カナーレの商人
 水路にかかる橋を、一人の青年が歩いていた。くすんだ金髪、吊目で狡猾そうな顔、見た目は商家の若旦那、といった感じだ。彼の名は、アルセという。
「いつ見ても、壮観だな」
 アルセは町の景観を、眺める。水面の揺らめきを映す白い壁の建物、町中に張り巡らされた水路、多彩な装飾が施された橋、全てが美しい。町の名は、オーヴェスト・カナーレ(西の運河)という。大陸随一の商業都市で、どんな商人も一度はここで商売をしたいと願う夢の町、だった。
 町の中は活気に溢れ、多くの人が行き交っている。少し騒がしいくらいだが、アルセはその喧騒を心地良さそうに聞きながら、足を中央広場に向けた。
 中央広場には、カナーレ有数の大金庫が建っている。カナーレを実質的に治める三つの大商家、ノワール、ブラン、ヴィオーレを始め、この町の大中小の商人が己の財を貯め込む巣窟である。港の防備体制よりもこの金庫の守りの方が厳重で、他国からは要塞とまで言われている代物だった。
 アルセは衛兵の固める金庫の入口で、商人であることを証明する手形を見せて、中に入った。大理石の床、劇場を思わせる見事な装飾品の数々に圧倒される。しかし、この建物の地下には複雑に入り組んだ通路と、無数の金庫が広がっている。蟻の巣、という通称は的を得ている、とアルセは思った。
「よお、カルロ」
「これはこれは、アルセの若旦那」
 使い慣れた窓口で気安く呼びかけると、すぐに恰幅の良い中年の男が出てきた。
「今日はどのようなご要件で?」
「取り敢えず、200万リラほど金庫から出したいんだが」
 カルロは頷いて、一枚の書類を手馴れた感じで台の上に出した。アルセもさっさと、金銭を引き出す金庫の番号等、必要な事項を記入していった。そして最後に、今までとは違う言語で自分の名前を踊るように署名した。今では商人しか用いない、古代フェニクス文字だった。本人確認のためのちょっとした仕掛け、と言えるだろう。腕利きの窓口担当者は事前に登録しておいた署名と、書類に書いた署名が同一かを正確に見分けることができる。
「今回は、災難でしたね」
 カルロは書類を受理しながら、アルセに話しかけた。耳が早いな、とアルセは苦笑した。数時間前に港で起こった出来事をもうこの金庫員は知っている。商人の耳、光の如し。過去の偉人が残した言葉は、その通りのようだ。
「付属品だけ、届けられてもなぁ」
 アルセ他、幾つかの商家が手がけた商売で問題が発生したのは今朝のことだった。わりと名の知れた陶磁器と、緩衝材兼飾りつけの花々が同時に港に着くはずだった。港で二つを一つに詰め替えて出荷する予定だったのだが、いざ商船が着いてみると花々だけしか届かなかった。陶磁器を運ぶ商船団に問題が生じて、到着が二ヶ月もずれ込むということらしい。待っている間に、花々は枯れてしまう。
「花屋でも始めますか」
 カルロは笑いながら尋ねた。
「使い道が見つからなかったなら。全く余計な出費だよ」
 こういうことはよくある、しかし、無駄金を使うというのは嫌なものだ。
「願ったら、黒仮面の連中が助けてくれるかもしれませんよ」
 カルロの言葉に、アルセは苦笑した。
「あいつらは、こんなことには首を突っ込まないさ」
 黒仮面、その名の通り、黒い仮面を付けた奇妙な一団のことだ。このカナーレの中で、強引な商売や、非合法の裏取引をした商家に手痛い御仕置きを行使していた。その実態は全く謎で、事を起こした後は風のように消えてしまう。カナーレの都市伝説のようなもの、だった。
「また来るよ」
 カルロに手を振りながら、アルセは金銭を受け取って窓口を離れた。そして、一人の少女と擦れ違った。美しい金髪、可愛らしい顔、一度見たら忘れられない。また、来たのか。アルセは少女の後ろ姿を見つめながら、そう思った。いつも、この大金庫で出会う少女。年は、十八くらいだろうか。来る度に姿を見れば、アルセも気になってしまう。
 少女はいつも通りに窓口に向かい、楽しそうに靴の爪先をトントンと床に打ち付けている。アルセの推測では、どうやらいつも金庫の中身を確認しているように見える。また増えた、と嬉しそうな呟きを聞いたこともある。何かの給金が支払われて、この金庫に貯められているのかもしれない。
 お金が貯まるのは、確かに悪い気はしない。アルセは、金庫から出ながら頷いた。自分が苦労して得たものなら、尚更だ。話したこともないが、アルセは少女に妙な親近感を感じていた。
 
 港に着いた、目下のところ邪魔な荷物でしかない花々を何とか倉庫に移動させ、帰ってきた商人たちの今後のことを差配しているうちに夜になってしまった。アルセは、疲れた足取りで自分の邸宅に向かった。夜でも、この町は賑やかだ。特に港周辺は、航海の疲れを酒と女で癒す船乗りたちの喧騒で満ちている。
 いつもは通らない通路を歩いていると、中規模な劇場の真横に出た。下がりがちになっていた瞼が急に持ち上がる。劇場で公開中の演劇、その演者の似顔絵の中にあの少女がいたからだ。
 アルセは迷わず、劇場の中に入っていった。代金を支払うと、演目のプログラムを手書きした紙片を渡された。席に座りながら、アルセは演者の一覧に目を通す。どれが、あの少女かはそこでは分からなかった。
 アルセは、舞台の上に目を映す。すぐに演目が始まった。客の入りは、劇場の規模からしたらかなり良いように見える。大半の演目は、大衆向けの少々下品な代物だった。再び眠気が訪れたところで、場の空気が一変した。
 あの少女、だった。アルセは思わず身を乗り出した。周りからも、歓声が上がる。歓声から、ルチア、という名前だとアルセは悟った。昼間とは違う、少し大人の香のする衣装を着て、ルチアはしなやかに舞う。舞いながら、涼やかに歌い始めた。
 静かな音楽に合わせて、ルチアの声が響く。遠くへ去ってしまう船乗りに、淡い想いを抱いてしまった町娘の心情を歌ったものだった。
 会場から嗚咽が漏れる。まるで、ルチア自身がその歌の主人公のようだった。アルセは、目を離せずにルチアを見つめ続けた。最後の場面、想いを伝えられずに港を出ていく船を見送るルチアの瞳から、熱いものが零れた。
 美しい。美術品や宝飾類とは次元の違う美しさだった。歌が終わったことに観衆が気付くまで、かなりの間があった。それほど、誰もが息を飲んで見ていた。そして、ルチアが困ったように周囲を見回すと同時に、劇場を揺らすほどの喝采が浴びせられた。アルセも、惜しみのない拍手をルチアに送った。
 劇場の歌姫、だったのか。アルセは、最上級の品物を探し出したような、そんな心地良さを感じていた。

