あめねこ
あめねこ

 どしゃぶり雨にこそ仔猫は映える。
 道端に捨てられてみぃみぃ鳴く哀愁漂うその姿を、どうして素通りできようか。思わず足を止め、思慮してしまう魔力がある。見捨てるにせよ、拾うにせよ、だ。
 いずれにせよ、なんとよくある話であることか。どうせそのうち、誰かがなんとかするだろう。そう考えて、雨は傍観を決め込むことにした。

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 雨脚は叩きつける馬蹄が如し、薄汚れた銀色・・・というより灰色の仔猫の体を踏みにじる。これでは自分が悪者のようだ、と雨は顔を曇らせた。捨てていった人間が悪いのであって、天然自然あるがまま降るだけの雨に悪意はない。何かと邪険にされたり、都合の良いときだけ持て囃されたりするのは慣れているが、雨は決まって哀しい場面に似合いだと決めつけられる。そのじつ、確かに仔猫と雨はよく似合う取り合わせだろう。親元を離れて、飼い主に捨てられた仔猫は哀れ以外の何者でもない。ただ、これが晴れていても悲痛であることに変わりはなく、ただ単に見た目の問題である。雨は、雨だって楽しい、あるいは嬉しい場面に似合いだといわれたいと常々思っていた。
 仔猫を助けることは雨にはできない。何せ、雨だから、手を差し伸べる手がなく、キャットフードを買ってやる甲斐性もない。そして仔猫だけのために雨脚を弱めることも止むこともできない。少しずつ、仔猫の鳴き声が小さくなってゆき、次第に弱まりつつある雨音にすらかき消えてしまうほどになっていった。

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 やがて、とうとう、仔猫は動かなくなってしまった。冷たくなって、ちぃちぃと鳴くこともない。
 雨は泣きたい気持ちになった。同情、それに仔猫を殺してしまったという罪悪感もあれば、薄情な人間への憤り、そしてこんな悲劇ばかりが似合う自分への嫌悪。雨はさめざめと泣きたくなった。けれど、雨は雨だから、くやし涙は流せない。ただ、降りしきるのみ。

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 雨雲が去ってゆき、雨もまた立ち去る頃合となった。雲の間に日差しがからりと差し込み、もう、ぽつんぽつんと降る程度である。
 ふと、仔猫が息を吹き返した。まだ生きていたのである。それが命燃え尽きる前の、ほんのわずかな輝きであったとしても。
 仔猫は空を見上げ、みぃと鳴いた。なぜだか嬉しげに、微笑みかけているように思えた。やっと顔を出した太陽に挨拶したのだろうか。それとも、もしかしたら、雨に話し掛けてくれたのだろうか。あれほど仔猫を凍えさせたのだから、そんなことあるものか。雨は悩みつつ、上がっていった。
 ――太陽の輝きを浴びて、雨はいつしかほんの一時、七色の美しい虹になる。
 雨上がりの虹にこそ仔猫は映える。そう、虹は想い抱くのだった。
シロクマ
2011年03月04日(金) 08時14分26秒 公開
■この作品の著作権はシロクマさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
掌編の・・・・なんだろう?
擬人法の習作のような作品です
このあと仔猫はスタッフがおいしく頂きました

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No.8  シロクマ  評価:--点  ■2011-04-27 02:25  ID:26VugPo02oQ
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大変遅くなりました(投稿から約一ヶ月経過してたため、もう感想なんて無いだろうと油断してました)が、作者返信レスになります

>>G3さんへ
仰ることはよーくわかります、私自身、「いや、雨こんなこと考えないでしょ」と思いますから
雨と仔猫という題材で、この内容というミスマッチを狙ったのですが、確かに噛み合わないという指摘もそのとーり、悩みどころですね
感想ありがとうございました

>>水川 朝子さんへ
ご感想ありがとうございました
あ〜 私は雨って嫌いかもしれない(ぇ)。時々、好きですが、おおむね嫌いですねー、そういう意味で雨って面白いです
擬人化の習作のようなものなのですが、お礼まで言われるとは・・・。そのわりにお返事が大変遅くなってすみませんでした、はい
また機会がありましたらよろしくおねがいします
No.7  水川 朝子  評価:30点  ■2011-04-01 20:56  ID:u3lyy/5P.xY
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はじめまして。読ませていただきました。

