| 空との邂逅 |
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１ 空はいつでも青い、曇りなどの天気もあるけれど、その幾重にも重なった雲 の上には、広大な碧虚が翼を休めている。 この町では、そんな空を崇めた、空神神社と言う、神社がある。そこには、 僕の知り合いの若干３６歳の神主が居るのだが、神職の方ですか？と尋ねら れれば何時も何処でも誰に対しても機嫌を斜めにする。そして、いつもその 後、決まって云うのは「私は、神職なんて尊い存在ではありません。私 は、単なる大学生です」となんて謙虚な言葉を流す。それは、最近のことだ けど。彼に出会ったのは、僕が中学生の時、部活帰りだったような気がす る。 ２ 「はぁ――なんで、俺だけ部活帰りで補修なんだ！？ あの、ルー大柴英語教 師、次あったら、思いっきり睨んでやろう」 初夏の午後７時３０分の夜空は有名なアルタイル、ベガ、デネブが作り出す 夏の大三角がゆらゆらと煌めいていた。涼風に乗り、何処からか風鈴の音が 僕の耳に響く。足早に、家路を行く僕は、その空と風鈴の音しか、その場を 理解していなかった。 「そこの、あなた様」 まだ、僕には届いていなかった。 「足を止めて下さい――」 それでも、まだ僕には届いていなかった。 「聞いてますか！」 「僕ですか？」 坂道の下の声にやっと気が付き僕は体を反転させ彼の姿を見た。 そこに立っていたのは、巫女の様な格好をした、白髪の好青年だった。見た 目的には、１０代後半から２０代前半のような感じだ。第一印象はそう言う 様な物だった。 「僕に何か用ですか？」 「あっ、用という用では無いんですけど、ただツカレテいる様なんですよ、あ なた様」 「そうなんですよ、ついさっき、英語の教師にこってりと絞られまして、今、 家帰る途中なんですけど、疲れて疲れて……」 「そう言うことではなく、馬の漢字を使った方の憑かれているんですあなた様 は」 最初聞いた時は全く意味がわからなかった、馬の漢字のツカレテいる？ それって取り憑くとかの、あの小難しい漢字のことか？あー国語の勉強もし っかりしときゃあ、こんなに頭が混乱することも無かったのに。善悪の報は 影の形に随うが如しって事か…… 「聞いておりますか？ 」 「ああ、聞いてますよ、取り憑かれていると言うことですよね」 「そういうことに、なります」 単刀直入に云って、この男、かなり怪しい、まず夜道であなたは取り憑かれ ている。まず、普通の日常生活を送っていれば、こんな事にならないだろう もしかしたら、次の台詞は、この壷を買えばなんとかなるから、これを一億 円で買いませんかとかじゃないか？ やばい、もしかしたら、本当にそうな るかもしれない ここは、走って逃げた方が良いのか？ あーこんな事にな るのも、あの英語教師の所為だ。くそぉー！今度会ったら、睨むだけじゃな く、膝かっくんもしてやろう。 ようし、それなら行動は早くだ。 「壷は買わねぇーぞ！このインチキ霊能力者！」 「はい！？」 驚愕の表情を浮かべ霊能力者は僕に何かまた、話しかけようとした。そんな 事も気にせず僕は思いっきり走った。暗い夜道を駆け抜けた。 星空の下、家路とは違う方向へ走り出した。何時間かかっても云い、どうに かして逃げなきゃ――。 「待って下さい！」 後ろから、あの霊能力者の声がする。だめだ、当然僕を騙すに決まってい る。聞いちゃいけない。 「壷なんて売らないし、無料でお祓いもするよ！このままじゃあなた様は死んでしまいます！」 僕は、その時足を止めた。風だけが僕を追い越していく。 死ぬという言葉が、胸に響いたのだ。もしも、本当に僕に何が取り憑かれて いたら、死ぬかもしれない。こんなに若くして死ぬだなんて嫌だ。 まだ、夢川にも、告白していないのに！ ３ 夢川あずき、とは僕の幼馴染みのことだ。小中高とずっと僕と同じクラス で、同じ班で、いつも僕の隣りに居るとてもかわいらしい黒髪の女の子だ。 髪は何時もポニーテールで、でも髪は腰まであり、その長い髪を靡かせて走 る体育祭のリレーは、すごく爽やかで女子なのにかっこ良く見えた。 その頃から、僕は彼女に惹かれていたのかもしれない。 最近、学校でも彼女のことばかり考えるようになっていた。そして、その想 いに、終止符を打つため、明日、告白しようと思っていたのだ。 それなのに、何かに取り憑かれて死ぬなんて、なんたる不幸なんだろう。 仕方がないが、今はこの霊能力者を信じている方が賢い判断だろうか。 ともかく、僕はそうして、その霊能力者と話をし、彼の所有している神社に 行くことになったのだ。 ４ 「あの……神職の方だったんですか？」 僕が聞いた言葉は彼をそこまで怒らせる事だったのだろうか？ 案内された場所は、空神神社と言う所だ。そう言う質問をしても良いと思う のだが。 「神職なんかじゃ無いよ！」 微妙に激昂された。 「あの……なんで、怒ってるんですか？」 