 こういうのを出待ち、というのだろう。アルセは、劇場の裏でもしかしたらルチアが出てくるかもしれないと思い、待っていた。同じような目的の人間が二十人は、そこにいた。
 アルセは待ちながら、劇場の裏手に鴉の印章を見つけた。コルヴォ商会の運営する劇場か、と少し怪訝な顔になる。最近、カナーレの商人と認められた商家だが、あまり良い噂を聞かない。
 ルチアの素晴らしい歌の後で、少々気分を害された気分だったが、アルセはずっと待ってみた。深夜近くになり、アルセと二人で最後まで待っていた気弱そうな男も退散していった。劇場の裏には、アルセ一人だけになる。
「非効率、だな」
 割と効率良く、物事を片付けてきたアルセは自分の意外な一面を見たような気がして自嘲した。一人の女性にただ会うために、何と無駄な時間を。こんなことでは、商売敵に色仕掛けでもされたら大変なことになる。
 そろそろ帰るか、と壁から背を離した瞬間、裏口が開いた。昼間よりも、質素な服に着替えたルチアだった。アルセの胸が高鳴った。
 ルチアの澄んだ瞳が、アルセの姿を捉えた。
「金庫の人」
 ルチアは、にこりと笑んで近付いてきた。
「大金庫でよくお会いする方、ですよね?」
 アルセは、頷く。動揺しないはずの心が波立つ。
「何度も会うなぁと思っていたら、この劇場で君の似顔絵を見つけて」
「ああ、それで。客席にいらっしゃるから、驚いていたんです」
 外に聞こえるかと思うほど、アルセの心臓が鳴っていた。
「俺が分かったのか、舞台の上から?」
 ルチアは口に指を当てて、笑った。
「それが特技ですもの、見てましたよ。舞台の上から」
 アルセは、照れ隠しに視線を外した。
「立ち話もなんですし」
 ルチアに促されて、アルセは後を付いていった。どんな商談よりも、確実に今の瞬間の方が緊張していた。

 噴水のある静かな公園のベンチに、並んで座る。こんなところを商家仲間に見られたら、格好の餌食だろう。
「お名前、聞いていませんでしたね」
「ああ、そうだったかな。俺は、アルセ」
 アルセ、とルチアは声に出して復唱した。
「大金庫でお会いする、ということはアルセ様は商家の方ですか?」
「ああ、まあ」
 やはり、とルチアは目を輝かせた。
「どんな品物を扱っておられるのです? 商船でどこを廻られました? きっと私が見たことのないものを沢山、御存知なのでしょう。港の先の海は、どうなっているんでしょうね? 教えて頂けますか?」
 子供のようにまくし立てるルチアを、ぽかんとアルセは見つめた。清楚な雰囲気の人かと思っていたが。
「あ、すみません。私」
 ルチアはアルセの反応に、頬を染めて俯いた。アルセは、軽く笑った。緊張が解けたような、そんな気がした。
「商人になりたいのか? そんなに聞きたがるなんて」
 ルチアは頬を赤くしたまま、頷いた。
「私、なりたいです。商人に」
「どうして?」
 アルセの問いかけに、ルチアは少し表情を暗くした。
「私、貧民街の出身なんです」
 アルセは、配慮の足りなさに自分を呪った。裕福なカナーレの町でも、そこに住む全ての人が豊かであるはずがない。商売をすることもできないほど貧しい人々は、浸水が酷い地区などで生活している。基本的に船で内陸と行き来するカナーレでは、町から簡単に脱出することもできない。貧民の数は増加の一途を辿っている。
「小さい頃から、船で自由に行き来して、誇りを持って商売をする商人に憧れてきました。いつか自分もあの青い海の向こうを、見てみたいと」
 ルチアは、アルセに微笑みかけた。
「でも、憧れも実現しそうなんです」
「ひょっとして、金庫にいつも来ているのは」
 アルセが口にすると、ルチアは力強く頷いた。
「商人になるための資金を貯めているんです。コルヴォ商会の方が、専用の金庫を作って下さったので、給金のほとんどをそこに入れてもらっているんです。生活に必要な分は、手渡しで頂けますので。あと少しで、小さな商店くらいは開けると思います」
 アルセは、自然と笑顔になれた。夢を掴もうとしているルチアの表情は、劇場で見た涙と同じくらい綺麗だった。
「じゃあ、開店したら一番目の客として迎えてもらおうかな」
 ルチアは花が咲いたように、可憐に笑んだ。
「是非、喜んで」
 二人の雑談は、それからしばらく続いた。アルセは商家に生まれてから、どんな商売をしてきたかを語り、ルチアはコルヴォ商会に拾われて劇的に変わった数年のことを語ってくれた。
 ルチアを貧民街から移ってきた自宅まで送り届けた後、アルセは帰途に着いた。ずっとルチアのすぐ側にあった自分の左腕から、彼女の仄かな残り香がした。そのことだけで、胸が痛くなった自分に何よりもアルセ自身が驚いた。
「これは、眠れないな」
 切なく呟いた通り、仕事以外の理由で眠れない夜をアルセは久々に過ごした。

 その夜から七日ほど、互いに話す機会があまりなかった。アルセは港の一件での後始末や、新たな商売の手配で忙しかった。金庫で会うことも多かったが、あの場で和やかに話すことはできない。何より、人の目が多過ぎる。アルセは鬱屈した想いを抱えたが、それでも軽やかに金庫から出ていくルチアの後ろ姿を見ると、それだけで気分が良くなった。
 今日も夕暮れまで、アルセは港で商人たちや雇い人を指揮していた。一段落して、少し休んでいると夕日に赤く染まった金髪が見えた。
 ルチアは、アルセの姿を見つけると遠くから手を振って近付いてきた。まさか向こうから来るとは思っていなかったアルセは、慌てて周囲を確認する。どうやら配下の者は、今のところは近くにはいない。
「アルセ様」
 ルチアは、わざわざ小走りでやってきたせいで息を切らせながら、アルセの傍に立った。
「今日の公演で、必要な額が貯まりました」
 弾んだ声で、ルチアは告げた。アルセは、自分のことのように嬉しくなるのを感じた。
「そうか、良かったな」
 はい、と少し涙目になりながらルチアは答えた。
「アルセ様には伝えたくて、港まで来てしまいました」
 この純粋さ、だ。アルセは、そう思った。自分がルチアを好ましく想うのは、このどこまでも明るく前向きな、純粋さ。商売のために、多少の嘘や策略は日常茶飯事の自分には眩しいほどの。
「開業するなら、俺に相談してくれ。必要な資材とか、そんなものは手配できると思う」
 商売的打算抜きで、アルセは申し出た。勿論、心の中での打算はある。ルチアに近付きたい、という淡い想いが。
 ありがとうございます、とルチアは深々と礼をした。
「明日、金庫から引き出そうと思います。ご相談は、その後で」
 アルセは頷いた。また会う約束を、と心が動く。口にしようとしたところで、商家の仲間に呼ばれた。
「すみません、お邪魔してしまいましたね」
 ルチアは申し訳なさそうな表情をして、アルセから離れた。
「今日は、この辺で」
 手を振って背を向けるルチアの姿を、アルセは仲間のところに向いながらずっと見ていた。

