非常に困った事
 非常に困った…
 「わたくしもビックリしております…」
 いや、姫様…
 「わたくしはこのままずうっと寝たままになるのでしょうか…」
 いえ!そんな事はありません!只今、王様の命により、国一の医師が姫様を何とか救おうと懸命の処置を施しております!ですから、何卒起き上がって国王様・王妃様、又全ての国民を安心させて下さい!
 「それは重々承知しております。でもさっきから何度も起きようとしておりますが、体が一向に動かないのです…」
 しかしです!だからと言ってまさか神がこの様な事を…
 「これは神の思し召しではございませんか?今やあなたとわたくしはこの運命を受け入れるべきではございませんか?」
 ええ!でも…い、いや、それはお互い非常に、非常に困りますのでは!?だって私の頭の中身が姫様の頭の中身と繋がってしまったのですよ!?
 「これだと、わたくしは寝たままでも、あなたが外に出たり、食べたりした事全て私も感じる事が出来ます」
 うう…姫様の為ならこの身命全て捧げても惜しくは無いと日頃誓っている私ですが…参ったなあ…

 西暦1800年、神聖A王国。
 周辺の国々を圧倒的な軍事力・経済力で統合・吸収し、今や日の出の勢い。
 そのA王国には一人の姫君がいた。
 名をB姫。
 この見目麗しき姫君が、昨今、近くの湖でボートに乗り暫(しば)しの休息をとっていた際、ボートが不測の事態により沈没!乗っていた姫君は溺れ、助け出されたのはいいものの、三昼夜経過した今も、目も開けず、声も出さず、寝たままの体となってしまった…
 その哀れな姫君を、国王以下全ての国民が無事を神に祈る。
 一日も早く目覚めて下さいと。
 その祈る人々の中に一人、密かにB姫の事を想っていた男がいた。
 近衛師団長のCである。
 しかし相手は国王の姫君。身分の差は如何ともし難く、あくまでも遠目で幸せを祈るに過ぎない立場である。
 どんなに姫が好きでも身分が違う適わぬ恋である事は、C自身も自覚していた…いた…いた事はいた…って!
 だからって言って何でこんな事になるのか!?

 姫様…こうなってしまったから…いや、と言う訳では…いや、そんな所ではありますが…私は蔭ながら姫様の事を想っておりました…
 「え!」
 でも、それはあくまで願いに過ぎません。適わない事は分かっています。ろくに話もしてない立場で、勝手に好きな感情を持っていただけです!申し訳ありません!でも本当に好きだったのです!
 「C…それは本当ですか?」
 こうなってしまって、お互いの頭の中身が繋がってしまった今、何を嘘をつけますか!?本当にお慕い申していたのです!ああ!もう言っちゃうのか!?大好きなのです!まるで女神の様なお姿が!私だけではありません!近衛のみんなは勿論、城内の若手や、国民も皆お慕いしています!
 「有難うC。とても嬉しいです。お父様お母様以外に、ここまで私を慕ってくれるとは…」
 だから今の私は、ある意味とても嬉しい立場なのです!…です!…ですが…ですが…
 「全く不可解です。何故こうなってしまったのでしょうか?」
 いや全く!私が姫様に何かしたとかなら未だ兎も角…!いや!これは!申し訳ございません!
 「あら!…隠さなくもいいですよ。全てあなたの考えている事はわたくし分かりますから」
 でも何故ですかねえ?姫様は私の考えが全て分かるのに、私は姫様の頭の中は窺い知る事が出来無い…う〜ん…何だか恥ずかしい気も…
 「まあ良いではないですか。これからどうなるか分かりませんが、少なくともわたくしはあなたを介して外と接していけますし、何れ体も起きる事でしょう。それが何時になるかは分かりませんが、それまで僅か間借りしているものと思って頂ければ…」
 ううう〜ん…そんなモンですかねえ…参ったなあ…こうなっては益々姫様に起きて頂かないと…
 「まあ、全ては神のみぞ知る事だと思いませんか?」
 神様も困った事をしてくれる。これが逆なら…
 「今いやらしい事を考えませんでしたか?」
 …非常に困った… 
辛抱しんちゃん
2012年05月09日(水) 15時30分21秒 公開
■この作品の著作権は辛抱しんちゃんさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
姫は部下の考えが全て分かるけど、部下は姫と会話(テレパシーみたいな感じ)するだけで、姫の考えは理解出来ない。せめて逆なら未だ部下ウハウハだったのに…その後の二人が気になる…姫は起きるのか?

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No.2  世流  評価:10点  ■2012-06-06 20:38  ID:7wB7nyFAfGY
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拝読しました。
書いてて楽しそうって思いました。
思考が繋がる発想がすごいですね。
No.1  ウィル  評価:10点  ■2012-05-09 20:44  ID:yqFASJqAhJQ
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確かに、そのあと二人がどうなるのか?
は気になりますが、あくまでも連載ではなくて、完結作品であるのならば、ただの設定見せだけの作品となってしまい、なんとも物足りない感じがします。

あと、気になったのは、この舞台が、西暦1800年だと断言されていることです。
西暦=現実世界 というイメージなので、この舞台はこの世界の西暦1800年なのでしょうか? ならば、神聖A王国って、神聖ローマ帝国?
などとイメージしてしまいました。

ただ、設定はきっちりと作っているので、きっちりと続きを書きあげたら、この作品も大きく化けると思います。
総レス数 2  合計 20

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