書くのも無粋なのですけど……(しかも、自分もいろんなところで人様から指摘をいただきつづけていることなので、思い切り天に唾吐いています/汗)
 主人公の立場や能力、世界観、舞台、それから事件の概略については、それぞれもうちょっと早めの提示がよかったのでは、と思いました。謎めいた伏線は、興味を引く牽引力にもなりますが、思わせぶりなワードがたくさん出てくるのになかなかその正体が明らかにならないのは、短気な読み手にとってはしばしばストレスにもなるので。……か、書いていて自分の耳が痛い!(すみません)

 さておき、楽しませていただきました。いつものことですが、指摘等々、見当はずれなものになっていましたら申し訳ないです。
 ミニイベント、いまだに全然詳細を詰めてませんが(汗)、そろそろ考えますね。どうぞよろしくお願いいたします!
No.10  お  評価:--点  ■2012-09-02 23:47  ID:.kbB.DhU4/c
PASS 編集 削除
>陣家さん

さぁ。さぁ、さぁ。陣家さんがどんな厨二小説を書くのか、ぼくは楽しみで楽しみで。夜も眠れません。近頃の不眠は全て陣家さんのせいです。日本中の不眠はすべて陣家さんのせいです! どんなの書くのかなぁ、楽しみだなぁ。(コピペ失礼イイカゲンシツコイ)

さてと。どもです。
そうですねぇ、前半を半分にして、後半を三、四倍くらいで良いあんばいかなぁと言う感じですかねぇ。設定気に入ればそうしても良かったんですが、ちょっと色々問題多いかなぁと言うことで、この時点でしゅーりょーしました。すみません。
おぢさんらしくは当方なりに今考えてます。
えーと、あのキーワードは僕が書くに当たって手がかりが欲しかったので無理矢理上げて貰ったものです。企画でのお題とかにはならないと思います。それぞれが思う厨二臭さを炸裂させれば良いんじゃないかと思いますよ。

でわでわん。
No.9  陣家  評価:30点  ■2012-09-02 08:00  ID:98YScwpXzig
PASS 編集 削除
どもです

濃いですね、いろいろと。
圧縮版という前提みたいなのでそこは突っ込んじゃいけないのかもしれませんが。
設定にしても、登場人物にしても、各人凝った設定には思えるんですがやっぱり文量が少ない気がします。
登場人物に感情移入する間もなく次々に登場人物が出てくるので全体的に印象が薄く感じました。
多分じっくり文章をためすがめつしながら読むのが正解なんでしょうけど、僕みたいなせっかちな人間としてはもうちょっと待ってよーとお願いしたい気持ちになってしましました。
自分がすかすかの文章しか書けないのでそういう読み方しちゃう方に問題あるんでしょうけど。

主人公がおじさんっぽくないのは、確かにそうですね。
セリフの口調の問題ですかね。
年下の、(特に女子にはに対しては)慇懃な口調にする。
女の子の名前はちゃん付けで呼ぶ。
これだけでもかなりおじさんぽくなりますよ、たぶん。
なりすぎるかもしれないですが。

厨二作、いろいろ考えてはいますが、おさんの作者コメント欄に書かれているキーワードを見るとなかなか難しいそう……。
体はおっさん、心は厨二と自分では思っているのですが。
ヒロイックなファンタジーとなるとハードル高いっす。
日常系が好きなもので。
というか、引き出しが少ないんですよね。もうちょっと考えます。

ではでは
No.8  お  評価:--点  ■2012-09-01 21:04  ID:.kbB.DhU4/c
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さぁ。さぁ、さぁ。ゆうすけさんがどんな厨二小説を書くのか、ぼくは楽しみで楽しみで。夜も眠れません。近頃の不眠は全てゆうすけさんのせいです。日本中の不眠はすべてゆうすけさんのせいです! どんなの書くのかなぁ、楽しみだなぁ。(コピペ失礼)