 そして五日が経った。ルチアはこの五日、金庫に姿を見せていない。それは、金銭を引き出したからだろうと思えたが、何の音沙汰も無いのが気になった。アルセは、仕事を早く片付けて劇場に向かった。
 今日の演者の一覧に目を通す。ルチアの名前は、そこにはなかった。休みか、不審に思ったアルセはルチアの自宅に向かうことにした。
 足早に移動している最中、以前、二人が話した公園の横をアルセは通った。そして、ベンチに小さく座り込むルチアを見つけた。
「ルチア」
 呼びかけて近付く。
「アルセ様」
 顔を上げたルチアの表情の、あまりの痛々しさにアルセは息が詰まった。ずっと泣いていたのか、目が腫れている。けれど、ルチアの瞳や頬のどこにも水滴はなかった。最早、涙も枯れたといった感じだった。
「失敗、してしまいました」
 ルチアは、弱々しく微笑んだ。
「何があった?」
 ベンチに座りながら、アルセは尋ねる。
「私がいけないんです、よく知らなかったから」
「ルチア」
 自分を責めようとするルチアを、アルセは強い語気で呼んだ。ルチアの唇と、肩が震えた。
「引き出せませんでした」
 ルチアは掠れた声で、告げた。アルセは、そっとルチアの肩に手を回した。ルチアはアルセの肩に顔を埋めた。
「私の名前で引き出そうとしました、けれど署名が違うと言われました」
「フェニクス文字のことは?」
 アルセが聞くと、ルチアは首を横に振った。アルセの中で、黒い感情が逆巻いた。
「手違いがあったのかもしれない、俺が確認してくる」
 そう言って、アルセはルチアに微笑みかけた。
「でも」
「相談に乗る、そういう話しだっただろう?」
 ルチアの顔に僅かに明るさが戻る。
「だから安心して、家で待ってな」
 ルチアはこくり、と頷いた。アルセは、俯くルチアを支えて家まで送った。笑顔で手を振って、扉を閉める。背を向けたアルセの顔は、鬼のような形相になっていた。
 商人ではないルチアが、金庫の中身を確認するのは不自然ではない。コルヴォ商会の代理、そういう種類の手形を使えば金庫にも入れるし、金庫の中身も確認できる。しかし、引き出すとなると別だ。
 商人しか知らないフェニクス文字の署名が必要であるし、金庫をつくった時にルチア自身の署名でそれを登録しておく必要がある。
 迂闊だった、アルセはそう思った。ルチアの給金を貯める金庫なのだから、当然、最初のフェニクス文字での登録もルチアに書かせているし、ルチアにフェニクス文字での署名を教えていると思い込んでいた。だが、違った。ルチアは、フェニクス文字のことですら知らなかったのだ。
 ルチアは、自分では引き出せない金庫の中身を、引き出せないと知らないで楽しみに何度も確認していたことになる。他人から見れば、あまりに滑稽で、あまりに哀れな状態だ。
 確認してみないことには判然とはしないが、コルヴォ商会がこのことを知らなかったはずがない。
「やってくれたな、コルヴォ商会」
 闇夜に呟いたアルセの声は、どこまでも低かった。

 翌日、アルセは手を回して、コルヴォ商会に美味い商談があると持ちかけた。アルセのような中規模な商人の財布が痛むくらいの、コルヴォ商会優遇の取り引きだった。その日の内に、アルセはコルヴォ商会本館に通された。
 豪奢な応接間で待っていると、コルヴォ商会の商館長、シモンが現れた。禿頭で、豊かな口髭を蓄えている。
「これはこれはアルセ殿、良い商談のお話し、感謝しますぞ」
 アルセは感情を全て押し殺して、優雅に一礼を返した。シモンと、取り引きに関して詰めるところを詰めていく。少し時間が経ったところで、シモンは話しを一度打ち切った。
「それで、アルセ殿はコルヴォに何をお望みです?」
 ただで美味い話しが、あるわけがない。流石にそこは商人だった。
「いえ、ただコルヴォと、まあ腹を割ればシモン様とお近付きになりたかったということで」
 シモンは、不敵に笑った。
「それは、有り難い話しですなぁ」
 商人同士、油断はない。こういう相手を和ませて必要なことを聞き出すには、案外と単刀直入に言った方が良いこともある。
「聞いた話しですが、コルヴォの方はだいぶ面白いことをなさっているようで」
「何の話し、ですかな?」
「ルチア、という女のことです」
 アルセは、にやりと笑った。シモンの表情から、疑うような影が消えた。
「御存知でしたか」
「ええ、とても楽しそうな話しでしたので」
 シモンの口角が吊り上がった。
「そうですねぇ、最近では一番楽しいことだったかもしれません」
「滑稽な歌姫ですね、引き出せない金を楽しみに生きるなど」
 アルセは、心にもないことを口にする。お手のもの、と言えばそうだが反吐が出そうだった。シモンは、低く、しかしとても愉快そうに笑った。
「我ながら、なかなか上手くいきました。馬鹿みたいに金庫を確認しにいく姿を見ては、笑いが止まりませんでしたわ」
「しかし、あの娘がフェニクス文字に気付いたらどうするおつもりだったのですか?」
 アルセが怒りを抑えて尋ねると、シモンは凶相をさらに嬉しそうに歪めた。
「大丈夫ですよ、最初から彼女の金庫は私の署名でつくっていますから。あの娘が気付いたところで、私しか、っくく、私しか開けられないのですから。そうとも知らずにコツコツと」
「流石はシモン様」
 アルセの言葉を賞賛と受け取ったのか、シモンは微笑んだ。アルセは心の中で、呟いた。今、貴様の罪は確定した。思い知るが良い。
「劇場の稼ぎ頭なんです。逃げられては困るでしょう、拾ってやったというのに。それに、あの美しさです。できることなら、私の寝所に呼びたいくらいでしてね。これだけ打ちのめせば少しはこちらの要求を聞いてくれるような気がしますよ。まずは、酒の席にでも呼ぼうかと思いましてね、おお、そうだ、その時には是非アルセ殿も」
「それは、嬉しいお話しです」
 極めて冷静に、アルセは笑顔で答えた。心と顔を使い分ける、今の瞬間ほどこれができる自分に感謝したことはない。
「けれど、あのルチアとかいう女が三商家にでも訴えでたら面倒なのでは?」
 シモンは、軽く高笑いして手を振った。
「別に、あの娘を騙したわけではありません。もともとあの娘が勝手に自分の金庫だと、思い込んでいたということでしょう? 私の署名、でつくった金庫は私のものです。それに、生活に必要な金は受け取っているのですから、あの娘が何を言おうが知ったことではありませんね。つまり」
「つまり?」
「法的に私を裁く、などできようはずもない」
 歌うように、シモンは囁いた。アルセは、見事だと言わんばかりに恭しく礼をした。
「このアルセ、感服致しました」
 アルセの態度が気に入ったのか、シモンはそれからしばらく商談を進めながら、アルセを商館から帰さなかった。簡単に口を滑らせ過ぎている気もするが、聞かれたところで何も手を打てない、とシモンは思っているのだろう。
 充分にもてなされ、最後はシモン自ら見送りに出てきた。
「アルセ殿とは、これからも親しくさせて頂ける気がしますよ」
「私も、そう感じています」
 アルセは礼をして、退出した。商館の門を抜け、通りに出る。すぐに、アルセの正面から目つきの鋭い青年が近付いてきた。
 足早に近付いてきた青年が、アルセの横を通ろうとする。擦れ違う瞬間に、アルセは呟いた。
「総員、召集。戦闘準備」
 青年は、そのまま通り過ぎていく。アルセも、歩みを止めなかった。ただ、少しだけ顔をコルヴォの商館の方に向けた。その瞳に、冷たい色が宿っていた。