雨目線のお話とはとても新鮮な考え方だと思いました。とてもコンパクトで可愛いお話ですね。今まで雨があまり好きではなかったのですが、このお話を読んで雨に好感がもてるようになりました。また擬人化の勉強になりました。ありがとうございました。
次もまた読みたいです。
No.6  G3  評価:20点  ■2011-03-30 23:40  ID:wfVGn00IRSE
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読ませて頂きました。雨が思考するというのはどうも違和感がありました。頭が固いのでえしょうか。仔猫と雨という題材にしては文体が硬い様であるし、語られる内容はさらにハードボイルドな気が。。。思うに、雨というものはカバーする範囲が広すぎてこういうピンポイントで明確な思考とはアンマッチな気がします。上手く言えなくて申し訳ないのですが。
No.5  シロクマ  評価:--点  ■2011-03-14 04:41  ID:26VugPo02oQ
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作者返信レスになります

>>おさん
確かに書いていて、雨の擬人化は理屈を思い浮かべると難問でした。
おおよそ人格を持たないであろう現象で、個とも群ともつかず、雲を掴むような感じでした。
ただ、やっぱり「妖精」という個体にしてしまうと途端に書きやすく、しかしながら素直になりすぎるので悩みどころです。
「である。」は確かにおかしいですね、ついつい変な言葉遣いになりがちなので、気をつけたいと思います。
ご感想ありがとうございました。
No.4  お  評価:30点  ■2011-03-11 02:26  ID:E6J2.hBM/gE
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少しばかり、もの悲しいお話でしたね。
習作とありましたが、雨の擬人化とは、またハードルの高いものを。
雨の妖精という案もあったそうですが、それならば、確実に書きやすいでしょうね。じっと見つめる猫に、「そんなに見つめるなよ、僕は雨なんだ。君を救えない」とか。ダイレクトな接触は出来ないにせよ、間接的にも存在同士のやり取りをさせることができる。
そう言う意味で、雨の擬人化という抽象的な存在性は、どこにあるのか宙ぶらりんで、なんとも、感覚の捉えようがしゃっきりしない印象でした。これは、本当に、難しい。
僕が気になったのは、「まだ生きていたのである。」という部分の「である」という語尾。ちょっと語りの目線が違う気がしました。
No.3  シロクマ  評価:--点  ■2011-03-09 22:54  ID:26VugPo02oQ
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作者返信になります、お返事遅くなってごめんなさい!

>>言葉に惹かれてさん
こんにちわ、またご感想いただけて嬉しいです
本当は「雨の妖精」として書くつもりでしたが、それでは普通すぎるので少々強引に雨そのものを主役にしてみました
擬人法は確かに自分も小学校で習ったので、本当にそのおさらいという感じでしょうか?
基礎って大事だと思い知らされます
またご縁があれば、よろしくおねがいします

>>片桐秀和さん
ご感想ありがとうございました
掌編や短編を習作として書き、筆の鈍らないようにしている感じですね
確かに「馬蹄」は場違いですね、ついつい硬い表現を選んでしまう悪癖ですので、気をつけませんと
作者コメントで笑いを取りにいくのは・・・うーん? たぶん、本編が暗い反動の照れ隠しでしょうか?
これからも頑張らせていただきます
No.2  片桐秀和  評価:20点  ■2011-03-08 20:16  ID:n6zPrmhGsPg
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読ませてもらいました。
ふむん、かわいい話ですね。習作として書いたとメッセージにありますが、確かにそんな感じもします。起承転結で話を区切って、シンプルに書かれた掌編といった感じ。
『雨脚は叩きつける馬蹄が如し』の馬蹄って言葉が全体からしてちょっと浮いてる感があったかな。表現としては面白いのだけど、段落が変わってこの表現がくると少し構えてしまいました。変える必要もないと思いますけど、一応きになったとだけお伝えしますね。
あと、作品とは関係ありませんが、メッセージがナイスでした。

これからも頑張ってください。
No.1  言葉に惹かれて  評価:30点  ■2011-03-04 15:50  ID:fOLO6e7uTJ2
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こんにちは。
前回は、その、いろいろとすみません。

すごく斬新だなと思いつつ、読了。雨の擬人化って、今まで見ないので、雨に感情があるとすれば、それはまた哀れですね。

面白い視点でした。小学生のころ、先生が「じゃあ、〜の気持ちになって書いてみましょう」とか言って、詩の感想を書くようなことがありましたが、雨の気持ちってこんな感じなのかな、と想像力が働きますね。

感想らしいまともな感想が書けませんでした……。


擬人化の使い方の勉強になるかも。また読ませてください。
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