「怒ってなんか無いよ！」 「いやいや、怒ってますよ、誰がどう見ても」 「誰がどう見たって、怒ってるように見えませんよ、それは単にあなた様の勘 違いです。呪われたいんですか！」 「祓われに来てるのに呪われて帰るって馬鹿でもしねぇよ！」 「うるさいですよ！先程からゴチャゴチャゴチャゴチャと！」 「そんな暴言吐いていいのかよ！神職の方がよー」 「だから私は神職の方ではなああああああい！」 「これじゃあ、空神様も落胆のことだろう……」 「神を侮辱したな！ようし説教するぞ……この小坊主！何言ってんだ！それも 俺はなあ目上の方だぞ！神職の方だぞ！謝れ！今すぐに謝れ！」 「自分で神職って言ってるんじぇねえかよ！キャラ設定を守れええ！」 この後、２時間ほど無駄な、論争を繰り広げられるので割愛させて頂きま す。 ５ 「じゃあ、取り憑いている物を祓いますので、この盛り塩からひとつまみ取っ て頭から被って下さい。」 「ああ、わかった。」 僕は、霊能力者から渡された盛り塩を言われたとおり、頭から被った。 「それでは、始めます。立ったままで良いので目を閉じて、最近あった良いこ とを思い浮かべて下さい。」 まぁ、夢川の事を考えれば良いんだな。よーし ６ それが彼、空神神社の宮司、佐奈鳥ゆふひとの出会いだった。 最近では、彼も昔よりは丸くなり。神職の方ですか？ と聞いても全くと言 っていい程、怒らなくなった。 「私達を結ばせてくれた人？」 婚約相手のあずきが僕に聞く。 そう、あの後、丁度良く悪い物を祓えて、次の日、告白すると彼女の答えは あっさりとＯＫだった。 「あぁ、彼が居てくれたお陰で僕はあずきに告白できたんだ。」 「へぇ〜」 「ほら、あの白髪の宮司さん。おーい神職の方〜」 「私は神職じゃありませんよ！」 彼の声がからっと霽れた綺麗な空に滲んで消えていった。 |
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一輪夏人
2011年02月16日(水) 22時41分37秒 公開 ■この作品の著作権は一輪夏人さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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| No.2 一輪夏人 評価：--点 ■2011-02-20 11:04 ID:fAeco917sM6 | |||||
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お様、感想有難うございました。 酷い文章でも暖かいお言葉、嬉しいです。 仰ることが、全て勉強になりました。今度書く時は、忍耐強く書いてみます。 修正もしときます。 ありがとうございました。 |
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| No.1 お 評価：30点 ■2011-02-20 02:20 ID:E6J2.hBM/gE | |||||
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ちわ。 会話文がずいぶん砕けていて、おじさんにはちょっと辛いかなとおもったら、ラノベ作家志望なのですね。納得しました。 初めてでこれだけ書けるのかと、感心しきり。 作者さんは、物語りにけっこう親しんでいるんでしょうか。 展開の要点をちゃんと踏んでる。 次は、小説にしていかないといけませんね。 残念ながら本作は、多くの人に、あらすじにケの生えたものという評価がなされるでしょう。悪くすれば、ちょっと思いついたことをさらさらっと文章にしたかっただけなんだろうなと受け取られてしまうかもしれません。実際のところは分かりませんが、そういう印象を与えかねないということです。 必要なものは、気合いです。長く掛かっても、面倒くさくなっても、どうして良いか分からないと思っても、じっくり腰を据えて忍耐強く書き続けることです。この物語展開なら、原稿用紙で50枚くらいが妥当じゃないかなと僕は思います。おそらく、物語りに親しんだ作者さんであれば、何が足りないか、分かっているんじゃないかとも思っています。 若い方だろうと推測するので、情熱と忍耐で、ぜひとも、よい小説を書き上げてください。 ちなみに、僕は忍耐のなさでわりと失敗する方ですが。 あと、細かいことですが、UPするときに改行が狂ってしまってますので、修正しておいた方が、印象は良いだろうと思います。 でわ。 |
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| 総レス数 2 合計 30点 | |||||
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