 夜の冷気が、肌を刺す。アルセは残っていた仕事を片付け、一人で通りを歩いていた。港にある自分の商館から、一振の剣を持ち出し、腰に差している。
 行き先は、決まっていた。アルセは、前だけを向いて進んでいく。港を出てすぐに、あの目つきの鋭い青年がアルセの隣に並んだ。彼から、黒い装束を手渡され、アルセは歩きながらそれを着た。
 しばらく二人で歩いていたがコルヴォの商館に近付くにつれ、一人二人と後ろに加わって歩くようになった。皆、黒い服を着ている。ある者は路地裏から、ある者は通行人の中からふっと現れて列に加わる。夜の闇の中から、生み出されたように人が出てきた。
 アルセの率いる集団が十名ほどになったところで、コルヴォの商館前に到着した。水路が合流するように、別の通りから同じような集団が二つ、音も無くやって来てアルセの後ろに付いた。
 アルセは懐から、鉄の塊を取り出し、顔に装着する。後に続く皆がそれにならって、同じように鉄の塊を顔に付けた。
 その仮面の色は、どこまでも暗い、黒色。
 アルセは、抜刀すると静かにその剣先を商館に向けた。
 三十人の、黒い仮面を付けた、不気味な一団が声も発せずにコルヴォ商会の敷地内に突入した。
「何だ?」
 異変に気付いた、巡回中の衛兵が槍をアルセに向ける。アルセは、剣を払って槍を受け流すとそのまま甲冑の隙間に剣撃を叩き込んだ。呻き声を上げて、衛兵が地面に転がった。骨くらいは折れただろうが、死にはしないだろう。
 アルセを先頭にして、黒い一団は、桐のように進んでいく。コルヴォの衛兵たちは、まともな抵抗もできずに次々と骨を破砕されて地面に倒れた。
 剣撃の音と衛兵たちの悲鳴を聞きつけたのか、商館の扉が開いて中からさらに衛兵が飛び出してきた。
 アルセは、好機とばかりに商館内に押し入った。一人で、何人もの衛兵を叩き伏せていく。商館内にいた、女性や武器を持たない男性から悲鳴が上がる。それらを無視して、一直線に、商館長の部屋を目指した。
 アルセが通された応接間の奥、一際、豪奢なつくりになっている扉をアルセは容赦なく蹴破った。
「ろっ、狼藉者」
 脂汗を垂らし、青冷めた顔のシモンがそこにいた。逃げ遅れたらしい。それほど、アルセたちの侵入は早かった。
 扉の入口を目つきの鋭い青年が固める。アルセは仮面を外しながら、ゆっくりと側にあったアンティークの腰掛けに座った。
「きさまっ、貴様は」
 アルセの顔を見て、シモンは激しく咳き込んだ。アルセは、顔を怜悧に歪める。
「どうも、シモン様」
「こんなことを仕出かしてただで済むと思うなよ。中級商人のくせにふざけおって」
 シモンは怒鳴った後で、何かに気付いたように笑い出した。
「そうか、あの女だな。貴様、あの娘と何か関係があるのだろう? きな臭いとは思っていたが」
「ええ、その件でも話しを付けたいと思っているところです」
 アルセのどこまでも冷えた言葉に、シモンは息を飲む。しかし、彼には一つの強みがあった。
「若いな、どんなに脅されようとあの娘は渡さんぞ。その内、カナーレの正規兵が駆けつける。法を犯しているのは貴様の方だ。商館の襲撃、衛兵への暴行。捕縛されるのは貴様だ」
 アルセは、哀れみに満ちた目でシモンを見つめた。
「あなたの失敗は、カナーレの商家を甘くみたことだ」
 懐に手を入れ、アルセは自分の商人手形を取り出した。それがどうした、と目で訴えるシモンの前でアルセは木彫りの手形を裏返す。裏面は、真っ黒に塗られていた。
「ばっ、そんな、馬鹿な」
 シモンはその場で、力を無くして座り込んだ。
「黒の手形、ノワール家の者か」
 アルセは静かに頷いた。
「きちんと名乗っていませんでしたね、私の名前はアルセ・ノワール。三大商家、ノワール家の三男。カナーレ商業組合、主席監察官です」
「監察官」
 シモンは恐怖の表情で、アルセを見た。商業組合の監察官は、違法な取り引きや、非道な行為をした商家に対して独自に捜査・粛清をする権限が与えられている。商家相互の自由で、円滑な商売を守るために設けられた職務だった。よほど、信頼できる人物でない限り任せられないため、商業都市に一人か、二人しかいないという代物だった。
「ルチア嬢に対する不当な処遇、その他、私の関わらないところで進められていた様々な内偵の結果、コルヴォ商会の違法かつ不透明な商取引が発覚しました」
 アルセはもう一度、懐に手を入れると一枚の紙片を取り出して開いた。
「よって、カナーレ主席監察官の名において通達します。コルヴォ商会は、今後、数ヶ月の商業停止処分、並びに商会の所有する全資金を一時凍結し、その管理をカナーレ商業組合が担います。調査の結果、さらに罪状が加わるものと考えられますが、その間のあなたの身柄についても商業組合が引き受けます」
 事務的に伝え終えた後、アルセはシモンの眼前に詰め寄った。
「ルチアのものは全て、返してもらうぞ」
 シモンは、諦めの顔を浮かべながら、嘲るように笑んだ。
「正義の味方のつもりか? 貴様も結局は、欲しいもののために他人を蹴落としているだけ、私と同じだ」
 アルセは苦笑した。
「確かに、俺も人を騙すし、出し抜いて自分の好きなように人を裁いている。けどな」
 アルセの瞳に、怒りの色がありありと映し出された。
「俺は、お前らみたいに真面目な人間の心を踏みつけて、それで楽しむような本物のクズは許さない。だから何と言われようが、非難されようが、お前らが湧いてくる限り狩り続けてやる」
 シモンが、馬鹿にしたような笑い声をあげる。アルセは目つきの鋭い青年に、シモンの拘束を任せると表に出た。すでに、黒い仮面の者達は姿を消していた。事前に連絡をしてあったので、ノワール家の兵士と役人がこちらに向かってくるのが見えた。後は、シモンの身柄を引渡し、事の顛末を短く報告すれば良い。アルセは、一息吐いて空を見上げた。