そんなわけでどもうです。
厨二小説といって何がどうなのかって具体的なところはあんまりよくわかんないですよね。きっと、読んだ人が厨二くせーと思わず言ってしまうようなものがそうなんでしょう。
まぁ、強いて言えば、例えば、大人になるとちょっと恥ずかしくて書けないようなご都合的な妄想欲求が恥ずかしげもなく炸裂してるものとか、そんな感じなんですかねぇ。
おじさんはね、難しいですよ。特に後藤隊長のようなとか言われると。あの人主人公にしても動かんもん。
エロはねぇ、どこまで入れたもんかと迷っちゃいますよね。
戦闘シーンはやりたいですよね。チャンバラ。

でわでわ。おおきにさまです。
No.7  ゆうすけ  評価:30点  ■2012-09-01 17:15  ID:epAsdNViBjs
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拝読させていただきました。

むう、中二病……いまいち定義がわからない私は感性が古いのかな、それともガラパゴスかカンブリアに取り残された絶滅危惧種? そんな私が感想を書いてもいいのやら。

さて主人公、冒頭から気怠さ物臭さ全開ですね。そして強すぎる。なにやらゲームのキャラクター説明を読んでいるような感じがありました。人間味とか弱さとか、変な性癖があったほうが感情移入しやすい気がします。
おじさん臭い味付けですか〜、難しいですね。何しろ我々は若者ですし……多分。

高慢な美女……これはさすがだと思います。得体のしれない女神の無駄に多い設定とか独特の世界観を醸し出していると思います。

やっぱり濡れ場と戦闘シーンがあった方が楽しめそうです。くるかと思わせておいて、こなかった的な肩透かし感です。
おさん独特のねっとりとした描写で描くあんなシーンやこんなシーン、期待していますよ。
No.6  お  評価:--点  ■2012-08-30 21:55  ID:.kbB.DhU4/c
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>白星さん

さぁ。さぁ、さぁ。白星さんがどんな厨二小説を書くのか、ぼくは楽しみで楽しみで。夜も眠れません。近頃の不眠は全て白星さんのせいです。日本中の不眠はすべて白星さんのせいです! どんなの書くのかなぁ、楽しみだなぁ。(コピペ失礼)
どうもです。
残念ながら「境界線上のホライゾン」という作品は未読です。たしか、アニメでもやってたなぁというくらいの認識はありますが、それだけです。八柱さんは存じ上げません。八頭大なら知っていますが。
さておき。
チャンバラ! やりたい。
でも設定考えているとだんだんそっちから離れて行ってしまうのはなぜだろう? しかし、次はやる。必ずやる。オレはやるぜ。やったるぜ。
でわでわ。おおきにさんどした。
No.5  白星奏夜  評価:30点  ■2012-08-30 21:42  ID:a4NglDIHSPA
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こんにちは、白星です。拝読させて頂きました。

ちょうど今、自分が見ているからかどうか分かりませんが、読んでいて、境界線上のホライゾンという作品を思い浮かべました。上手くお伝えできないかもしれないですが、膨大で少々難解な設定なのだけれども読んでいて苦にならない、といったところでしょうか。個人的には、八柱が好きでした。他には、どんな奴がいるのでしょうか。というか、とんでもなく強いでしょうね((笑)

怠惰な主人公、けれど。というのは、やっぱり人の心を惹きますね。いい加減さと、そうではない時の違いが面白いのでしょうか。

是非是非、次はチャンバラを入れて下さい。大好きなので。あ、これは私の趣味ですね〜。

とても楽しく読めました。また、次回、期待しております。ではでは〜。
No.4  お  評価:--点  ■2012-08-29 01:29  ID:.kbB.DhU4/c
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>楠山さん

まいどでする!
さぁ。さぁ、さぁ。楠山さんがどんな厨二小説を書くのか、ぼくは楽しみで楽しみで。夜も眠れません。近頃の不眠は全て楠山さんのせいです。日本中の不眠はすべて楠山さんのせいです! どんなの書くのかなぁ、楽しみだなぁ。(コピペ失礼)

