夏の最中のベランダで
夏。じりじりと太陽が辺りを焦がしていく。まだ、昼前なのに今日もすごい熱気だった。6階建ての集合住宅、そのベランダも例外なく熱波に焼かれている。地上よりは、少しマシな程度の気温差である。特に今日は、風も吹いていない。

「あ〜っ、あっついわ、何この殺人的な熱気」
鮮やかな黄色い髪の少女が、太陽を見上げながら呻いた。年は、高校生くらいだろうか。
「姉様は文句ばっかりですぅ、ご主人様に対する感謝というものが全く感じられないのですぅ」
真っ赤な髪をした少女が、不服そうに頬を膨らませる。こちらは、背が低く小学生くらいにしか見えない。
「それを言うなら、あいつはどうなんだよ」
黄色い髪の少女は顎で、真紅の髪の少女の隣を指した。そこには、誰もがはっと目を引く美少女が座っていた。肩に零れる青い髪が印象的だ。年は、黄色い髪の少女と同じくらいだろう。青い髪の少女は、うつらうつらと眠そうに頭を揺らしている。
「お嬢様は超朝型なのですぅ、決して不真面目にしているわけではないのですぅ」
「ったく、良いよな。綺麗で、儚げなお嬢様ってのは」
黄色い髪の少女は、青い髪の少女を羨ましそうに眺めた。
「姉様、妬いてます?」
真紅の髪の少女は、小悪魔な笑顔を浮かべる。黄色い髪の少女は、頬を真っ赤に染めて狼狽した。
「なっ、なにを言ってるんだ、お前は!!あっ、あたしは、妬いてなんか」
「お嬢様の方が、ご主人様に愛でられるからってまあ。でも、そんな一途でまっすぐな姉様も素敵ですぅ。はぁ、恋する乙女は無敵ですぅ」
「この、まだ言うかっ、ちょっと黙れこの!!」
「きゃああっ、姉様に犯されるぅ」
「誤解を招くような言い方をするなぁ!!」
狭いベランダで、二人の少女が暴れ回る。青い髪の少女は、ああまたいつもの光景かと眠たい目を擦りながら、くすりと笑んだ。
その時、からからとベランダの扉が開いた。




黒髪の少年が、不思議そうな顔をしてベランダに顔を突き出す。きょろきょろと辺りを見回して、首を捻った。
「どうしたの、悟?」
母親の声が後ろから尋ねる。
「いや、話し声がしたような気がして」
「誰もいるはずないでしょ、6階のベランダに。いやね〜高校生にもなって」
「うるさいな」
少年は首を捻りながら、もう一度ベランダに視線を落とす。おかしなところは無い。いつも通りだ。

鮮やかな黄色いひまわりと、愛らしい真っ赤なミニトマトと、美しく青い朝顔が、楽しそうに少年を見上げていた。
白星奏夜
2011年11月24日(木) 15時58分21秒 公開
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■作者からのメッセージ
初投稿です。こんな風だったら良いのにな、という作者の妄想です。

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No.5  白星奏夜  評価:0点  ■2012-05-14 19:41  ID:Wk7.vQW7jD6
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山本鈴音様

御感想、感謝致します。
初投稿の作品を見ると、自分でも恥ずかしくなります。まあ、今もあまり変わってはいませんが。
50点を頂けたのは、はじめてかもしれません。本当にありがとうございます。未熟も未熟ですが、頑張っていきたいです。

こんな娘たちを育てられたらなぁなんていう怪しい妄想から、組み上がった話し、気に入って頂けて嬉しいです。本当にそうだったら、心が温かくなりますね。よく色んなものを擬人化して、お話しができないか考えています。あ、すごい怪しい人物ですね((笑)

ではでは、このへんで。ありがとうございました〜。
No.4  山本鈴音  評価:50点  ■2012-05-10 21:59  ID:xTynl89qwNE
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作品投稿からだいぶ日が経っての感想、失礼いたします!

この話すごく好きです。
正直、台詞回しは未熟な部分もあるものの、物語がストンと綺麗に終わっていて素敵だなと。
萌えキャラ女子全員がベタな設定だけに、ラスト一行でストレートにまとまっています。
高校生の黒髪少年が、丹念に植物を愛でているのを想像するとホンワカしますね。。。

あと、字下げをすると読み易いかもしれません。
改行部は効果的に使われており(文法的にはNGなのか分かりませんが)とてもいいと思います。

こんな娘たちを育ててみたくなりました。
(´-`).。oO ホワアン……と想像してしまいます。
No.3  白星奏夜  評価:0点  ■2011-11-27 22:52  ID:DRB3BXl2p.M
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星野田様
御感想、感謝いたします。本当に励みになりました。恋よ短し熟せよトマト!思わず笑ってしまいました。ありがとうございます。拙い文章ですが楽しんで頂けたら、それに優る幸せはありません。今後ともよろしくお願いいたします。

HAL様
こちらこそよろしくお願いいたします。御感想、感謝致します。自分で言うのもあれですが、若い…はずです。一人でにやにやしながら、書いていました。バレてしまいましたね(笑)。温かいお気持ちになって頂ければ、それだけで幸せです。ありがとうございました。
No.2  星野田  評価:30点  ■2011-11-27 19:37  ID:ZTkblJXjeI6
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恋よ短し熟せよトマト!!
こんにちは、一度読んでからもう一度読み返してみて、可愛いですね…!! ベランダの植木鉢をかわいがっている高校生の少年というのも可愛い(笑)。
ベランダでミニトマトとか花が揺れているささやかな風景なのに、実はやつらがわーきゃーと騒いでいる様子が想像できて、なんか微笑ましかったです。素敵な視点だなあと思いました。
No.1  HAL  評価:30点  ■2011-11-27 11:48  ID:1A7ycbLbKGk
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 はじめまして。初投稿でいらっしゃるとのこと。これからどうぞよろしくお願いいたします。

 拝読しました。派手な色の髪の女の子たち、ご主人様、ということで、何かこう、超常能力バトル的な展開のライトノベルとかなのかな? と思いながら読みすすめていったら、思いがけずずいぶんと可愛らしいオチ。思わずくすりとしてしまいました。
 本当にこんな風だったら楽しそうでいいですね。青い朝顔が儚げなお嬢様っていうのはハマっていていいなあと思いました。

 作者様はお若い方でしょうか。ああ、楽んで書かれているのだろうなあというのが伝わってきて、読んでいるこちらもつられて楽しい気分になりました。ありがとうございます。

 拙い感想、大変失礼いたしました。また読ませてください。
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