「アルセ様」
 金庫の入口で待っていた、アルセの元にルチアが駆け寄る。その表情は、アルセが見てきた中で一番輝いていた。
「きちんと引き出せたか?」
「はい」
 ルチアは膨れた鞄を大事そうに両手で抱えながら、頷いた。
「フェニクス文字で署名もできるようになったし、これで商人に仲間入りできるな」
 ルチアは微笑みながら、アルセに深々と頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました」
 アルセは、言葉に詰まった。ルチアの貯めたものが、正当にルチアのものとなるように手を回したことは彼女に伝えていない。勿論、アルセ・ノワールであるということ、監察官であるということも。
 ルチアが知っているのは、黒仮面の一団がコルヴォに手ひどい仕置きをした、ということくらいだ。
「いろいろと、動いて下さったのでしょう?」
 柔らかい表情で、ルチアはアルセを見つめた。全てを見抜かれているような、澄んだ瞳だった。アルセの中で、金庫で気になり出した時から、感じていた想いが溢れる。彼女になら、抱えてきたものを話せる。そんな気がした。
「話したいことが、ある」
 ルチアは優しい表情のまま、静かに首を縦に振った。

 港を見渡せる灯台の上に、二人は登った。心地良い風が、頬を撫でる。
「ノワール……監察官」
 ルチアは、アルセの手形の裏を見つめながら呟いた。
「嘘をついたつもりはないけれど、本当のことは言ってなかった」
 アルセは、手すりに背をあずけて振り返った。
「驚きました、ノワール家の方だとは」
 ルチアの言葉に、アルセは苦笑いを浮かべた。
「まあ、表向きは家から勘当された出来損ないの三男、ということになっている。だからこそ、監察官として自由に動けるとも言えるけどな」
 ルチアの目を、アルセは真剣な顔で見つめた。
「今回は、相手が調子に乗ってくれたおかげで手早く介入できたが、いつも順調にいくわけじゃない。場合によっては、証拠を掴むために苦しんでいる人を長い間、放置することもある」
 アルセは、顔を伏せた。
「俺は、感謝されるような人間じゃない」
 風が吹いて、アルセの前髪を揺らす。ルチアから、彼の表情が見えなくなった。ルチアは、そっとアルセに近付いて、手形を差し出した。受け取ろうと伸ばしたアルセの手を、ルチアは自分の手で包んだ。
 アルセの手が、震えた。
「コルヴォのような奴らは、許せない。真面目に働いている人の、裏をかいて、心を踏みつけて、楽しむような奴らは。俺は、そういう奴らのせいで一度、信頼できる仲間も、雇い人も、家族の期待も、大切な人の気持ちも裏切ってしまった」
「だから、監察官になったのですね」
 ルチアは手を包んだまま、アルセに身を寄せた。
「ああ、カナーレの影になって、カナーレの闇を潰して回った。それが、正しいと今でも信じている。けれど」
 茨の道、だ。多くの苦しみと出会い、多くの痛みを自分が背負う。そして、その心はより深く、暗く沈んでいく。だから、ルチアにどれほど惹かれても、自分には。
「俺は、ルチアの隣にいるような奴じゃ」
 そう、口にしたアルセの口をルチアがふさいだ。
 温かい、感触に、アルセの瞳から水滴が零れた。
「あなたは、私の光です。だから、今度は舞台の上からでも、助けられる者でもなく、あなたの隣で、あなたを見ていたい。そう、思います」
 ルチアは唇を離すと、頬を染めて言った。アルセは、しばらく何も言えなかった。二人は向かい合ったまま、静かに時を過ごす。言葉はなくても、全て伝わったような気がした。
 アルセが泣き止んだ頃、ルチアは微笑んで、残った水滴をアルセの瞳から拭った。
「ありがとう」
 そう言うアルセの隣に、ルチアは移動した。並んで、美しい海を眺める。
「二人で渡りましょう、この海も、この町も」
「そうだな」
 アルセは相槌をうちながら、ふと気付いたようにルチアに尋ねた。
「そういえば、どんな商売をしたいとか、そういうのは決まっているのか?」
「そっちには頭が回りませんでした」
 うっかりしたと、困ったような表情になったルチアにアルセは、実に明るい笑顔を向けた。上手い解決法を見つけた商人の顔、だった。
「良い商談があるんだけど、どうかな。カナーレ商人、ルチア」
 商談、とルチアは繰り返して呟き、ようやくその意味に気付いたのか、少し間を置いて満面の笑みを浮かべた。アルセは、心が洗われるような心地がした。ああ、この表情のためなら、俺は。

 
 港のすぐ近くに、小さな木の小屋の商店が建っていた。店頭には、色鮮やかな花々が並べられている。元は、陶磁器と一緒に売るための緩衝材だったとは誰も思わないだろう。
 早朝にも関わらず、ルチアは見栄えが良いように一つ一つ丁寧に、花の向きなどを手直ししていた。
 気合も入る。今日は、大事な開店日なのだから。
 しゃがみこんで作業をしていた、その後ろから足音が近付く。ルチアは顔を赤くして、微笑んだ。誰が来たのか、足音だけで分かる。
「いらっしゃいませ」
 弾んだ声で呼びかけた最初のお客さんは、約束通り、ルチアの一番大切な人だった――。
白星奏夜
2012年06月19日(火) 22時06分44秒 公開
■この作品の著作権は白星奏夜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 お久しぶり?です。最後まで読んで下さった方、とりあえずワンクリックして下さった方、ありがとうございます。
 イメージは、中世もしくは近世のヴェネツィアといった感じです。行ったことはないです((笑)
 特に笑えるシーンがありません、ごめんなさい。真面目に書いてしまいました。まんま物語です。
 根気と励ましがある限り、脳内世界を現実化(文章化)したいですね。物語の素案、世界が脳内パラレルワールド状態なのですが、皆様はどうなのでしょう?皆様の脳内環境をぜひぜひお聞きしたいものです。ではでは。 

この作品の感想をお寄せください。
No.16  白星奏夜  評価:0点  ■2012-09-10 18:32  ID:92InrBJyo0Q
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お様

返信が遅れまして、ごめんなさい。御感想、感謝致します。

はい。リラはイタリアから頂戴しました。微妙な細工に気付いて頂いて、画面の向こうでニヤけています((笑)

怪傑ゾロですかっ。仮面がそんな感じでしたね。人によって想起されるものが違って面白いなぁとコメントを読んでいて思いました。嬉しいことです。

人名やら何やら、リラ以外は結構他の言語を流用しているので、気になりますよね。イタリアに統一すれば良かったのですが、音の感覚とかで聞きにくかったり、書きにくかったりしたので。ごめんなさい。