さてと。
前半は趣味です。後半は作業です。
おそらく、前半で振り落とされる方多数でしょう。
完全に趣味に走っております。
それなりに楽しかったっす。後悔はしていない!
とりあえず、設定練り直してます。もっと厨二くさくなるように。
ちなみに、ボクはロリじゃないので、幼女はパスです。まだ、捕まりたくありませんから。ボクが書くのは精々JCの絡みくらいまでです。ご期待に添えず申し訳ありません。

でわでわ。
No.3  楠山歳幸  評価:40点  ■2012-08-27 21:26  ID:3.rK8dssdKA
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 お久しぶりです。読ませていただきました。
 前半が良かったです。今は厭世的なものはあまり読む気がなかったのですが、それでもかっこよかったです。描写というか表現というか感性というか、おさんは何やってもかっこいいと思いました。前半は独立して「どうせなにもみえない」のような粘着質でおっさんいえ中年のやるせない暗さを見てみたいような気がします。
 習作ということでこんなこと言うのは野暮ですが、やはり後半はライトなお話と思いました。やはり狸のいたずらより戦争で何があったか興味を持ったのは僕だけではないと思うので絡ませながら進めて欲しかったかな、と思いました。
 お嬢様との絡みですが、僕の好みではありますが、3,4歳低めにして”べ、べつにおじさんなんか好きじゃないんだからね☆”的な所が少し欲しいかなと思いました。マタいえ体を許すのはじらしたほうがいいかな、と思います。でもこのパターンは古いかなあ、とも思います。あと、お嬢様は天帝のお墨付きのようなので少し天帝に似た所があると主人公のS度も期待できると思います。
 冥途の戦争もですが十二類合戦絵巻のような設定も面白そうです。
 いろいろ勝手言って申し訳ありません。失礼しました。
No.2  お  評価:--点  ■2012-08-25 19:33  ID:.kbB.DhU4/c
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>☆の田さん

まいどさん。
さぁ。さぁ、さぁ。☆の田さんがどんな厨二小説を書くのか、ぼくは楽しみで楽しみで。夜も眠れません。近頃の不眠は全て☆の田さんのせいです。日本中の不眠はすべて☆の田さんのせいです! どんなの書くのかなぁ、楽しみだなぁ。
さて。ボクの方ですが。今回のに関しては、前半で主人公の設定を文章にして確認し、後半で主要人物を実際に動かしてみるという作業だったんですが、今回のこれで色々足りないモノとか足りないモノとか、つまらないところとか見えてきたところもあるので修正していこうかと。とりあえず、主人公万能過ぎるなぁとか、主人公の葛藤が見えにくいなぁとか、宿敵のようのものが設定されていないとか、主人公とヒロインの関係が安易だなぁとか、なんだらかんだら、厨二らしさが弱いと反省しきり。
それにしても、☆の田さんの厨二小説が楽しみです!
そんなことで。
No.1  星野田  評価:30点  ■2012-08-25 03:39  ID:p72w4NYLy3k
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こんにちは

◆全体
読み終わって、バスタードを思い出しました。
こう、若い人が情熱のままかいた中二病作品とは違う、中二病作品で、これはこれで嫌いじゃないです。
なんかポットでの女の子といきなりなチュッチュしちゃうのが実に中二病ですねw
野元少年の報われなさは、なんか可愛くていいですね。がんばれ少年。

◆設定
怠惰設定が物語に生きているようないないような、中二病設定がいきているようないないような、全体的に死に設定が多いところに冗長性をかんじちゃったり。物語に生かされていない設定が、この作品をなにかの作品のスピンアウトか、ダイジェスト版のように感じさせているような部分なのかもしれないですね。

◆文章
最初の怠惰を描写してる公園シーンの文章量(描写量)と、ラストの方の文章量(ほぼ会話のみ)のバランスが悪い気がしました。この程度の長さなら、テンポ的に均一にするか。軽い描写、重い描写、軽い描写、重い描写……のシーンを周期的に繰り返すほうが、バランスが良さそうです。

あと、誤字報告
>305行目
絶界と絶海が混在している。

>531行目
「わたしもそろそろ帰ります。エスコトーとしてください」
総レス数 16  合計 250

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