悪徳商人とのやり取り、とても参考になりました。ありがとうございます!!
提案頂いた方が面白く書けたなぁと思います。

何より、痛快と言って頂けたことが最大の褒め言葉です。励みにして頑張っていきますっ!!
今回もありがとうございました。ではでは、またの御機会に〜。
No.15  お  評価:30点  ■2012-09-01 20:58  ID:.kbB.DhU4/c
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なんで「リラ」? と思ったらイタリアがモデルなんですね。
ども。
怪傑ゾロを思い出しました!
正義のヒーローものは男の子は大好きです。でも、本作はちょっと女の子向けっぽい感じもしたかな? かっこよさの方向性がちょっぴりなんかそんな感じがしました。「ヒーロー」というよりは「王子様」的な。
人物の名前がフランス語っぽいのはなぜっだろうとか、些細なことが気になったり。
悪役に接触する時、個人名出しちゃうのはどうかなと思いました。取り入るにしても悪事としてはちっこいし、むしろ疑われそう。他のをメインに取り上げて、そういえば的な感じの方が自然かな? とか。
細かいところはさておき、Entertainmentとして痛快でした!
No.14  白星奏夜  評価:0点  ■2012-08-19 21:45  ID:a4NglDIHSPA
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umeto様

こんばんは、御感想、ありがとうございます。いえ、なかなか時間がなくて私もコメントなどが遅れ気味なのです(汗

ジブリ、私も大好きなので、たぶんすご〜く影響されていると思います。読後が爽やかだと言って頂けて、とても嬉しく思います。そうなって欲しいなぁと思って書いている面がやっぱりあるので!!

他の作品も読んで頂けたようで、ちょっと感極まりそうです。順位を付けて頂いたのは umeto 様が初めてかもしれません。ありがとうございます。七不思議、個人的には好きな話しでもっと膨らませたいなぁなんて考えているものの一つですっ。

戦闘シーン、たぶんこれからもたくさん出していく気がします。人が傷つくのは悲しいですが、でも、でも、なんか格好良いし、書きたいし……。むう、戦国ものの見過ぎかもしれません((笑) 迫力がある、とのお言葉、心の日記帳にしまわせて頂きました!!

人知れず、戦い、実は!! っていう設定がたぶん私が一番書きやすいテーマなんだろうなぁという気が。素敵ですし、色々、配置しやすいというか、設定を描きやすいというか。まあ、いつも穴だらけなので投稿しては反省しています。

今回は、御感想ありがとうございました。また、上位にランクインできるものを目指して、投稿させて頂きますね。狙うは、一位越えです!! ではでは、またの機会をお待ちして〜っ。
No.13  umeto  評価:40点  ■2012-08-19 17:05  ID:k8DHsf72Jy.
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遅ればせながらの感想ですが…
まるでジブリ映画を観た後のような、爽やかな読後感でした!

白星さんの作品のなかでは、「魔法学園の七不思議」が一番好きだったんですが、「カナーレの商人」が一番に躍り出ました。

アルセたちの一団がコルヴォ商会に突入するところ、すごい迫力があってカッコ良かったです。
「七不思議」もそうでしたが、人知れず何かを守っている人って、やっぱり素敵ですよね……ぐっと来ます。

次回作も楽しみにしています!!
No.12  白星奏夜  評価:0点  ■2012-07-24 22:56  ID:LuursefdGYI
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季織様

御感想、感謝します。このお話しも読んで頂けて、とても嬉しく思います。

必殺仕事人、強烈です。やはり、影に隠れつつ悪を討つ、というイメージに一番合っているからでしょうか。わりと、こういう設定は好きなので、遠からずまた登場するかもしれません!!

アルセとルチア、気に入って頂ければ幸いです。優しい人が、優しいまま生きられるように。そう思って自らを犠牲にする、アルセの葛藤とか、もっと出せれば良かったです。でも、彼の優しさが伝わったのであれば、それは本当に嬉しいことです。

いえ、交際期間が短すぎますね。私の書くものは、わりとさばさばしているのかも(汗 もっともっと心の触れ合いとか、そういうものをきちんと描けるようになっていきたいです。どうも、ストーリーとして丸く収めようとしてしまいますね〜。

貴重なお時間を、私のお話しに使って頂いて、感謝です。また、コメントも下さって、本当に心が温かくなりました!!
また、季織様の執筆が続けられること、意欲が湧いてくることをお祈り致しまして、今回は失礼させて頂きます。ではではっ。

No.11  季織  評価:30点  ■2012-07-24 21:00  ID:pt5S5l.1Z4I
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こんばんは、読ませていただきました。

必殺仕事人、みたいな感じですね。
最初に黒仮面の話が出てきたので、アルセとルチア、どっちかが黒仮面なのかな?と思い楽しみに読ませていただきました。
汚い仕事も進んでしてきたちょっと斜に構えた商人が、純粋で前向きな少女に心癒される気持ち、すごく分かる気がします。アルセはきっと、とても優しい人なのですね。

ただ、二人の間に恋が芽生えるのはとても素敵だと思うのですが、それにしては交際期間(笑)が少なかった気がします。
自分が気にしていた子が、自分のことを気にしてくれていたと知って、喜ぶ気持ちはすごく伝わってきて、これから素敵なロマンスが始まるのかなと思いましたが、一度会って話した後は、あまり関係が深くなっていくようなエピソードがなくて、このくらいの付き合いなら、「なんかいいな」程度で終わってしまうのではないかな?なんて。
お互いへの気持ちが段々と深まっていくような、そんな描写がもっとあったら、もっとアルセやルチアに感情移入できたんじゃないかな、と思うのでした。
私も恋愛感情の描写、あんまり伝わってこないと言われがちな人間なので、人のことは言えないのですけどね(汗)

素敵なお話を、ありがとうございました。
No.10  白星奏夜  評価:0点  ■2012-07-20 19:28  ID:LuursefdGYI
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Phys様

返信が遅れてしまい、申し訳ないです。御感想、ありがとうございました。

げっ、現代人の携帯電話ですか!! あれ、それって、めちゃくちゃ大事という。はい、こちらの顔面が崩壊しそうなほど有り難いお言葉です。素晴らしい例え、心に染み渡りました。もう、どんどん疑われて下さい((笑) 人の表情を良い意味で変えるくらいのお話しをやっぱり創りたい、と思ってしまうのです。

自分が燃える、いや萌える場面をやや暴走気味に書いているので、波長が合うところがあれば嬉しく思います。あ、仲間がいらっしゃったと勝手に解釈して楽しんでいる今日この頃です。
 
やっぱり、実力がないように見えて、とか平凡そうに見えて実は、って盛り上がりますよね。というか、ものすごく書きやすいです。伏せておいて伏せておいて、最後にオープン。自分がオープンされない残念な人間なので、ちょっとした願望があるのかもしれません。

越後屋お主も〜はもう死亡フラグですね((笑) そこに至るまでにいかに倒されて欲しい嫌な奴に仕立てあげるか、黒い創作意欲が湧いてきます。

当初はもっとあっさりしたラストだったのですが、書いているうちにキスしちゃいました。甘甘の恋がしたいもんだなぁというこれも私の、儚い願望の集大成です。

アルセの過去や、苦悩があっさりし過ぎているのは反省です。完結を急いでしまったミス、です。ん〜やっぱり上手く描くのは、難しいですね。頑張ります!!

ファン、と言って頂けてもう泣きそうです。できるだけ楽しんで頂けるように、少しずつでも色んなお話を書いていきますねっ。

本当に、心の温かくなる、素敵すぎるコメントありがとうございました。またの機会を心待ちにして。今回は、失礼させて頂きます。それではっ〜!!
No.9  Phys  評価:40点  ■2012-07-13 21:57  ID:RWVs55Q.iaw
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拝読しました。

かなり前に読ませていただいていたのですが、最近いろいろなことに追われて
いまして、小説を読んだり書いたりする余裕がなくなってしまい、感想を書く
機会を逃していました。今更になってしまいますが、いくつかコメントさせて
ください。

とにかく良かったです。
上質なきゅんきゅん小説を提供してくださる白星さんの存在は、私にとって、
現代人の携帯電話のように手放せないものとなっています。もうルチアさんが
可愛すぎて、読んでいる間はずうっとにやにやしていたので、弟から訝しげな
視線を向けられました。ついにおかしくなった、と心配されたかもしれないです。

もともと上手にお話を作られる方だなあ、と思っていましたが、このところは
その実力にさらに磨きがかかっていて、私の萌えポイントをめった突きです。
アルセさんの変貌にもどきどきしました。必殺仕事人というか、裏社会の番人
みたいな設定は大好きです。

それから、
>アルセ殿とは、これからも親しくさせて頂ける気がしますよ
『越後屋、おぬしも悪よのう』の西洋版だなあ、と思いました。定番好きの私
としては、そろそろ仕事人がやってくるぞ……! なんて考えて、がぜん盛り
上がりました。

そして結末の、
>そう、口にしたアルセの口をルチアがふさいだ。
>あなたは、私の光です。だから、今度は舞台の上からでも、助けられる者でもなく、あなたの隣で、あなたを見ていたい。そう、思います
ここなんて、もう、ボルテージ上がりきっちゃって大変でした。こういうキス
したいなあ。笑 ハッピーエンドはやっぱりこうでなくちゃダメですよね!

ただ、他の方も感想で触れられていますが、アルセさんの過去については多少
あっさりとしすぎていて、その苦悩が伝わりにくくなっていたかもしれません。
でも、シナリオとしては下手に冗長に書くとバランスが悪くなりそうですし、
難しいのかなあ……。汗

白星さんの書く小説は、本当に期待を裏切らないですね。素敵な作品を届けて
下さいまして、ありがとうございました。ファンは健気に待っていますので、
次回作もよろしくお願いします。

また、読ませてください。
No.8  白星奏夜  評価:--点  ■2012-06-26 21:47  ID:ZnM0IRCgEXc
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青山 天音様

御感想、感謝致します。お久しぶり、です!!

 あったら良いなぁと思う世界、イメージして頂いて、さらに楽しんで頂けて嬉しく思います。他の方の作品を読むのは、ちょっとした旅行に似ているなぁなんて思ってしまいました。自分の描く世界を一時でも、共有して頂けるってとても素敵なことですね。
 
 伏線、褒めて頂きありがとうございます。ほんと、調子に乗るタイプなので、ハッピーエンド狂&伏線狂という手に負えない危ない奴になっていきそうです。でも、大好きなので、止めません!!(汗

 アルセのキャラブレは、反省です。急ぎすぎました。あれ、このまま書くと長くなるよね? なんて思ってしまって。ルチアの打ち解けが早いのもそれです。少々長くなっても気にせずに、そこらへんをちゃんと描くように心がけます。御指摘、感謝です!

 次回も、というお言葉は本当に魔法の言葉ですね。とても心が温かくなります。頑張ろうって思えます。今回も、ありがとうございました。またの機会をお待ちして。ではではっ。
No.7  青山 天音  評価:40点  ■2012-06-26 21:17  ID:i1YITvLeLvw
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お久しぶりです!青山 天音です。
作品からイメージが伝わってきて、楽しく読ませていただきました。
本当に「世界」を構築されるのが上手でいつも感心して読ませていただいています。
このお話においても冒頭のさりげない設定の中に物語の伏線が張ってある辺りとても引き込まれました。
ただ、主人公のアルセが物語が進むにつれて少々キャラブレてしまっている気がしました。酸いも甘いも噛み分けた雰囲気の側面と正義の代弁者的な側面がどういうエピソードでつながっているのかが省かれているので(他の物語が用意されているのでしょうか)分かりにくいと思いました。また、少々狡猾な印象の商人(内面描写も含めて)にルチアが打ち解けるあたりなどが、すこし早すぎるような。
もちろん個人的な感想ですが……。次回作も楽しみにしています!
No.6  白星奏夜  評価:--点  ■2012-06-24 20:33  ID:ZnM0IRCgEXc
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G3様
御感想、感謝致します。

時代物っぽい感じの話し、大好きです。難しいですけど、世界を自分でつくっていくのはとてもうきうきします。G3様のつくられる世界も見てみたいですねっ。
遊び人に見えて〜や、やっぱりお天道様は、という話しの流れは自分も楽しみながら書いたので、好感を持てたとの言葉、本当に嬉しく感じます。
ラストを素敵と言ってくださり、頭が下がる思いです。ありがとうございます。にやっとして頂けた、その表情を拝見したかったです。おこがましいですが、読んでいてにやっとさせたり、悲しませたり、怒らせたり、なんか自然とそういう気持ちになれる文が書きたいですね。あ、完全に自分の願望でした。すみません。

読んで頂き、ありがとうございました。今回は、この辺で。ではではっ。

ゆうすけ様
御感想、感謝致します。こんばんは。

勧善懲悪の時代劇風、確かにそうですね。というか、かなりそちらに影響されていたんだなぁと皆様のコメントを見て気づかされました。おそるべし、無意識、です。仕事人、ヒロイン死ぬんですかっ!! かっ、可哀想すぎる。

起承転結、伏線、褒めて頂き、感謝です。頭の中にある世界を文章にして、伝えるのは本当に難しいですね。でも、純粋に、物語を楽しめたとのお言葉で、とても励まされました。

客観的な指摘は、お世辞でもなんでもなく、ありがたく感じます。正義の味方か、愛の戦士か。二つの間で揺れる、主人公の葛藤を描くべきとの御指摘、まさにその通りです。人の感情の揺れ、は丁寧に描写する。勉強になりました。

ゆうすけ様は、商売?関係のお仕事だったのですね。リアルに勤めておられる方の前に出すには、恥ずかしい知識で書いてしまいました。ですが、温かいお言葉をかけて頂き、こちらの心が癒されました。

期待が高くなっている、勿体ないくらい嬉しく、素晴らしい励ましです。それだけで、書く意欲が湧いてきます。投稿して、人の目に触れるように勇気を出して、良かったなぁとしみじみと感じました。感謝を伝えるのに、ありがとうございます、しか思いつかず、申し訳ない気持ちです。

今回も、ハートフルな御感想、ありがとうございました。またの機会を、心待ちにして。ではではっ〜。

HAL様
御感想、感謝致します。こんばんはっ。

影のヒーロー、ちょっと影のある主人公、書いていて自分の好みはこういうキャラだと気付きました((笑) これからもちょくちょく出てくるかもしれません。仮面のシーンは、ちょっとしたお気に入り(調子に乗っていますが)なので、クールとのお言葉、とても嬉しく感じます。

主人公の正体、伏線、完全に私の遊び心なので、どうかなぁといつもドキドキしながら投稿しています。ですが、楽しんでいただけているようなので、一安心です。 懲りずにまた仕込みやがったか、と温かい目で見守って下さい!

気になったところ、言って頂き、むしろ感謝です。
書いている最中から、ナマモノなんだよなぁと思っていました(汗 しかも、後のこともあんまり考えていませんでしたっ!! 余りものをルチアに渡す、ルチアが最初に売るものは何が一番、綺麗だろう? 花かなぁ? という思考回路のもとに組み立てました。設定が甘かったですね。

金庫からいきなり引き出すのは、確かに矛盾しています。も〜その通りです。気付いていませんでした。自己分析の結果、おそらくルチアに引き出させることによってコルヴォの悪さを引き立てたかった(発覚するのは早めさせた)こと、それと、商売をどうするかを話し出すと、花の伏線がそこで出てきて、面白さが欠けるかなぁと危惧したこと、こんな感じでそういう無用心な描写になったのかなぁと思います。言い訳くさくて、ごめんなさい。でも、気付けなかった視点ですので、とても勉強になりました。

とても楽しめた、次回も、素敵な励ましです。自分も人を温かくする、コメント、上手くなりたいです。気力が湧いてきて、元気になれましたっ。
名残惜しいですが、今回はこの辺で。ありがとうございましたっ。ではではっ!!
No.5  HAL  評価:30点  ■2012-06-23 20:12  ID:TJ2naFcY.Dw
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 遅くなりましたが、読ませていただきました。

 人知れず悪人を懲らしめる影のヒーロー。勧善懲悪ものってけっこう好きなんですけど、主人公にちょっと影があるところがまたいいですね。仮面を取り出すシーン、クールでよかったです。読んでいてわくわくしました。

 主人公の正体のこともですけれど、ラストに繋がる花の仕入れだとか、さりげなく伏線がしっかり張られていて、そうしたところの仕込み、私も見習わねばと、心にメモしつつ読ませていただきました。

 些事で恐縮なのですが、ちょっと気になったことがふたつほど。
 ひとつは、余ってしまった商品が、ナマモノだということ。大量の花が、もともと今回限りの仕入れの予定だったのなら、じきに枯れてしまうのではないかなあと、読みながらちょっと心配になってしまいました。もちろん、結末のあとの書かれていない部分で、あらたに花を安く仕入れるルートの提供だとか、何らかの助力があったんだろうなとは思うのですが。(重箱の隅をつつくようで申し訳ない!)

>「明日、金庫から引き出そうと思います。ご相談は、その後で」
 ここなんですけど、話の順番として、「まだ商売の段取りがついていないうちに、お金だけ先におろす意味ってあるのかな?」と、ちょっとそこだけひっかかりました。すぐには使わない大金を引きだすのも、不用心な気がするというか……。それも彼女の世間知らずのためと考えれば、矛盾というほどではないのですが、ちょっと気になったので、一応ご報告だけさせていただきますね。

 さておき、とても楽しく読ませていただきました。また次回作も楽しみにしています。
No.4  ゆうすけ  評価:30点  ■2012-06-23 16:45  ID:dZDA6s9Jnbw
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拝読させていただきました。

 勧善懲悪時代劇っぽいと私も思いました。これが仕事人じゃないでよかった。仕事人だとヒロインが死んじゃうからね。
 冒頭から丁寧に描写があって、物語世界を読者にしっかりと届けようという意気込みを感じました。
 きっちりとした起承転結、花を生かした伏線、純粋に物語を楽しめましたよ。
 真面目に働くものから搾取するのが当たり前の血も涙もない商売の世界で小さな会社を営む疲れたおじさんの心を洗ってくれました。私の目から見ると商売人の描写など青い感じもするのですが、そこがまた疲れた心を癒してくれます。さわやかな読後感です。

 さてせっかく読みましたので、冷めた目でもう一度読みます。
 ルチアが搾取されていることに憤るアルセ、好みの女の子を守るために自分の立場を利用して戦う私闘のように感じられます。不正を正す正義の味方なのか、それとも惚れた女に迷惑かける奴は許さない愛の戦士なのか、どっちつかずな感じです。
 ラストにむけてのアルセの述懐部分、暗い影の部分を仄めかしておりますが、やや唐突な気もします。中盤の惚れてしまいそうな所から、葛藤の布石があったほうが自然かな。

 きつめに書いてしまいましたが、それだけ期待度が高くなっておりますのでね。
No.3  G3  評価:30点  ■2012-06-23 00:03  ID:v1oYWlDv7GQ
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こんばんは。読ませて頂きました。面白かったです。こういう時代物(っぽい感じ)は書けたら良いなぁと思うんです。(なかなか難しいですね)遊び人のふりして……みたいな感じや、やっぱりお天道様は見てるんだぜみたいな流れも好感が持てました。始めに敷いた伏線も活かされていてニヤっとしてしまう素敵なエンドも良かったです。
No.2  白星奏夜  評価:--点  ■2012-06-20 23:15  ID:ZnM0IRCgEXc
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ウィル様

御感想、感謝致します! すぐにコメントを付けて下さるので、本当にいつも心が温かくなります。ありがとうございますっ。

狼と香辛料、実はまだ読んでいないんです。アニメ化もされていましたよね?
評価が非常に高かったので、気になっていたところです。小説と、ア二メ、ダブル制覇を目指してみようと思います。
商人の戦いは、私もとても好きな題材の一つです。今回は、主人公が特殊な立場でしたが、合法な商売でギャフンとやり返す、みたいなのも書いてみたいですね((笑)

主人公が実は、というのも心が踊りますよね。黄門様や暴れん坊将軍、名作です。なんといっても正体が分かった時の爽快さ、と悪役の見事なやられっぷりが気持ち良いです。

書いていて自分も、歴史っぽいなぁと思っていました。けれど、まあ住み慣れたところでと思ってしまい((笑)

楽しく読めました。また次回もお待ちしております
有り難い言葉、です。ものすごい励みになります、次回も、という言葉が最近、一番心に染みます。私も、ウィル様の楽しいお話し、期待してます。

ではでは、今回はこの辺で。ありがとうございましたぁ!!
No.1  ウィル  評価:40点  ■2012-06-20 22:00  ID:yqFASJqAhJQ
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拝読しました。
狼と香辛料という小説を読んでいらい、こういう商人の戦いも好きで、楽しく読めました。
また、税務調査官・窓際太郎の事件簿みたいな実は主人公がすごいというのは水戸黄門や暴れん坊将軍で昔から日本人にも親しみのあるもので、やはり舞台が西洋に移っても楽しいものです。

が、なんというかファンタジー小説というよりは、現代・歴史分に投稿したほうがいいような気もしますね。

とにかく、楽しく読めました。また次回もお待ちしております。
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